レニニア
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||
白亜紀 | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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レニニア(学名:Leninia)は、前期白亜紀アプチアン期後期のロシア西部に生息していたオフタルモサウルス亜科の原始的な絶滅した属。Valentin Fischer らが2013年に命名し、模式種は L. stellans である[1]。属名はロシア革命の指導者の1人であったウラジーミル・レーニンに由来し、レニニアが所蔵されている博物館もレーニンにちなんだ名前である。
バシコルトスタン共和国のクリウシ村の付近にあるヴォルガ川の川岸にて、石灰岩の団塊の中から2012年に標本が発見された。近辺ではアンモナイトや二枚貝、魚類といった生物の化石が産出する。頭骨の一部のみが発見されている[2]。
特徴
[編集]頭骨は不完全で、歯はなかった。部分的に横方向に潰れており、鼻孔よりも前方の構造は現存せず、多分に綺麗に破れている。これが造山運動と岩石が動いたことによるものなのか、それともレニニアが死亡した際の負傷なのかは不明である。標本の長さは約45センチメートルで、頭骨全体の長さは65 - 90センチメートルと推定されている。
上顎骨後方の構造は眼窩と同程度まで後ろに伸びており、眼窩に沿うようにしながら一部分が眼窩に突出していた。上顎骨の歯溝は非常に浅く、16ミリメートルにすぎなかった。涙骨と鼻孔は長く接触しており、前前頭骨よりもむしろ涙骨が鼻孔の縁を形成している。頬骨の前方の構造および軸は異常に細いが、後方の構造は発達した板状となり、眼窩の中央ほどの高さまで伸びている。
後眼窩骨は眼窩よりも小さく、上方から伸びる大きな隆起が存在する。方頬骨は他のオフタルモサウルス亜科の魚類よりも頑丈に見えるが、後眼窩骨と繋がる薄い構造を前方に持つ。靭帯が方形骨に繋がる部分は凹状の構造である。
鱗状骨は不完全ながらも存在し、他の骨との繋がりにより識別できる。鼻孔の上では鼻骨が特徴的な「翼」状構造を形成する。前前頭骨と鼻骨の接続面付近の孔の存在については明確な証拠はない。
他のオフタルモサウルス科の魚竜とは異なり、前前頭骨は鼻孔と眼窩の上に厚い構造を形成する。涙骨の縫合線は直線である。前頭骨の形状は三角形に近く、間に内鼻孔が存在する。星型の頭頂骨の又状に分かれた構造に沿って前頭骨の後方の構造は長く伸びている。L. stellansの種小名はこの星型に由来している。後前頭骨は短距離で鼻孔に達し、オフタルモサウルスと同様にY字型の前方構造を持たない。後前頭骨は上側頭窓に接しないが、上側頭骨との接触部位は長い。頭頂骨は上側頭骨の前方中央構造に触れており、固有派生形質である。この構造は後前頭骨が上側頭窓を塞いで伸びるのを防ぐ形になっている。対をなしている頭頂骨は互いにぶつかり合う形となっているが、隆起の存在を示す証拠はない。
上側頭骨は他のオフタルモサウルス亜科の魚竜よりも広がっているが、後前頭骨と鱗状骨により後眼窩骨から分断されている。両側に広がる「翼」状の構造は存在こそするものの実際には見ることはできず、歪んでいる。
基後頭骨は完全には保存されていないものの、関節領域は小さくなっており凹状である。後頭骨の関節丘は丸く膨らんでいるが、大後頭孔の保存状態は良くなく解剖学的特徴とは言い難い。
後頭骨の上部は大きく広がり、巨大な舌骨を有するが、方形骨を欠く。方形骨は大雑把に耳に似た形状をしており、後頭骨の薄片状の部分に付随する。
下顎は後部のみが保存され、歯のような識別の根拠となる特徴が失われている。上角骨の孔は存在するが極端に小さく、横方向に露出していた。しかしこれらの特徴は固有派生形質でも特徴的な形質でもない。
強膜輪は両目とも残っており、特に左のものは歪みが小さい。強膜輪は台形の骨の板が14枚集まって構成されており、内縁部に亀裂が走っている。強膜輪の穴は眼窩の面積のわずか11.03%にすぎず、標本の個体が成熟していたことを示している。
この節の内容は全て[2]に基づく。
進化学的重要性
[編集]レニニアは最も新しい時代に生息したオフタルモサウルス亜科の魚竜でありながら、一方で最も原始的なものである。非常に大きな強膜輪を持ち、これがオフタルモサウルスの最も基本的な特徴であることと、オフタルモサウルス亜科が生息期間の全体にわたって生態的地位を維持してきたことが窺える。レニニアの強膜輪の絶対的な大きさは、体との比率では魚竜で最大の目を持つと知られるバプタノドンとそれを超える大きさのテムノドントサウルスの間である。
オフタルモサウルス亜科は全てこのような構造を持っており、プラティプテリギウス亜科よりも目の構造が共通している。従ってプラティプテリギウス亜科ほどの多様性がなかったことが示唆されており、深く遊泳する生物として共通点を多く持ったことで、他の生態的地位では生存競争に敗れても、深海の環境に合わせて特殊化し生き延びた可能性がある[2]。
系統発生
[編集]以下のクラドグラムは Fischer らによる2013年の系統解析に基づく[1]。
トゥンノサウルス類 |
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出典
[編集]- ^ a b Fischer, V.; Arkhangelsky, M. S.; Uspensky, G. N.; Stenshin, I. M.; Godefroit, P. (2013). “A new Lower Cretaceous ichthyosaur from Russia reveals skull shape conservatism within Ophthalmosaurinae”. Geological Magazine 151: 1. doi:10.1017/S0016756812000994.
- ^ a b c Fischer, Valentin; Arkhangelsky, Maxim; N Uspensky, Gleb; Stenshin, Ilya; Godefroit, Pascal (2013-01-01). “A new Lower Cretaceous ichthyosaur from Russia reveals skull shape conservatism within Ophthalmosaurinae”. Geological Magazine 151. doi:10.1017/S0016756812000994 .