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化成品分類番号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
化成品表記から転送)
化成品分類番号の例(下線)
タキ1000形

化成品分類番号(かせいひんぶんるいばんごう)とは日本国有鉄道(国鉄)が1979年(昭和54年)10月に制定した積荷の性質(化成品 = 化学物質)を簡潔に表す記号番号である。

概要

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戦後の鉱工業、とりわけ化学工業の発達に伴い、タンク車を中心に私有貨車の形式が多くなり、それに伴い専用種別の積荷の種類が多くなってきたが、化学物質を中心に一般的でない積荷名称も増えてきたため、仮に事故が発生した際、適切な処置を取るためには専門的知識が必要となり始めた。積荷名称の中には商品名ですらあるものも存在したため、専門的知識の幅が広くなり迅速な緊急時の対応が難しくなってきた。

このため、全ての専用種別に対して簡潔に性質を現す標記として、化成品分類番号が1979年(昭和54年)10月に制定された。1987年(昭和62年)4月の国鉄分割民営化後は日本貨物鉄道(JR貨物)でも引き続き使用している。またタンク車以外の貨車やタンクコンテナ私有コンテナ化された鉄道輸送対応のISOコンテナにも表記が行われている。

なお近年、化成品分類番号が変更されたものも一部存在する。(例としてメタノールは毒性を考慮して「燃31」から「燃毒36」に変更されている)

標記

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標記記号番号は以下のように制定された。

「化成品分類略号+化成品分類番号10位(化成品の分類)+化成品分類番号1位(化成品の性質)」

(化成品分類略号は複数が組み合わされて使用することもある。また化成品分類略号はなく化成品分類番号10位+化成品分類番号1位のみの場合もある。)

化成品
分類略号
意味
燃焼性の物質
毒性の物質
侵食性の物質
酸化性の物質
(G) 高圧ガス
(禁水) 水と反応する物質
化成品分類
番号10位
意味
2 高圧ガス
3 引火性液体
4 可燃性固体
5 酸化性物質
6 毒性物質
8 腐食性物質
9 有害性物質
化成品分類
番号1位
意味
0 危険性度合3(小)
1 危険性度合2(中)
2 危険性度合1(大)
3 可燃性のもの
4 禁水指定のもの
5 酸化性または反対性のあるもの
6 毒性のあるもの
8 腐食性のあるもの

主な標記例

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主な品名に対する化成品分類番号と標記された貨車・コンテナを下記に示す。

