コンテンツにスキップ

イクチオサウルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イクチオサウルス
Ichthyosaurus
生息年代: 三畳紀後期 - ジュラ紀前期, Rhaetian–プリンスバッキアン
イクチオサウルス
地質時代
三畳紀 - ジュラ紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
: 魚竜目 Ichthyosauria
: イクチオサウルス科 Ichthyosauridae
: イクチオサウルス Ichthyosaurus
学名
Ichthyosaurus
De la Beche & Conybeare,1821
  • I. breviceps Owen, 1881
  • I. conybeari Lydekker, 1888
  • I. anningae Lomax & Massare, 2015
  • I. larkini Lomax & Massare, 2017[1]
  • I. somersetensis Lomax & Massare, 2017[1]

イクチオサウルス学名:Ichthyosaurus)は中生代後期三畳紀レーティアンから前期ジュラ紀プリンスバッキアンにかけて[2]ヨーロッパベルギーイングランドドイツスイス)とアジアインドネシア)に生息していた魚竜の属。魚竜の中で最も著名な属であり、魚竜目(イクチオサウリア)の模式属となっている[3][4][5]

発見と歴史

[編集]

イングランドで暮らすメアリー・アニングとその兄ジョセフ・アニングにより1811年から1812年にかけてイクチオサウルス・プラティオドンの化石が発見された。ただし、イクチオサウルス・プラティオドンは後にテムノドントサウルス・プラティオドンに再分類されることとなった[6]

1980年代にイングランドのドーセット州で発見された化石には、2015年、アニングにちなんでイクチオサウルス・アニンガエと命名された[7][8][9]。この化石はドンカスター博物館・美術館に所蔵されていたが、模型と間違えられていた。2008年マンチェスター大学のディーン・ロマックスが標本を本物の化石と判断し、ニューヨーク州立大学のジュディ・マサリとともに研究を進め、新種と認定した[7]

形態

[編集]
ヒトとの大きさ比較

イクチオサウルスは近縁の魚竜の大半よりも小さく、全長は3.3メートルに達する[10]。化石化した何百もの骨格がドイツのホルツマーデンにあるジュラ紀の岩石中から発見されている。胎児を身籠っている標本もあり、イクチオサウルスが胎生であったことが示唆されている。同様の標本が近縁な属であるステノプテリギウスでも発見されている[11][12]。ドイツの標本はイクチオサウルスの輪郭を如実に表しており、肉質の背ビレと巨大な尾ビレが存在したことが明らかになっている。他の魚竜でも同様の化石は発見されており、これはイクチオサウルスに限定される話ではない。

生態

[編集]
イクチオサウルス・アニンガエの復元図

イクチオサウルスの耳骨は硬く、水の振動を内耳へ伝搬していたと考えられている。とはいえ解剖学的特徴からイクチオサウルスが視力に重点を置いた捕食者であることが証明されており、巨大で敏感な目は強膜輪に保護されていた。魚類イカを主な食糧としていたことが糞石から判明している[13]

当初イクチオサウルスは陸上で産卵したと信じられていたが、雌が幼体を産んでいたという化石証拠が存在する。陸上に上がらないなど、完全なる海洋生活によく適応していることが窺える。胎児は尾から産まれ、水中で溺れることを防いでいた[11]

分類

[編集]

以下のクラドグラムは Fischer らによる2013年の系統解析に基づく[14]

イクチオサウルス・コミュニスの復元図
イクチオサウルス・コミュニスの化石標本
トゥンノサウルス類 

イクチオサウルス

ステノプテリギウス

チャカイコサウルス

 オフタルモサウルス科 

アースロプテリギウス

*
 オフタルモサウルス亜科 

レニニア

モレサウルス

オフタルモサウルス

バプタノドン ("O." natans)

アカンプトネクテス

 プラティプテリギウス亜科 

ブラキプテリギウス

マイアスポンディルス

アエギロサウルス

スヴェルトネクテス

プラティプテリギウス・ヘルキニクス

カイプリサウルス

アサバスカサウルス

プラティプテリギウス・アウストラリス

ギャラリー

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b Dean R. Lomax; Judy A. Massare (2016). “Two new species of Ichthyosaurus from the lowermost Jurassic (Hettangian) of Somerset, England”. Papers in Palaeontology Online edition. doi:10.1002/spp2.1065. 
  2. ^ Dean R. Lomax (2010). “An Ichthyosaurus (Reptilia, Ichthyosauria) with gastric contents from Charmouth, England: First report of the genus from the Pliensbachian”. Paludicola 8 (1): 22–36. 
  3. ^ Maisch MW, Matzke AT. 2000. The Ichthyosauria. Stuttgarter Beiträge zur Naturkunde Serie B (Geologie und Paläontologie) 298: 1-159
  4. ^ McGowan C, Motani R. 2003. Ichthyopterygia. – In: Sues, H.-D. (ed.): Handbook of Paleoherpetology, Part 8, Verlag Dr. Friedrich Pfeil, 175 pp., 101 figs., 19 plts; München
  5. ^ Maisch MW, Reisdorf AG, Schlatter R, Wetzel A. 2008. A large skull of Ichthyosaurus (Reptilia: Ichthyosauria) from the Lower Sinemurian (Lower Jurassic) of Frick (NW Switzerland). Swiss Journal of Geosciences 101: 617-627.
  6. ^ Pierce, P. (2006). Jurassic Mary: Mary Anning and the Primeval Monsters. Sutton Publishing
  7. ^ a b Gill, Victoria (19 February 2015). “BBC News - Forgotten fossil found to be new species of ichthyosaur”. BBC Online. 22 February 2015閲覧。
  8. ^ New species discovered in Doncaster” (19 February 2015). 22 February 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。22 February 2015閲覧。
  9. ^ Lomax, Dean R.; Massare, Judy A. (2015). “A new species of Ichthyosaurusfrom the Lower Jurassic of West Dorset, England, U.K.”. Journal of Vertebrate Paleontology: e903260. doi:10.1080/02724634.2014.903260. ISSN 0272-4634. http://zoobank.org/urn:lsid:zoobank.org:pub:A5778FB5-A116-480A-93CA-AFC932ACAB55. 
  10. ^ Lomax, D.R.; Sachs, S. (2017). “On the largest Ichthyosaurus: A new specimen of Ichthyosaurus somersetensis containing an embryo.”. Acta Palaeontologica Polonica. doi:10.4202/app.00376.2017. http://app.pan.pl/article/item/app003762017.html. 
  11. ^ a b Böttcher R. 1990. Neue Erkenntnisse über die Fortpflanzungsbiologie der Ichthyosaurier. Stuttgarter Beiträge zur Naturkunde Serie B (Geologie und Paläontologie) 164: 1-51
  12. ^ Martill D.M. 1993. Soupy Substrates: A Medium for the Exceptional Preservation of Ichthyosaurs of the Posidonia Shale (Lower Jurassic) of Germany. Kaupia - Darmstädter Beiträge zur Naturgeschichte 2: 77-97
  13. ^ Palmer, D., ed (1999). The Marshall Illustrated Encyclopedia of Dinosaurs and Prehistoric Animals. London: Marshall Editions. p. 80. ISBN 1-84028-152-9 
  14. ^ Fischer, V.; Arkhangelsky, M. S.; Uspensky, G. N.; Stenshin, I. M.; Godefroit, P. (2013). “A new Lower Cretaceous ichthyosaur from Russia reveals skull shape conservatism within Ophthalmosaurinae”. Geological Magazine 151: 1. doi:10.1017/S0016756812000994.