ヒスパニア・F110
カテゴリー | F1 | ||||||||||
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コンストラクター | HRT | ||||||||||
デザイナー | ルカ・ピグナッカ | ||||||||||
後継 | ヒスパニア・F111 | ||||||||||
主要諸元 | |||||||||||
エンジン | コスワースCA2010 | ||||||||||
タイヤ | ブリヂストン | ||||||||||
主要成績 | |||||||||||
チーム | ヒスパニア・レーシング・F1チーム | ||||||||||
ドライバー |
カルン・チャンドック ブルーノ・セナ 山本左近 クリスチャン・クリエン | ||||||||||
出走時期 | 2010年 | ||||||||||
コンストラクターズタイトル | 0 | ||||||||||
ドライバーズタイトル | 0 | ||||||||||
通算獲得ポイント | 0 | ||||||||||
初戦 | 2010年バーレンGP | ||||||||||
最終戦 | 2010年アブダビGP | ||||||||||
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ヒスパニア・F110 は、ヒスパニア・レーシング・F1チームが2010年のF1世界選手権で使用したフォーミュラ1カー。設計・製作はダラーラが担当した。
概要
[編集]カンポスからHRTへ
[編集]2009年6月、当時カンポス・グランプリのオーナーであったエイドリアン・カンポスがダラーラとの技術提携で合意した[1]。他の新参チームが数値流体力学(CFD)によるシミュレーションでマシンの製造を行ったり、有名エンジニアを迎え入れてマシンの製造を行うなどの各チームのヴィジョンが早期に示される中、カンポスはダラーラとの技術提携からマシンの製作を行う事を発表する。しかし、予定していたよりも資金調達が難航し、遂には資金不足に陥った為にダラーラ側へ約束していた支払いを滞納させてしまう事態が発生した。一時は製造を止めていたダラーラであったが、ホセ・ラモン・カラバンテへチーム経営権を譲渡し、「ヒスパニア・レーシング・F1チーム(HRT)」として再建。滞納していた支払いもダラーラ側へ支払われ、マシン製造は再開された。それにより開幕戦バーレーンGPまでに製造は急ピッチで行われ、開幕直前の3月4日の発表会にF1マシンがお披露目された[2]。冬季テストも終わった開幕10日前の発表であった為、開幕戦であるバーレーンGPの金曜フリー走行が実質的なシェイクダウンとなった。又、この発表会ではまだマシン名称が決まっていなかったが、後に「F110」と発表された。
マシンカラーはダークグレーにスペインのナショナルカラーである赤と黄色、そして白のラインが施されている。サイドポンツーン側面には両ドライバーのファーストネームである「BRUNO」、「KARUN」、「SAKON」、「CHRISTIAN」が白抜きでペイントされているのが特徴である。
2010年シーズン
[編集]当初のF110はサスペンションが金属製であった。通常のF1マシンのサスペンションはカーボンファイバー製のものを使用している。また、予定していたよりも重量が20kg近く重いことも明らかとなった[3]。したがって、開幕戦バーレーンGPの予選ではトップチームより10秒遅れ、他の新参チームからも3秒以上も遅いタイムとなってしまった。
第2戦オーストラリアGPでは、開幕戦までに間に合わなかったカーボンファイバー製サスペンションが装着され、その他にも細部のマシン開発が見られた。その後、第4戦中国GPより、チャンドックのマシンのみ新型燃料タンクが投入された。これにより、マシンの重量配分の改善を狙ったアップデートが施された。
先述のとおり、第2戦オーストラリアGPにおいて、F110のサスペンションもカーボンファイバー製の物へ代わった他、その他の開幕戦までの間に合わせの様なマシンに対するアップデートも功を奏し、実質予選で3秒近いタイムアップを果たした。尚、このレースでカルン・チャンドックが14位で完走し、これがF110にとっての初完走記録となる。
その後も、チャンドックは第4戦中国GPまで3戦連続完走を果たした。又、チームメイトのセナも第3戦、第4戦で完走を果たし、序盤の開幕遠征ラウンドにおいては新参チームの中で最も高い完走率となった(単純に完走率ではロータス・レーシングと同率)。但し、他の新参チームとの差を依然として予選・決勝においても1秒近く開かれており、今後のマシン開発の必要性が課題となっている。
