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1987年の全日本ロードレース選手権

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1987年の全日本ロードレース選手権
前年: 1986 翌年: 1988

1987年の全日本ロードレース選手権 (1987ねん の ぜんにほんロードレースせんしゅけん) は、1987年昭和62年)3月8日鈴鹿BIG2&4レースで開幕し、同年11月8日MFJグランプリ (筑波)で閉幕した全12戦による1987年シーズンの全日本ロードレース選手権である。

トップカテゴリーの500ccクラスチャンピオンは藤原儀彦ヤマハ)が獲得[1]、250ccクラスのチャンピオンは清水雅広味の素ホンダ)が獲得した[2]

1987年シーズン

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レーススタート方式に同年から変更があり、これまでTT F1クラス以外は押しがけスタートで決勝スタートが切られていたが、本年より全クラスでクラッチスタート(スタンディングスタート)が採用された。これはFIMロードレース世界選手権(WGP)のルール変更に準じたものである。

500ccクラス

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前年チャンピオン獲得を達成したホンダ・レーシング木下恵司がゼッケン1をつけ最新型NSR500で連覇を狙う。対するヤマハは250ccチャンピオンとなった片山信二を500ccにステップアップさせ、ベテランの河崎裕之が同じラッキーストライク・カラーをまといサポートする。加えて、前年に型落ちのヤマハ・YZR500で粗削りながら3位を一度獲得したモトショップ梶ヶ谷RTの藤原儀彦に今季も1年型落ちのYZRを供給。しかし開幕の時点で片山、藤原両者とも、まだ500ccでのタイトル争いに顔を出す存在とは考えられていなかった[3]

スズキは、WGP500でのワークス活動を復帰させると同時に全日本でも完全新型となるV型4気筒エンジン搭載のRGV-Γの投入初年度であり[4]、まだ初期トラブルが多く、その熟成に力を注ぐシーズンとみられた[5]水谷勝伊藤巧がこの新マシンで参戦。

開幕戦の鈴鹿BIG2&4では、スポット参戦したGPライダー、ニール・マッケンジー(HBホンダ/NSR500)の完勝となり、木下、水谷、河崎、片山信は転倒。緒戦からタイトル争いの行方は本命なき戦いとなっていった。そんな中、ホームコースの筑波で前年型YZRの藤原が頭角を現し始める。第2戦筑波では序盤からレースをリードし、水谷、木下、片山とのバトルの末3位、第4戦筑波では自身初のポールポジションを獲得、決勝でも追いすがる片山を振り切り初優勝を挙げる。第5戦SUGOも連勝と高ポイント獲得を続ける活躍でランキングトップに浮上。第9戦筑波で3勝目を挙げた藤原はマシンが前年型であることを感じさせない成長を見せ、最終戦を残し過去最年少での全日本500ccチャンピオンの座に就いた。この活躍により、翌年からのヤマハファクトリー入りも確実なものとした。

最終戦・MFJグランプリには、WGP500フル参戦1年目を終えたロスマンズ・ホンダ八代俊二が参戦。新チャンピオンとなった藤原と八代の一騎打ちとなった決勝レースでは藤原がバトルを制して4勝目を挙げ、チャンピオンの名に恥じない走りを見せた[6]

250ccクラス

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シーズンを通して速さを見せ続けたのは、タイトルスポンサーに味の素が就き、白と青のTERRAカラーとなったホンダ・NSR250に乗る清水雅広小林大のホンダHRCコンビであった。前年このクラスを制したヤマハ・YZR250奥村裕長谷川嘉久の2台でホンダのTERRAコンビと対峙する構想だったが、スタート直後数周で逃げてしまう清水の速さは真後ろを走った奥村をして、「あの速さはマシンが良いだけの差ではない」と認める走りであった[7]。ヤマハは第6戦鈴鹿から、前戦SUGOにて市販レーサーTZポールポジションを奪った若手本間利彦にもYZRを供給しテコ入れを図る。本間は第8戦SUGOや最終戦MFJ-GPで清水に挑み、最終戦では前を走る時間も長かったが、一歩及ばず2位でチェッカー。清水はシーズン7勝を挙げる圧勝で全日本250チャンピオンを獲得。チャンピオンを決めた後に遠征したアルゼンチンGPでトップ争いの末3位表彰台を獲得など、翌年からの世界GP進出を決定づけた[2]

