コンテンツにスキップ

川崎重工業船舶海洋ディビジョン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
川崎重工業 > 川崎重工業船舶海洋ディビジョン
神戸工場俯瞰(神戸市中央区)
神戸工場(神戸市中央区)。写真は第4ドック

船舶海洋ディビジョン(せんぱくかいようディビジョン)は、川崎重工業社内カンパニーである「エネルギーソリューション&マリンカンパニー」のうち、造船を手掛ける部門である。川崎重工業創業以来の事業であり、2002年から2010年までは100%子会社「川崎造船株式会社」であった。その後は船舶海洋カンパニーという社内カンパニーであったが、2021年4月、「エネルギーソリューション&マリンカンパニー」内の組織に再編された。

概要

[編集]

川崎重工業明治時代の創業以来の伝統的事業であった造船事業の系譜を継いでいる。2002年に川崎造船株式会社として分社化されたが、2010年に川崎重工本体へ再び吸収された。

分社時においては川崎重工グループ全体のうち造船事業は売上高で約10%にまで低下していた。分社後は世界的な造船活況の時期となり、2006年9月には神戸工場の受注残は21隻となり、阪神・淡路大震災以降で最高を記録した。2010年頃までのフル操業が予想されている[1]

水上オートバイカワサキモータースの取り扱いとなっている。

沿革

[編集]
  • 1878年(明治11年)川崎正蔵東京京橋南飯田町(築地)の官有地を借受け、川崎築地造船所を設立
  • 1896年(明治29年)株式会社川崎造船所設立
  • 1939年(昭和14年)川崎重工業株式会社に商号変更
  • 2002年(平成14年)船舶部門を川崎重工業株式会社から分離し、川崎造船株式会社を設立
  • 2007年(平成19年)8月25日 神戸工場で造船用クレーンのアームが倒壊する事故が発生。死者3人、重軽傷4人。
  • 2010年(平成22年)川崎重工業株式会社が川崎造船を吸収合併。造船事業は川崎重工業の社内カンパニーである「船舶海洋カンパニー」となる。
  • 2021年(令和3年)4月 社内カンパニー再編。「エネルギー・環境プラントカンパニー」と「船舶海洋カンパニー」との統合により「エネルギーソリューション&マリンカンパニー」が発足。造船事業は「船舶海洋ディビジョン」となる[2][3]

事業所と建造船舶

[編集]

工場は国内に兵庫県神戸市中央区東川崎町の神戸工場と、香川県坂出市川崎町の坂出工場の2か所、海外に3工場ある。

神戸工場

[編集]

神戸工場では民間用船舶のみならず、艦艇や海洋機器の製作、それらに関係する各種部品も扱っている。船舶の修理も可能で、主要工場の一つである神戸工場には海上自衛隊海上保安庁に所属する船舶がドック入りしていることもある。また、進水式の際には地元住民を招待することがある。なお、神戸工場はエネルギー・環境プラントカンパニーの工場も兼ねている。

貨物船は主に積載量5万5,000トンクラスのばら積み船を建造しており、同一タイプの船を複数受注し生産効率を高めている。2006年現在の神戸工場ではこのクラスの船舶を年間5隻強を建造できる。また、水中翼船ジェットフォイルボーイングからのライセンス)も建造している。

川崎造船分社以前に製造した艦船

[編集]
艦名 艦記号・番号 起工 進水式 竣工
うみたか型駆潜艇 1番艇「うみたか PC-309 1959年3月13日 1959年7月25日 1959年11月30日
みずとり型駆潜艇 1番艇「みずとり PC-311 1959年3月13日 1959年9月22日 1960年2月27日
いかづち型護衛艦 1番艦「いかづち DE-202 1954年12月18日 1955年9月6日 1956年5月29日
あやなみ型護衛艦 3番艦「うらなみ DD-105 1957年2月1日 1957年8月29日 1958年2月27日
おやしお型潜水艦 「おやしお」 SS-511 1957年12月25日 1959年5月25日 1960年6月30日
はやしお型潜水艦 2番艦「わかしお SS-522 1960年6月7日 1961年8月28日 1962年8月17日
なつしお型潜水艦 2番艦「ふゆしお SS-524 1961年12月6日 1962年12月14日 1963年9月17日
あさしお型潜水艦 1番艦「あさしお SS-562 1964年10月5日 1965年11月27日 1966年10月13日
3番艦「みちしお SS-564 1966年7月26日 1967年12月5日 1968年8月29日
うずしお型潜水艦 1番艦「うずしお SS-566 1968年9月25日 1970年3月11日 1971年1月21日
3番艦「いそしお SS-568 1970年7月9日 1972年3月18日 1972年11月25日
5番艦「くろしお SS-570 1972年7月5日 1974年2月22日 1974年11月27日
7番艦「やえしお SS-572 1975年4月14日 1977年5月19日 1978年3月7日
ゆうしお型潜水艦 2番艦「もちしお SS-574 1978年5月9日 1980年3月12日 1981年3月5日
4番艦「おきしお SS-576 1980年4月17日 1982年3月5日 1983年3月1日
6番艦「はましお SS-578 1982年4月8日 1984年2月1日 1985年3月5日
8番艦「たけしお SS-580 1984年4月3日 1986年2月19日 1987年3月3日
10番艦「さちしお SS-582 1986年4月11日 1988年2月17日 1989年3月24日
はるしお型潜水艦 2番艦「なつしお SS-584 1988年4月8日 1990年3月20日 1991年3月20日
4番艦「あらしお SS-586 1990年1月8日 1992年3月17日 1993年3月17日
6番艦「ふゆしお SS-588 1991年12月12日 1994年2月16日 1995年3月7日
おやしお型潜水艦 1番艦「おやしお SS-590 1994年1月26日 1996年10月15日 1998年3月16日
3番艦「うずしお SS-592 1996年3月6日 1998年10月15日 2000年3月9日
深海救難艇 潜水艦救難母艦「ちよだ」搭載艇 1985年
潜水艦救難艦「ちはや」搭載艇 2000年