品名(専用種別) 化成品分類番号 標記された貨車・コンテナ
カプロラクタム 90 タキ14800形タキ17500形
脂肪酸 90 タキ9400形タキ20600形
PPG 93 タキ8550形タキ8950形タキ13600形タキ18100形
エチレングリコール 93 タキ6600形タキ11600形タキ15800形タキ16600形
クレオソート 93 タキ2750形
生石灰 94 タキ11350形ホキ8800形チキ80000形[1]
塩素酸ソーダ液 95 タキ21300形タキ21350形
アクリルアマイド液 96 タキ18810形タキ24400形タキ25900形
塩化メチレン 96 タム7700形タサ6100形タキ24600形
重クロム酸ソーダ液 96 タキ30100形
硫酸ヒドロキシルアミン 96 タキ42300形
ジメチルホルムアミド 燃30 タキ14500形
スチレンモノマー 燃30 タキ19500形
アセトン 燃31 タキ6500形
アルコール 燃31 タ2000形タキ3500形タキ13700形
石油類[2] 燃31 タキ1500形タキ20000形タキ42750形タキ44000形タキ45000形
ベンゾール 燃31 タキ1800形
メタノール 燃31 タム3700形タキ5200形タキ7950形
メチルメタアクリレート 燃31 タキ15700形
アセトアルデヒド 燃32 タキ9250形タキ11250形
ガソリン [3] 燃32 タサ1700形タキ35000形タキ38000形タキ40000形タキ43000形タキ1000形(JRF)
軽質ナフサ 燃32 タキ24100形
プロピレンオキサイド 燃32 タキ16500形
ペンタン 燃32 タキ42350形
液体硫黄 燃41 タキ23600形タキ23650形
カーバイド 燃(禁水)44 ホキ5900形
金属ナトリウム 燃(禁水)44 タキ17600形
LNG 燃(G)22 タム9600形UT26C形コンテナ
液化イソブチレン 燃(G)23 タキ19550形
液化塩化ビニル 燃(G)23 タキ10150形
LPガス 燃(G)23 タキ25000形
LPガス+メチルアセチレン 燃(G)23 タサ6500形
塩化ビニール 燃(G)23 タキ20400形
アクロレイン 燃毒36 UT11C形コンテナ5000番台の一部
二硫化炭素 燃毒36 タキ5100形タキ10100形UT7C形コンテナ5000番台の一部
メタリルクロライド 燃毒36 タキ11450形UT5C形コンテナの一部
酢酸 燃侵38 タサ5200形タキ3700形
酢酸及び無水酢酸 燃侵38 タキ18700形
メチルジクロロシラン 燃侵38 UT17C形8000番台の一部
塩素酸ソーダ 化51 タキ21600形
液化塩素 毒(G)26 タム2300形タム8500形タキ5450形UT13C形コンテナ8000番台の一部
アニリン 毒61 タキ42200形
オルソクロルアニリン 毒61 タキ42100形
石炭酸 毒61 タキ3900形タキ20500形
TDI 毒61 タキ19600形
ニトロベンゼン 毒61 タキ26000形
メタクレゾール酸 毒61 タキ11650形タキ42150形
アセトアルデヒドシアンヒドリン 毒62 タキ20350形(改造後)
青化ソーダ液 毒62 タキ22900形タキ25800形(改造後)、タキ26000形(再改造後)
ラクトニトリル 毒62 UT10C形コンテナ5000番台の一部
オルソジクロルベンゼン 毒燃63 タキ21700形タキ23500形
液化アンモニア 毒燃(G)26.3 タム5800形タキ18600形
液化酸化エチレン 毒燃(G)26.3 タキ14700形UT17C形コンテナ8000番台の一部
液化モノメチルアミン 毒燃(G)26.3 タサ5900形タキ30200形
液化塩化水素 毒侵(G)26.8 UM14C形コンテナ5000番台[4]
リン酸 侵80 タキ1250形タキ11200形タキ11300形タキ17400形
亜塩素酸ソーダ液 侵81 タキ26200形
カセイカリ液 侵81 タキ7050形(改造後)
カセイソーダ液 侵81 タキ2600形タキ2800形タキ4200形タキ7750形タキ22700形
希硝酸 侵81 タキ8100形タキ10700形
希硫酸 侵81 タム2100形タキ19700形
臭化水素酸 侵81 UT7C形コンテナ5000番台の一部
硫化ソーダ液 侵81 タキ24800形
塩酸 侵82 タム5000形タム9400形タキ5000形タキ5050形
プロピオン酸 侵燃83 タキ750形
無水酢酸 侵燃83 タキ3700形の一部
塩化チオニール 侵(禁水)84 UT3C形コンテナの一部
クロルスルホン酸 侵(禁水)84 タキ5900形UT06C形コンテナ5000番台の一部
濃硝酸 侵(禁水)84 タキ7500形タキ10450形タキ29100形
濃硫酸 侵(禁水)84 タキ300形タキ4000形タキ29300形
無水硫酸 侵(禁水)84 UT2C形コンテナの一部
臭素 侵毒86 UT03C形コンテナ
フッ化水素酸 侵毒86 UT3C形コンテナの一部
過酸化水素 化侵58 タキ22800形
亜鉛焼鉱 なし タキ15600形タキ1200形(JRF)
アミノカプロラクタム水溶液 なし タキ26100形
カオリン なし タキ23900形
コークス粉 なし ホキ9300形
小麦粉 なし タキ24700形
コンクリート混和剤 なし タキ6950形
なし タキ13800形
石灰石 なし ホキ4200形ホキ8000形ホキ8100形ホキ8500形ホキ9500形
セメント なし タキ1900形タキ7300形ホキ3500形ホキ5700形ホキ7300形
セメントクリンカ なし ホキ6700形ホキ6800形
テレフタール酸 なし タキ24300形
ドロマイト なし タキ21000形ホキ5400形
麦芽 なし ホキ6600形ホキ9800形
フライアッシュ及び炭酸カルシウム(複数) 両方ともなし タキ1100形(JRF)
ペーストサイズ剤 なし タキ6350形タキ20300形
ラテックス なし タキ7900形タキ8300形タキ8350形タキ8850形タキ23800形

注釈

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  1. ^ 厳密には消石灰輸送コンテナ積載用
  2. ^ ここでは重油や潤滑油といった引火点の高い石油製品を指す。
  3. ^ ここではガソリンや灯油、軽油といった引火点の低い石油製品を指す。
  4. ^ 厳密には液化塩化水素輸送容器輸送用

参考文献

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  • 鉄道公報
  • 吉岡心平 『プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑(復刻増補)』 2008年、ネコ・パブリッシング刊 ISBN 978-4-7770-0583-3
  • 『日本の貨車-技術発達史-』(貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年)

関連項目

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