スケジュールおよび勝者

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決勝日 開催イベント 500cc 優勝 250cc 優勝 125cc 優勝 TT F1 優勝 TT F3 優勝
1 3月8日 鈴鹿BIG2&4 ニール・マッケンジー ケビン・マギー
2 4月12日 筑波ロードレース大会 水谷勝 清水雅広 山本陽一
3 4月26日 鈴鹿ロードレース大会 樋渡治 小林大 岡本利行 徳野政樹 山本陽一
4 5月10日 筑波ロードレース大会 藤原儀彦 清水雅広 畝本久
5 5月24日 SUGOロードレース大会 藤原儀彦 ジョン・コシンスキー 町井邦生 高吉克朗
6 6月8日 鈴鹿200kmレース 清水雅広 高田孝慈 ケビン・マギー 塩森俊修
7 6月28日 筑波ロードレース大会 水谷勝 清水雅広 岡本利行 大島行弥
8 7月12日 SUGOロードレース大会 木下恵司 清水雅広 高田孝慈 大島行弥 田口益充
9 8月9日 筑波ロードレース大会 藤原儀彦 清水雅広 藤原優 大島行弥
10 9月13日 SUGOロードレース大会 片山信二 ジョン・コシンスキー 大島行弥 塩森俊修
11 9月27日 鈴鹿ロードレース大会 木下恵司 宮城光 岡本利行 三浦昇 田口益充
12 11月8日 MFJグランプリ (筑波) 藤原儀彦 清水雅広 向井慎吾 町井邦生 田口益充
チャンピオン 藤原儀彦 清水雅広 畝本久 大島行弥 田口益充

シリーズポイントランキング

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ポイントシステム:
順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位 11位 12位 13位 14位 15位
ポイント 20 17 15 13 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
  • 第12戦MFJ-GPでは、特別ポイントとして入賞者に従来のポイント+3ポイントが与えられる。

500cc

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順位 No. ライダー 使用車両 1
SUZ
2
TSU
3
SUZ
4
TSU
5
SUG
7
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8
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9
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10
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11
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12
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ポイント
1 6 藤原儀彦 ヤマハ・YZR500 ('86) 3 3 7 1 1 2 5 1 2 3 1 173
2 1 木下恵司 ホンダ・NSR500 Ret 4 2 3 Ret 4 1 4 Ret 1 5 125
3 19 片山信二 ヤマハ・YZR500 9 2 6 2 Ret 3 3 2 1 4 Ret 124
4 9 樋渡治 ホンダ・NS500 Ret 5 1 4 2 5 4 3 4 Ret - 102
5 3 水谷勝 スズキ・RGV-Γ500 6 1 5 Ret 4 1 Ret Ret 7 5 Ret 85
6 5 河崎裕之 ヤマハ・YZR500 Ret DNS 3 - Ret - 2 - 3 2 3 82
7 8 五百部徳雄 ホンダ・RS500R 7 6 Ret 5 3 6 6 Ret 6 Ret - 45
8 20 島田進 スズキ・RG-Γ500
スズキ・RGV-Γ500 (Rd.12)
7 7 - - 6 - 4 35
9 4 伊藤巧 スズキ・RGV-Γ500 - 8 4 6 6 Ret 7 5 5 Ret Ret 34
10 2 八代俊二 ホンダ・NSR500 4 - - - - - - - - - 2 33
MFJライセンスではない海外ライセンス選手のため全日本選手権ポイント対象外
- 02 ニール・マッケンジー ホンダ・NSR500 1 - - - - - - - - - - -
- 03 ケニー・アイアンズ スズキ・RGV-Γ500 2 - - - - - - - - - - -
- 05 ロジャー・バーネット ホンダ・NSR500 ('86) 5 - - - - - - - - - - -
- 04 アレッサンドロ・バレージ ホンダ・RS500R Ret - - - - - - - - - -
- 01 ケビン・ミッチェル ホンダ・RS500R - - - - - - - - - - Ret -

