鉄道公報
鉄道公報(てつどうこうほう)は、日本の国有鉄道における業務上の命令等を伝達するために、国有鉄道当局が発行した官報に相当するものである。狭義には、帝国鉄道庁・鉄道院・鉄道省・日本国有鉄道が発行した『鉄道公報』という題号のものを指し、広義には、運輸通信省発行の『運輸通信公報(運輸版)』、運輸省発行の『運輸公報』等を含む。
日本国有鉄道の『鉄道公報』は日曜日、祝日、年末年始等を除く毎日発行され、国鉄内外の関係各所に配布されるとともに、それ以外の希望者には有償で頒布されていた。発行者は総裁室文書課長であった。1958年(昭和33年)ごろの発行部数は約32,000部であった[1]。1949年(昭和24年)6月1日の国鉄発足の日に第1号が発行され、分割民営化前日の1987年(昭和62年)3月31日の第11207号をもって廃刊となった。
内容
[編集]『鉄道辞典』によると、1958年(昭和33年)頃には『鉄道公報』は次の12欄に分かれていた[1]。また必要に応じて号外や付録が発行された。
- 詔書
- 法令(法律・政令・省令で、国鉄に関係するもの)
- 告示(各省大臣・各庁の長官が発する告示で、国鉄に関係するもの)
- 公示(国鉄総裁が発する公示)
- 訓令(各省大臣・各庁の長官が発する訓令で、国鉄に関係するもの)
- 達(国鉄総裁が発する達)
- 訓示(国鉄総裁の訓示)
- 辞令(叙位叙勲、指定職員等の辞令)
- 賞罰(表彰、懲戒等であって特に掲載の必要があるもの)
- 通達(通達・依命通達であって特に掲載の必要があるもの)
- 通報(規程類の施行上の指示その他執務上の注意を要する事項)
- 雑件(統計類その他であって特に掲載の必要があるもの)
「公示」は『鉄道公報』だけでなく『官報』にも掲載された。駅の新設・廃止の件は「公示」の形式で行われ、一方、仮乗降場・信号場・信号所・連絡所・操車場の設置・廃止、車両の入籍・廃車の件は「達」の形式で行われた[2]。
歴史
[編集]日本の国有鉄道当局が発行する公報は、次の表のような変遷をたどった[3]。
期間 | 発行元 | 題号 | ||
---|---|---|---|---|
1897年(明治30年)9月1日 | ― | 1904年(明治37年)11月30日 | 鉄道作業局 | 『運輸日報』 |
1904年(明治37年)12月1日 | ― | 1907年(明治40年)3月30日 | 〃 | 『鉄道作業局報』 |
1907年(明治40年)4月1日 | ― | 1908年(明治41年)12月4日 | 帝国鉄道庁 | 『鉄道公報』 |
1908年(明治41年)12月5日 第1号 |
― | 1920年(大正9年)5月17日 第2325号 |
鉄道院 | 〃 |
1920年(大正9年)5月17日 第1号 |
― | 1943年(昭和18年)10月31日 第5033号 |
鉄道省 | 〃 |
1943年(昭和18年)11月1日 第1号 |
― | 1945年(昭和20年)5月18日 第437号 |
運輸通信省 | 『運輸通信公報(運輸版)』 |
1945年(昭和20年)5月19日 第1号 |
― | 1949年(昭和24年)5月31日 第1003号 |
運輸省 | 『運輸公報』 |
1949年(昭和24年)6月1日 第1号 |
― | 1987年(昭和62年)3月31日 第11207号 |
日本国有鉄道 総裁室文書課 |
『鉄道公報』 |
『運輸日報』は、発行の事実が資料上確認できるものの、現存していることは確認されていない[3]。
1946年(昭和21年)5月11日の紙面から、従来の漢字・片仮名交じりの表記が漢字・平仮名交じりの表記に改められ、1951年(昭和26年)4月1日の紙面から、従来の縦書きが横書きに改められた。
1964年(昭和39年)8月1日の紙面から、トップページに目次が追加された。
所蔵図書館・博物館
[編集]鉄道公報を所蔵し、一般人の閲覧にも供している図書館・博物館としては、次のものがある。
- 国立国会図書館・・戦後分の公報本体のみ
- 鉄道博物館ライブラリー・・閲覧はマイクロフィルム化しており事前予約制
- 京都鉄道博物館図書資料室・・付随する出版物も所蔵
- 北海道立図書館・・鉄道作業局報明治37年12月分、帝国鉄道庁鉄道公報1~418号、鉄道院鉄道公報398~2325号、鉄道省鉄道公報1~636・788~3885・4186~5033号、運輸通信公報2~348号、運輸公報121~1003号、日本国有鉄道鉄道公報1~3285号
他に東京商工会議所経済資料センターが戦前分の公報本体を閲覧に供していたが、2018年の建て替え後、企業史・団体史に特化したチェンバーズギャラリーとしてリニューアルしたため、現況の所蔵状況は不明である。
北海道立図書館が所蔵するものは、鉄道友の会北海道支部の富樫俊介が寄贈したものである。富樫は、1960年(昭和35年)ごろ、札幌鉄道管理局から鉄道公報や札幌鉄道管理局報を譲り受け、整理・保管していたが、1985年(昭和60年)ごろ、これを道立図書館に寄贈した[4]。
京都鉄道博物館を運営する交通文化振興財団は現在、鉄道公報のデジタル化を進めている[5]。
その他
[編集]- 鉄道公報とは別に、各地の鉄道管理局は鉄道管理局報を発行していた。北海道立図書館では札幌鉄道管理局報を閲覧することができる。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ a b 宮坂正直「鉄道公報」『鉄道辞典』(下巻1195―1196頁、日本国有鉄道、1958年)
- ^ 高山拡志「停車場の調べ方――告示・公示と達」『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』(I巻26―30頁、JTB、1998年、ISBN 4-533-02980-9)
- ^ a b 高山拡志「停車場の調べ方――告示・公示と達」『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』(I巻30―31頁、JTB、1998年、ISBN 4-533-02980-9)
- ^ 石野哲「あとがき」『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』(II巻990頁、JTB、1998年、ISBN 4-533-02980-9)
- ^ 交通文化振興財団「2.(4)2. 資料のデジタル化」『平成20年度事業計画』(2008年11月24日閲覧)
外部リンク
[編集]- 鉄道公報wiki - 日本国有鉄道発行の鉄道公報本紙の目次一覧を掲載