アンディ・コーウェル
アンディ・コーウェル Andy Cowell | |
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生誕 |
1969年2月12日(55歳) イギリス・ランカシャー ブラックプール[1] |
国籍 | イギリス |
職業 | 自動車技術者(エンジン) |
前任者 | マーティン・ウィットマーシュ(アストンマーティン・グループCEO) |
アンディ・コーウェル(Andy Cowell、1969年2月12日[2] - )は、イギリスの自動車技術者であり、自動車レースのフォーミュラ1(F1)車両のエンジン開発で知られる。2024年現在、アストンマーティンF1のグループCEOを務めている[3]。
英国機械学会(IMechE)と王立工学アカデミーの会員である[1]。
経歴
[編集]父親はレース好きで、ヒルクライムレースなどに参戦し、F1も熱心に視聴するという家庭環境でコーウェルは育った[1]。そのため、コーウェル自身も将来F1で働くことを子供のころから夢見ていた[1]。
コスワース / BMW
[編集]大学で機械工学の学位を得た後、1991年にコスワースに入社し、同社内の様々な技術部門で働いた後、エンジンの設計開発部門に加わった[1]。
入社直後から、1993年のマクラーレン・フォード、翌1994年のベネトン・フォードをはじめ、1990年代のコスワースのF1活動でエンジン開発に携わった[2]。1999年には新型のCRエンジンの開発を担当し、同エンジンを搭載したスチュワート・SF-3は同年のヨーロッパGPで優勝を果たした[1][4][2]。
2000年に一時的にBMWモータースポーツに移籍し、2001年のウィリアムズ用のBMW・P80エンジンの開発に携わった[1](このエンジンは年4勝を挙げた[4])。
翌2001年にはコスワースにプリンシパル・エンジニアとして復帰し、2004年まで同社のF1用V10エンジンの開発に携わった[1]。
メルセデス
[編集]2004年にメルセデス・イルモアにプリンシパル・エンジニアとして移籍し[5]、以降、16年に渡って同社でエンジン開発にあたることになる[1][4]。
当初は2006年からのレギュレーション改正で使用されることになるV8エンジン開発計画のチーフエンジニアを務め、そちらが軌道に乗った後は、2009年から使用されることになるKERS搭載エンジンの開発全般の責任者を務めた[1]。
この間、同社は2005年にメルセデス・ベンツ・ハイパフォーマンス・エンジンズ(HPE)に改称され、コーウェルは2008年7月に同社の技術面の責任者であり、エンジン/パワートレイン開発戦略の責任者でもあるエンジニアリング/プログラムディレクターに就任した[5][1]。
マネージングディレクター
[編集]同社は2011年にメルセデスAMG・ハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)に改称され、コーウェルは2013年1月に同社の事実上のトップであるマネージングディレクターに就任した[5][1]。2014年からターボエンジンとハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニット(PU)についての新規定が導入されることになり、コーウェルはその開発を監督する役割を担うことになる[1]。
実際にはこの「パワーユニット」の開発はコーウェルの指揮の下で2011年には始まっており[6][7]、充分な開発期間の末に完成した「PU106A」は登場した2014年時点でライバルであるフェラーリとルノーのPUに対して圧倒的と言ってよいほどの大きなアドバンテージを築いた[8][9]。これにより、その開発の中心人物だったコーウェルの名はよく知られるようになる。
2014年に開幕したパワーユニット時代のF1において、同PUを擁したメルセデスチームは選手権を席巻し続け[1]、最終的に、ドライバーズタイトルは7年連続(2020年まで)、コンストラクターズタイトルは8年連続(2021年まで)で獲得し続けた。コーウェルはHPP社を離れることを2020年6月に表明し、その職務はハイウェル・トーマスに引き継がれた[10]。
2020年末にHPP社を去った後、コーウェルについて、F1に参戦している他のエンジンサプライヤーに移籍するのではないかとの噂がたびたび出たが[4][11]、その後の数年間、コーウェルはF1関連のどの組織にも所属しなかった。
アストンマーティン
[編集]2024年7月にアストンマーティンF1のグループCEOに就任(同年10月付け)することが発表された[3][12]。2024年シーズンに同チームが低迷したことを受けて、2025年1月に組織改革が発表され、コーウェルはチーム代表に就任した[2][13]。
栄典
[編集]- 2013年・ジェームズ・クレイトン賞(英国機械学会)[1]
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “Andy Cowell” (英語). Mercedes-AMG Formula One Team. 2020年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月22日閲覧。
- ^ a b c d “Who is Andy Cowell? All you need to know about Aston Martin’s new F1 team boss” (英語). Formula1.com (2025年1月1日). 2025年1月19日閲覧。
- ^ a b Alex Kalinauckas (2024年7月3日). “アストンマーティンF1、元メルセデスPU主任を獲得。チームCEOに就任……ホンダ合流に向けて足場固める”. Motorsport.com. 2025年1月19日閲覧。
- ^ a b c d “Four reasons why engine guru Andy Cowell’s departure from Mercedes is so significant” (英語). Formula One World Championship official website. Formula One World Championship Limited (2020年6月16日). 2022年2月22日閲覧。
- ^ a b c Andy Cowell. “Andy Cowell” (英語). LinkedIn. 2022年2月22日閲覧。
- ^ Jonathan Noble (2011年12月9日). “Mercedes poised to give 2014 Formula 1 engine first dyno test” (英語). Autosport. 2022年2月22日閲覧。
- ^ Motor Fan illustrated モータースポーツのテクノロジー 2014-2015、「ファクトリー訪問」 pp.36–39
- ^ 小倉茂徳 (2014年12月31日). “オグたん式「F1の読み方」 - 2014年を振り返ってみて”. Car Watch. インプレス. 2022年2月22日閲覧。
- ^ 水書健司(翻訳) (2016年2月18日). “メルセデス「パワーユニット開発ルール変更でライバルとの格差は縮小される」”. autosport web. 三栄書房. 2022年2月22日閲覧。
- ^ “レッドブルF1のパワーユニット責任者、正式加入は1年後か。メルセデスとのガーデニング休暇契約で”. autosport web. 三栄 (2021年4月26日). 2022年2月22日閲覧。
- ^ “メルセデスF1の元エンジン責任者コーウェルがレッドブル入りとの報道を、両代表が否定”. autosport web. 三栄 (2021年5月26日). 2022年2月22日閲覧。
- ^ “引く手数多だったアストンマーティンF1加入のコーウェル。レッドブルも交渉したとホーナー代表が明かす”. autosport web. 三栄 (2024年7月18日). 2025年1月19日閲覧。
- ^ “アストンマーティンの新代表にコーウェルが就任。元代表クラックはトラックサイド部門の責任者に”. autosport web. 三栄 (2025年1月11日). 2025年1月19日閲覧。
参考資料
[編集]- 『Motor Fan illustrated モーターファン別冊』シリーズ(NCID AA12467385)
- 2015-02-06、『Motor Fan illustrated モータースポーツのテクノロジー 2014-2015』、三栄書房 ISBN 4779623774 ASIN B00SAENRDU
外部リンク
[編集]- Andy Cowell - Linkedin