垂足座標(すいそくざひょう[1]、英: pedal coordinates)は、ユークリッド平面上の点と曲線に対して定義される座標である。具体的には、点(pedal point)Oと曲線Cに対して、C上の点Pを、PとOの距離rと、Pにおける接線とOの距離p(垂直距離(英語版))の組(r, p)によって表す座標である。Oとの距離rと、Pにおける法線とOの距離pcの組で表す座標(contrapedal coordinate)もよく使われる。ただし、である。曲線が垂足座標によって表現された式をPedal equationという。
いくつかの曲線はPedal equationによって単純に表すことができる。また、Pedal equationによる形式は曲線の曲率などの計算を簡単にする。垂足座標は古典力学や天体力学において、力の問題を解決するのに使うことができる。
Cを直交座標でf(x, y) = 0と与え、Oを原点とする。点(x, y)の垂足座標は次のように計算できる[2]。
CのPedal equationはこれらの式からx,yを消去することによって得られる。
新たな変数zを用いて、曲線を斎次多項式g(x, y, z) = 0で表したとき、pは次のようにより単純な形で書ける[3]。
z = 1とすればもとの表示を得る。
Cを極方程式r = f(θ)で与えたとき、偏接角(英語版)をとして
と計算できる。CのPedal equationはこれらの式からθを消去することによって得られる[4]。
contrapedal coordinatesへの変換はとして、
が成り立つことより行える。これは、自励微分方程式によって極方程式が、
と表せるならば、pedal equationは次の形となることを意味する。
例として対数螺旋を挙げる。
における微分によって次の式を得る。
したがって、
が成立する。また、垂足座標において
を得る。または、を用いて、
この方法は、極方程式におけるn階()の自励な微分方程式の解となる曲線に一般化できる[5]。
は与えられた曲線の垂足曲線で、垂足座標では次の式で表現される。
ただし、微分の変数は。
古典力学における力の問題は、垂足座標を用いれば簡単に解決することができる。
力学系を次のように考える。
ただし、中心がであるローレンツ力が発生している平面において、位置と速度がそれぞれの試験粒子の発展を述べている。
次の量はこの系において保存されている。
このときの軌跡は、原点をpedal pointとする垂足座標において、次のように与えられる。
この形式は2017年、ペトル・ブラシュケ(Petr Blaschke)によって発見された[6]。
ケプラー問題を考える。
垂足座標によって、即座に解にたどり着くことができる。
ここでは粒子の角運動量、はそのエネルギー。また、等式は垂足座標において円錐曲線を表すことが分かった。
逆に試験粒子が曲線C上を動くために与える必要のある力を演繹することもできる。
正弦波螺旋は次の式で書かれる曲線である。
偏接角は
である。したがってpedal equationは、
となる。正弦波曲線の仲間のpedal equationを下の表に示した[7]。
n
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曲線
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垂足点
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Pedal eq.
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任意
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半径aの円
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中心
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1
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直径aの円
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円周上の点
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pa = r2
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−1
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直線
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直線からa離れた点
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p = a
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1⁄2
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カージオイド
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尖点
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p2a = r3
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−1⁄2
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放物線
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焦点
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p2 = ar
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2
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ベルヌーイのレムニスケート
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中心
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pa2 = r3
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−2
|
直角双曲線
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中心
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rp = a2
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の形で与えられる渦巻は次の式を満足する。
したがって、その垂足座標における表示は次のようになる。
下の表は特別の場合。
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曲線
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Pedal point
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Pedal eq.
|
1
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アルキメデスの螺旋
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原点
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|
−1
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双曲螺旋
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原点
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|
1⁄2
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放物螺旋
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原点
|
|
−1⁄2
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リチュース
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原点
|
|
エピサイクロイドまたはハイポサイクロイドは次のパラメトリック方程式で表せる。
原点におけるpedal equationは、
または、
である[8][9]。ただし、
特別の場合を以下の表に示した。b=a⁄nとする。
n
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曲線
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Pedal eq.
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1, −1⁄2
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カージオイド
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2, −2⁄3
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ネフロイド(英語版)
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−3, −3⁄2
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デルトイド
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−4, −4⁄3
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アステロイド
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他の有名な曲線においては下の表にまとめる[10]。
曲線
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方程式
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Pedal point
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Pedal eq.
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直線
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原点
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点
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原点
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円
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原点
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伸開線
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原点
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楕円
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中心
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双曲線
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|
中心
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楕円
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焦点
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|
双曲線
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|
焦点
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対数螺旋
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極
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デカルトの卵形(英語版)
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焦点
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として、
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カッシーニの卵形線
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焦点
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カッシーニの卵形線
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中心
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- ^ 宮本藤吉『英和数学新字典』開新堂、1902年、216頁。NDLJP:10.11501/826188。
- ^ Yates §1
- ^ Edwards p. 161
- ^ Yates p. 166, Edwards p. 162
- ^ Blaschke Proposition 1
- ^ Blaschke Theorem 2Blaschke Theorem 2
- ^ Yates p. 168, Edwards p. 162
- ^ Edwards p. 163
- ^ Yates p. 163
- ^ Yates p. 169, Edwards p. 163, Blaschke sec. 2.1