250cc

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順位 No. ライダー 使用車両 2
TSU
3
SUZ
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6
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8
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11
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12
TSU
ポイント
1 3 清水雅広 ホンダ・NSR250 1 2 1 2 1 1 1 1 2 WGP 1 194
2 4 小林大 ホンダ・NSR250 2 1 2 4 2 3 8 5 Ret 5 3 147
3 30 本間利彦 ヤマハ・TZ250
ヤマハ・YZR250
23 Ret 3 Ret Ret 4 2 3 3 3 2 110
4 16 奥村裕 ヤマハ・YZR250 6 Ret 13 3 2 3 2 Ret Ret 4 93
5 76 宮城光 モリワキ・Zero-Z250 4 9 8 4 5 5 9 14 1 Ret 92
6 29 小園勝義 ホンダ・NSR250 ('86)
ホンダ・RS250R ('88)
3 Ret 9 3 5 Ret 7 4 10 8 84
7 21 新井純也 ヤマハ・TZ250 7 6 7 6 Ret 2 6 68
8 28 難波恭司 ヤマハ・TZ250 13 13 4 Ret 7 6 4 Ret Ret 13 5 68
9 12 菊池正剛 ホンダ・RS250R 9 6 14 8 9 8 5 12 9 67
10 18 三笘昭夫 ホンダ・RS250R 14 12 12 9 10 7 8 7 49
11 10 冨田英志 ホンダ・RS250R 5 11 7 11 15 15 12 13 10 45
12 5 田村圭二 ヤマハ・TZ250 15 4 14 13 6 4 14 44
13 23 金安智彦 ヤマハ・TZ250 7 5 7 11 11 11 44
14 42 鈴木淳 ホンダ・RS250R 11 8 10 10 10 8 39
15 17 太田通有 ヤマハ・TZ250 5 10 9 12 7 15 38
MFJライセンスではない海外ライセンス選手のため全日本選手権ポイント対象外
- 01 ジョン・コシンスキー ヤマハ・YZR250 - - - 1 - - - - 1 - - -
- 02 ケビン・ミッチェル ヤマハ・TZ250 - - - - - - - - - - Ret -

125cc

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順位 No. ライダー 使用車両 3
SUZ
4
TSU
6
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7
TSU
8
SUG
9
TSU
11
SUZ
12
TSU
ポイント
1 2 畝本久スペイン語版 ホンダ・RS125R Ret 1 2 2 6 2 2 101
2 21 高田孝慈スペイン語版 ホンダ・RS125R 4 1 3 1 7 3 95
3 1 吉田健一 ホンダ・RS125R 9 5 3 11 3 5 3 4 95
4 18 向井慎吾 ホンダ・RS125R 5 3 7 Ret 5 8 4 1 90
5 20 岡本利行 ホンダ・RS125R 1 10 4 1 9 1 Ret 86
6 11 山崎冬樹 ホンダ・RS125R 8 6 8 7 2 4 65
7 69 島正人 ホンダ・RS125R 11 8 10 3 8 10 51
8 5 山田一弥 ホンダ・RS125R 10 2 13 14 6 7 50
9 17 山本一郎 ホンダ・RS125R 12 4 7 6 5 50
10 67 小沼賀代子 ホンダ・RS125R 12 4 10 5 6 47
11 4 末岡償一 ホンダ・RS125R 2 Ret 5 13 11 14 14 40
12 74 藤原優 ホンダ・RS125R 1 11 9 35
13 8 廣瀬政幸 ホンダ・RS125R 3 9 7 15 35
14 12 小川敬義 ホンダ・RS125R 14 12 9 8 8 32
15 30 井形マリ ホンダ・RS125R 6 8 5 DNS 29

