ブドゥ
ブドゥ(ジャウィ文字:بودو)は、マレーシアの魚醤。主にマレー半島北東部のクランタン州で作られ、茶褐色を呈する[1]。
クランタン州および隣接するトレンガヌ州、タイ南部で料理に使われる[2]。東南アジアの魚醤の中では、食塩と遊離アミノ酸の濃度が高いという特徴がある[3]。
製法
[編集]インドアイノコイワシ属 やニシン科のen:Clupeoidesなど、4 - 10月を漁期とする海水魚が主に原料とされ、淡水魚は使われない[4]。伝統的な家庭内生産の配合例は、以下の通り[5]。
材料を甕に入れてよく混ぜ、ビニールシートなどで蓋をする[5]。屋内または屋外で2ヶ月以上静置し、発酵が進んで魚が液体状になったら布でろ過して食用とする[5]。甕に入れた状態で1年間保存可能とされる[5]。
また、1950年代からブドゥを生産する食品工場がコタバルを中心に現れた[5]。原料魚に対して10 - 35%の食塩だけを混ぜ、桶の中で4 - 8ヶ月発酵・熟成させ、内容物はろ過せず電動の臼ですり潰す[5]。これにタマリンドを煮たタマリンド水と食塩、保存料としての安息香酸ナトリウムなどを加えて混合し、ビン詰めして出荷する[5]。原料魚の種類や、タマリンド水の添加量などによって商品の等級が決められる[5]。
利用
[編集]ブラチャンと料理法が似ているため、嗜好によって使い分けられる[2]。1980年代の調査によれば、コタバルにおけるマレー人の家庭では1ヶ月に1人当たり151gのブドゥを消費していた[2]。また、匂いを嫌ったり食物アレルギーのためブドゥを食べないマレー人もいる[2]。インド人はブドゥを食べないが、中国人は食用にする事もあるという[6]。
ブドゥはそのまま米飯にかけるか、潰したトウガラシと塩、ライム果汁などと混ぜてつけ汁にする事が多い[6]。このつけ汁もブドゥと呼ばれ、野菜や焼き魚、揚げ魚などをつける[6]。また、野菜の煮込みの仕上げに加え、香りやうま味を付けるのに利用される事もある[6]。
脚注
[編集]- ^ 千原理沙, 角野猛 & 山田幸二 2002, p. 62
- ^ a b c d 石毛直道 & ラドル・ケネス 1987, p. 293
- ^ 千原理沙, 角野猛 & 山田幸二 2002, p. 68
- ^ 石毛直道 & ラドル・ケネス 1987, p. 290
- ^ a b c d e f g h 石毛直道 & ラドル・ケネス 1987, p. 292
- ^ a b c d 石毛直道 & ラドル・ケネス 1987, p. 294
参考文献
[編集]- 千原理沙、角野猛、山田幸二「マレーシアの発酵食品ブドゥ (Budu) の諸成分と微生物について」『日本食生活学会誌』第13巻第1号、日本食生活学会、2002年、62-68頁、doi:10.2740/jisdh.13.62。
- 石毛直道、ラドル・ケネス「東南アジアの魚醤 : 魚の発酵製品の研究 (5)」『国立民族学博物館研究報告』第12巻第2号、国立民族学博物館、1987年、235-314頁、doi:10.15021/00004346、NAID 110004728178。