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鉄道公報

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

鉄道公報(てつどうこうほう)は、日本の国有鉄道における業務上の命令等を伝達するために、国有鉄道当局が発行した官報に相当するものである。狭義には、帝国鉄道庁・鉄道院・鉄道省日本国有鉄道が発行した『鉄道公報』という題号のものを指し、広義には、運輸通信省発行の『運輸通信公報(運輸版)』、運輸省発行の『運輸公報』等を含む。

日本国有鉄道の『鉄道公報』は日曜日、祝日、年末年始等を除く毎日発行され、国鉄内外の関係各所に配布されるとともに、それ以外の希望者には有償で頒布されていた。発行者は総裁室文書課長であった。1958年(昭和33年)ごろの発行部数は約32,000部であった[1]。1949年(昭和24年)6月1日の国鉄発足の日に第1号が発行され、分割民営化前日の1987年(昭和62年)3月31日の第11207号をもって廃刊となった。

内容

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『鉄道辞典』によると、1958年(昭和33年)頃には『鉄道公報』は次の12欄に分かれていた[1]。また必要に応じて号外や付録が発行された。

  1. 詔書
  2. 法令(法律・政令・省令で、国鉄に関係するもの)
  3. 告示(各省大臣・各庁の長官が発する告示で、国鉄に関係するもの)
  4. 公示(国鉄総裁が発する公示)
  5. 訓令(各省大臣・各庁の長官が発する訓令で、国鉄に関係するもの)
  6. (国鉄総裁が発する達)
  7. 訓示(国鉄総裁の訓示)
  8. 辞令(叙位叙勲、指定職員等の辞令)
  9. 賞罰(表彰、懲戒等であって特に掲載の必要があるもの)
  10. 通達(通達・依命通達であって特に掲載の必要があるもの)
  11. 通報(規程類の施行上の指示その他執務上の注意を要する事項)
  12. 雑件(統計類その他であって特に掲載の必要があるもの)

「公示」は『鉄道公報』だけでなく『官報』にも掲載された。の新設・廃止の件は「公示」の形式で行われ、一方、仮乗降場信号場・信号所・連絡所・操車場の設置・廃止、車両の入籍・廃車の件は「達」の形式で行われた[2]

歴史

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日本の国有鉄道当局が発行する公報は、次の表のような変遷をたどった[3]

国有鉄道に関する公報の変遷
期間 発行元 題号
1897年(明治30年)9月1日 1904年(明治37年)11月30日 鉄道作業局 『運輸日報』
1904年(明治37年)12月1日 1907年(明治40年)3月30日 『鉄道作業局報』
1907年(明治40年)4月1日 1908年(明治41年)12月4日 帝国鉄道庁 『鉄道公報』
1908年(明治41年)12月5日
第1号
1920年(大正9年)5月17日
第2325号
鉄道院
1920年(大正9年)5月17日
第1号
1943年(昭和18年)10月31日
第5033号
鉄道省
1943年(昭和18年)11月1日
第1号
1945年(昭和20年)5月18日
第437号
運輸通信省 『運輸通信公報(運輸版)』
1945年(昭和20年)5月19日
第1号
1949年(昭和24年)5月31日
第1003号
運輸省 『運輸公報』
1949年(昭和24年)6月1日
第1号
1987年(昭和62年)3月31日
第11207号
日本国有鉄道
総裁室文書課
『鉄道公報』

『運輸日報』は、発行の事実が資料上確認できるものの、現存していることは確認されていない[3]

1946年(昭和21年)5月11日の紙面から、従来の漢字・片仮名交じりの表記が漢字・平仮名交じりの表記に改められ、1951年(昭和26年)4月1日の紙面から、従来の縦書きが横書きに改められた。

1964年(昭和39年)8月1日の紙面から、トップページに目次が追加された。

所蔵図書館・博物館

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鉄道公報を所蔵し、一般人の閲覧にも供している図書館・博物館としては、次のものがある。

  • 国立国会図書館・・戦後分の公報本体のみ
  • 鉄道博物館ライブラリー・・閲覧はマイクロフィルム化しており事前予約制
  • 京都鉄道博物館図書資料室・・付随する出版物も所蔵
  • 北海道立図書館・・鉄道作業局報明治37年12月分、帝国鉄道庁鉄道公報1~418号、鉄道院鉄道公報398~2325号、鉄道省鉄道公報1~636・788~3885・4186~5033号、運輸通信公報2~348号、運輸公報121~1003号、日本国有鉄道鉄道公報1~3285号

他に東京商工会議所経済資料センターが戦前分の公報本体を閲覧に供していたが、2018年の建て替え後、企業史・団体史に特化したチェンバーズギャラリーとしてリニューアルしたため、現況の所蔵状況は不明である。

北海道立図書館が所蔵するものは、鉄道友の会北海道支部の富樫俊介が寄贈したものである。富樫は、1960年(昭和35年)ごろ、札幌鉄道管理局から鉄道公報や札幌鉄道管理局報を譲り受け、整理・保管していたが、1985年(昭和60年)ごろ、これを道立図書館に寄贈した[4]

京都鉄道博物館を運営する交通文化振興財団は現在、鉄道公報のデジタル化を進めている[5]

その他

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  • 鉄道公報とは別に、各地の鉄道管理局は鉄道管理局報を発行していた。北海道立図書館では札幌鉄道管理局報を閲覧することができる。

関連項目

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脚注

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  1. ^ a b 宮坂正直「鉄道公報」『鉄道辞典』(下巻1195―1196頁、日本国有鉄道、1958年)
  2. ^ 高山拡志「停車場の調べ方――告示・公示と達」『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』(I巻26―30頁、JTB、1998年、ISBN 4-533-02980-9
  3. ^ a b 高山拡志「停車場の調べ方――告示・公示と達」『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』(I巻30―31頁、JTB、1998年、ISBN 4-533-02980-9
  4. ^ 石野哲「あとがき」『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』(II巻990頁、JTB、1998年、ISBN 4-533-02980-9
  5. ^ 交通文化振興財団「2.(4)2. 資料のデジタル化」『平成20年度事業計画』(2008年11月24日閲覧)

外部リンク

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  • 鉄道公報wiki - 日本国有鉄道発行の鉄道公報本紙の目次一覧を掲載