川崎造船分社後に製造した艦船

[編集]
艦名 艦記号・番号 起工 進水式 竣工
おやしお型潜水艦
5番艦「いそしお SS-594 1998年3月9日 2000年11月27日 2002年3月14日
7番艦「くろしお SS-596 2000年3月27日 2002年10月23日 2004年3月8日
9番艦「やえしお SS-598 2002年1月15日 2004年11月4日 2006年3月9日
11番艦「もちしお SS-600 2004年2月23日 2006年11月6日 2008年3月6日

川崎重工吸収合併後に製造した艦船

[編集]
艦名 艦記号・番号 起工 進水式 竣工
そうりゅう型潜水艦 2番艦「うんりゅう SS-502 2006年3月31日 2008年10月15日 2010年3月25日
4番艦「けんりゅう SS-504 2008年3月31日 2010年11月15日 2012年3月16日
6番艦「こくりゅう SS-506 2011年1月21日 2013年10月31日 2015年3月9日
8番艦「せきりゅう SS-508 2013年3月15日 2015年11月2日 2017年3月13日
10番艦「しょうりゅう SS-510 2015年1月28日 2017年11月6日 2019年3月18日
12番艦「とうりゅう SS-512 2017年1月27日 2019年11月6日 2021年3月24日
たいげい型潜水艦 2番艦「はくげい SS-514 2019年1月25日 2021年10月14日 2023年3月予定
艦名 艦記号・番号 起工 進水式 竣工
深海救難艇 潜水艦救難母艦「ちよだ」搭載艇 2017年

坂出工場

[編集]

香川県坂出市の埋立地にある坂出工場は、瀬戸大橋上から工場全体を鳥瞰できる巨大工場。1967年から稼働し、建造第1号はタンカー「紀乃川丸」であった。2006年2月に建造250隻を達成した。現在は、大型LNG船等の10万トン超の大型貨物船を建造しており、2003年9月には当時世界最大の運搬容量(14万5,000立方m)のLNG船「エネルギー フロンティア」を建造した。LNG船は、その後、船体寸法を維持したまま船尾側の3つのタンクを上下方向に延長させた15万3,000立方m型へ発展。2008年12月に一番船「LNG BARKA」、2009年5月に二番船「エネルギーコンフィデンス」、2009年7月に三番船「LNGジュピター」が建造されて船主へ引き渡されている。

川崎重工時代の1989年には日本貨物鉄道(JR貨物)のEF66形電気機関車(100番台1次車全車と2次車の一部)がここで生産されている。

海外工場

[編集]

海外工場会社には、中国に南通中遠川崎船舶工程有限公司NACKS(江蘇省南通市)と大連中遠川崎船舶工程有限公司DACKS(遼寧省大連市)、ブラジルにエンセアダ・インドゥストリア・ナヴァル会社(バイーア州サルヴァドール)がある。[4]

関連項目

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ 2006年9月23日 日本経済新聞
  2. ^ 組織改正、役員の異動、業務執行体制の改正および人事異動』(プレスリリース)川崎重工業、2021年2月26日https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_210226-2_3.pdf2021年9月8日閲覧 
  3. ^ “川崎重工、造船・舶用関連トップに渡辺氏。4月1日付”. 日本海事新聞. (2021年3月2日). https://www.jmd.co.jp/article.php?no=265344 2021年9月8日閲覧。 
  4. ^ 事業所・工場紹介(川崎重工 船舶海洋カンパニーホーム/カンパニー情報)
  5. ^ 神戸新聞NEXT|経済|潜水艦「こくりゅう」と命名 川重神戸工場で進水式
  6. ^ 神戸新聞NEXT|経済|潜水艦「ずいりゅう」引き渡し式 三菱重神戸造船所

外部リンク

[編集]