その後も、シーズン中にはマシンが改善されると言われていたものの、マシンを開発したダラーラとの契約解消によりアップデートは出来ず、シーズンで最も低速サーキットであるモナコGPで走ったウィングと同じスペックのウィングを最速のサーキットであるイタリアGPでも使った。これは過去10年間で初めての出来事で、極めて異例である。
最終的にアップデートはされなかったが、信頼性はそこそこであり新規参入チームであるヴァージンを抑えてコンストラクターズ11位となった。
スペック
[編集]シャーシ
[編集]- シャーシ名 F110
- シャーシ構造 カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック(FIA規定の衝撃・強度基準)
- 全幅 1,800 mm
- ブレーキキャリパー 6ピストンキャリパー
- ブレーキディスク・パッド カーボンファイバーディスク・パッド
- クラッチ カーボン・マルチプレート
- フロントサスペンション 金属製[4]⇒カーボンファイバーコンポジッド製ダブルウィッシュボーン
- リヤサスペンション 金属製[4]⇒カーボンファイバーコンポジッド製ダブルウィッシュボーン
- ダンパー -
- ホイール OZ社 鍛造マグネシウム
- タイヤ ブリヂストンポテンザ(前幅:325 mm/後幅:375 mm)
- ギアボックス Xtrac社製 電子油圧駆動7速+リバース1速シームレスシーケンシャルセミオートマチック/
- 冷却システム オイル・冷却水・ギアボックスラジエーター(アルミニウム製)
- 電子制御装置 FIA標準エンジンコントロールユニット
- 燃料タンク ケブラー強化ゴム製
- ステアリング ラック・アンド・ピニオン(パワーアシスト付)HRTF1ステアリング・ホイール
- コクピット 75mmショルダーストラップ付6点式安全ハーネス/HANSシステム、アルカンターラで覆った取り外し可能なカーボンファイバー製シート
- 重量 冷却水、潤滑油、ドライバーを含めて620kg[5]
エンジン
[編集]- エンジン名 コスワースCA2010
- 気筒数・角度 V型8気筒・90度
- 排気量 2,400 cc
- 最高回転数 18,000 rpm(レギュレーションで規定)
- シリンダーブロック アルミニウム製
- クランクシャフト 鋳鉄製
- ピストン アルミニウム製
- コンロッド チタニウム製
- バルブ駆動 圧搾空気式
- イグニッション コスワース
- インジェクション コスワース
- 燃料 BP
(※:上記スペック及び、関係者や製造元等の情報文献はFormula One Supporters Associationによる。)
記録
[編集]年 | No. | ドライバー | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | ポイント | ランキング |
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BHR |
AUS |
MAL |
CHN |
ESP |
MON |
TUR |
CAN |
EUR |
GBR |
GER |
HUN |
BEL |
ITA |
SIN |
JPN |
KOR |
BRA |
ABU | |||||
2010 | 20 | チャンドック | Ret | 14 | 15 | 17 | Ret | 14 | 20 | 18 | 18 | 19 | 0 | 11位 | |||||||||
クリエン | Ret | 22 | 20 | ||||||||||||||||||||
20/21 | 山本 | 20 | Ret | 19 | 20 | 19 | 16 | 15 | |||||||||||||||
21 | セナ | Ret | Ret | 16 | 16 | Ret | Ret | Ret | Ret | 20 | 19 | 17 | Ret | Ret | Ret | 15 | 14 | 21 | 19 |
- 太字はポールポジション、斜字はファステストラップ。(key)
- 山本はイギリスグランプリではNo.21を、それ以降はNo.20をドライブ。
- クリエンは山本に代わりシンガポールグラプリ・ブラジルグランプリ・アブダビグランプリでNo.20をドライブ。
脚注
[編集]- ^ “カンポス・グランプリとは”. F1-Gate.com. (2009年6月13日) 2009年6月13日閲覧。
- ^ F1 Gate.com2010年3月5日
- ^ F1 Gate.com2010年3月6日
- ^ a b 開幕戦はカーボンファイバーを使用したサスペンションが間に合わなかった為、金属製の物を使用した。
- ^ 当初はさらに20kg近く重かった