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ポム・アンナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ポム・アンナの例

ポム・アンナフランス語: pommes Anna[1]pomme de terre Anna[2])は、フランス家庭料理としてよく食べられているジャガイモ料理の一種[1]。薄切りにしたジャガイモをキャセロール鍋に並べて入れ、オーブンで焼いた料理である[1]。日本語では「ジャガイモのアンナ」とされることもある[1]

概要

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薄切りにしたジャガイモを重ね合わせ、澄ましバターで焼き上げた料理である[3]

鴨料理や羊肉料理に合うとされる[3]

歴史

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アンナ・デリヨン英語版

1802年パリで開業したキャフェ・アングレ英語版[注釈 1]で、アドルフ・デュグレレ英語版[注釈 2]が考案した料理とされる[2][3][5]

キャフェ・アングレでは、ガルニチュール(付け合わせ)のスペシャリテとしてポム・アンナが提供されていた[4]。調理は専用の銅鍋3つで行われ、タルト・タタンのような大きさと高さに焼き上げたポム・アンナを客の前で好みの量をメートル・ドテルが切り分けて提供を行っていた[4]。1日にバケツ1杯ぶんの澄ましバターが使用されていたといわれる[4]

当時のパリ社交界で名の知れていた高級娼婦アンナ・デリヨン英語版(通称「パリの夜の女王」)のためにデュグレレが考案した料理で、名称もアンナ・デリヨンに因む[4]。ジャガイモを千切りにして、同様に焼き上げる「ポム・アネット」は、アンナ・デリヨンの愛称「アネット」からとられたグレードアップ版であり、アンナの顧客の中でも極少数の上客の時に出された料理である[4]

脚注

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注釈

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  1. ^ キャフェ・アングレの「アングレ」は「英国人」の意[2]アミアンの和約締結を記念しての店名とされる[2]1987年公開のデンマーク映画『バベットの晩餐会』の主要人物・バベットは元キャフェ・アングレのシェフという設定になっている[4]
  2. ^ アドルフ・デュグレレ(1805年 - 1884年)はアントナン・カレームの弟子の1人[5]。「舌平目のデュグレ風(sole à la Dugléré)」などで知られる[4]

出典

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  1. ^ a b c d アンドレ・パッション「フランスの食風景 ジャガイモ」『フランス郷土料理』河出書房新社、2020年、227頁。ISBN 978-4309287805 
  2. ^ a b c d 「注釈・索引 〈カ行〉」『フランス料理を築いた人びと』復刊ドットコム〈辻静雄ライブラリー〉、2013年。ISBN 978-4835449432 
  3. ^ a b c 「ポム・アンナ」『世界のじゃがいも料理』誠文堂新光社、2015年、91頁。ISBN 978-4416615935 
  4. ^ a b c d e f g 鳩のブドウ添え ヴィニョロン風(ぶどう栽培者風)”. フランス料理文化センター. 2025年2月7日閲覧。
  5. ^ a b 西川清博. “カレーム、200年前の串焼きロースト”. トップ・トレーディング. 2025年2月7日閲覧。

外部リンク

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