TT F1

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順位 No. ライダー 使用車両 1
SUZ
3
SUZ
5
SUG
6
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7
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10
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11
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12
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ポイント
1 2 大島行弥 ヨシムラスズキ・GSX-R750 Ret 7 Ret 2 1 1 1 2 3 121
2 11 宮崎祥司 ホンダ・RVF750 6 2 2 3 Ret 4 2 7 2 118
3 91 町井邦生 ヤマハ・FZR750
ヤマハ・YZF750
Ret 10 1 5 4 Ret 3 6 1 98
4 72 徳野政樹 ホンダ・VFR750
ホンダ・RVF750
2 1 4 4 7 3 6 Ret Ret 97
5 19 喜多祥介 ホンダ・RVF750 12 8 3 7 5 Ret 5 5 6 82
6 5 斉藤光雄 ヤマハ・FZR750 4 6 9 8 5 9 10 4 78
7 71 三浦昇 ホンダ・RVF750 - 12 5 3 Ret 7 1 5 73
8 3 島田進 スズキ・RG500Γ 14 13 8 2 7 13 8 53
9 93 高吉克朗 ヨシムラスズキ・GSX-R750 Ret 3 7 8 4 13 51
10 23 大島正 ホンダ・VFR750 6 10 10 6 11 15 9 48
11 8 平塚庄治 ヤマハ・YZF750 3 - Ret 6 2 42
12 80 樋渡治 モリワキホンダ・Zero Z 5 5 10 Ret 12 32
13 26 多田喜代一 カワサキ・ZXR750 11 10 3 26
MFJ競技ライセンスではない海外ライセンス選手のため全日本選手権ポイント非対象
- 01 ケビン・マギー ヤマハ・YZF750 1 - - - 1 - - - - -
- 02 リチャード・スコット ホンダ・RVF750 10 - - - - - - - - -

TT F3

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順位 No. ライダー 使用車両 2
TSU
3
SUZ
5
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6
SUZ
8
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9
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10
SUG
11
SUZ
12
TSU
ポイント
1 6 田口益充 ホンダ・RVF400 2 2 3 3 1 4 5 1 1 151
2 2 塩森俊修 ヤマハ・YZF400 9 - 5 1 2 3 1 2 3 125
3 50 高吉克朗 ヨシムラスズキ・GSX-R400 6 3 1 7 5 5 2 3 4 124
4 1 山本陽一 ホンダ・RVF400 1 1 7 5 4 8 6 5 7 114
5 9 大島行弥 ヨシムラスズキ・GSX-R400 3 Ret 2 2 Ret 1 3 - - 84
6 8 平塚庄治 ヤマハ・YZF400 4 - Ret 4 3 2 4 4 84
7 24 阿部直人 ホンダ・RVF400 ('86) 14 4 6 6 8 9 6 5 74
8 49 佐藤雅司 ヤマハ・FZR400 11 6 4 15 10 8 8 54
9 43 小谷野広治 ホンダ・NSR250R 12 8 7 6 7 6 53
10 40 生見友希雄 ヤマハ・TZR250 10 7 10 9 7 7 46

ジュニア区分

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ライセンス クラス チャンピオン マシン チーム
ジュニア 250cc 嶋村健太 ホンダ・RS250R KENWOODブルーフォックス
125cc 佐藤聡一郎 ホンダ・RS125R チームファントム
ライダーズサロン横浜
TT F3 新垣敏之 ホンダ・NSR250R PERSON'S チームLe Mans

関連項目

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脚注

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  1. ^ 歴代チャンピオン1987国際A級 MFJ日本モーターサイクルスポーツ協会 (2025年1月16日閲覧)
  2. ^ a b 「清水雅広 存在をアピールした22歳のジャパニーズ」『サイクルワールドスペシャル 1987 GRAND PRIX SCENE』CBS・ソニー出版、1987年12月29日、86-87頁。
  3. ^ 「全日本チャンピオン獲得に燃える男たち 片山信二」『グランプリ・イラストレイテッド No.20』ヴェガ・インターナショナル、1987年5月1日、95頁。
  4. ^ 「伊藤巧インタビュー」『グランプリ・イラストレイテッド No.21』ヴェガ・インターナショナル、1987年6月1日発行、66-69頁。
  5. ^ 「全日本チャンピオン獲得に燃える男たち 水谷勝」『グランプリ・イラストレイテッド No.20』ヴェガ・インターナショナル、1987年5月1日、94頁。
  6. ^ 「全日本を熱くした5つのサクセス・ストーリー 史上最年少チャンピオン誕生、ライバルたちの自滅で藤原独走」『サイクルワールドスペシャル 1987 GRAND PRIX SCENE』CBS・ソニー出版、1987年12月29日、148-151頁。
  7. ^ 「特集MFJグランプリ・絶好調清水の走りに注目」『ライディング No.212』日本モーターサイクルスポーツ協会、1987年10月1日、24-25頁。