シャールヴィ
シャールヴィ[1](古ノルド語: Þjálfi)は、北欧神話に登場するアースガルズの住人(人間)。スィアールヴィ[2]、シアルフィ[3]、シアルヴィ[4]、、チアルフ[5]、チャールヴィ[1]、シアールフィ[要出典]とも。なお詩人エイリーヴはシャールヴィ(チャールヴィ)を「ヴロスカの弟」というケニングで呼んでいる[1]。
シャールヴィの実家は農家であった。トールとロキがウートガルズへの遠征の際に彼の家に立ち寄ったときにトールのヤギであるタングリスニとタングニョーストの肉を食べる機会を得る。その際、骨を損傷しないようトールから指示されたにもかかわらず、髄が好物だったため、骨を割って髄を食べてしまい、ヤギの脚に障害を与えてしまう。それがトールの激昂を招くが、父母ともども謝罪する姿を見て彼は怒りを解き、シャールヴィが妹レスクヴァとともにトールの従者としてウートガルズへ赴くことで許した。これ以後、二人はずっとトールに付き従うこととなった。(『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』第44章による)[6]
俊足であるが、ウートガルザ・ロキによってフギ(ウートガルザ・ロキの思考)と競走をすることとなり、完敗を喫する。(『ギュルヴィたぶらかし』第46章による)[7]
また、トールがフレーセイという島で女性のベルセルクを斃した折には、鉄棒を振り回して反撃してくる彼女たちに追い払われてしまった。(『古エッダ』の『ハールバルズルの唄』第37-39節による)[8]
しかしながら、スカルド詩『トール讃歌』においては、トールとシャールヴィが巨人ゲイルロズの館へ赴く途中、困難を乗り越えて海を渡った勇敢さが語られる。 また、巨人に囲まれても2人が敏速に逃れる様が描写される。
さらに、トールがフルングニルと決闘をした際には、フルングニルに駆け寄って「地中からトールが攻めてくるから楯を伏せたほうがいい」などと嘘を言い、まんまと彼を無防備にしてしまう。また、霜の巨人たちが応援のため差し向けた巨大な土人形、モックルカールヴィを破壊するなど、活躍ぶりを見せる。(第二部『詩語法』による)[9]
なお、この土人形破壊のエピソードについては次のような推論がある。すなわち、神話はしばしば劇として上演されることがあり、この物語を上演する際にはフルングニルに見立てた土人形をトールに扮した神官が破壊する場面があって、それが神話をまとめる過程でシャールヴィの活躍として神話に入り込んだのではないか、という解釈である[10]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年。
- V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。
- 山室静『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』筑摩書房、1982年、ISBN 978-4-480-32908-0。