JR西日本271系電車
JR西日本271系電車 | |
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基本情報 | |
運用者 | 西日本旅客鉄道 |
製造所 | 近畿車輛 |
製造年 | 2019年 |
製造数 | 18両(2020年3月14日現在) |
運用開始 | 2020年3月14日[1][2] |
投入先 | はるか |
主要諸元 | |
編成 | 3両[2](0.5M方式で全車電動車) |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 |
直流1,500V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 130km/h[3] |
車体 | アルミニウム合金 |
台車 | WDT67・WTR249B・WTR249C |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 |
駆動方式 | WN駆動方式 |
制御方式 |
フルSiC-MOSFET素子VVVFインバータ WPC16(1C2M) |
制動装置 | MBS-A 全電気指令式電空併用方式 |
保安装置 | EB-N(デッドマン装置)、ATS-SW、ATS-P[3] |
271系電車(271けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の直流特急用車両。2020年(令和2年)3月14日から運用を開始した[1][2]。
概要
[編集]関西国際空港と大阪・京都・滋賀県南部を結ぶ特急「はるか」は、1994年(平成6年)の運転開始以来281系6両編成(一部列車は9両編成)で運行されている。しかし、インバウンド需要の増加から「はるか」の利用客増への対応が問題となっていたことや、2020年(令和2年)夏の東京五輪や2025年(令和7年)の大阪・関西万博など国際的な大型イベント等の開催でさらなる利用拡大が想定されることから、JR西日本は新たに60億円を投じて「はるか」増結用車両の増備を行い、全ての列車を9両編成で運行することを決めた[4]。これにより、1列車あたりの座席数は1.5倍になる[5][6][3][7]。
増備に際し281系の製造から既に25年経過しており、281系に増結させることを前提とした新設計車両を製造することになったもので、3両編成×6本の計18両が製造された。
281系では2019年(平成31年)1月から基本編成に「ハローキティ」のラッピングが順次行われているが、本形式は全編成にハローキティのラッピングが行われている[8]。
構造
[編集]車体
[編集]同社の287系を基本とし、さまざまな改良が加えられた[5]。製造時は3両編成を基本としつつ、6両編成も組成可能な設計となっている[7]。
外観では287系の形状を基本としているが、287系とは異なり運転台上部には前照灯が設置されていないほか、281系の特徴である前面貫通扉腰部をへこませた「インバースデザイン」を受け継いでいる。白■をベースに屋根部分を濃いグレー、裾部分をブルー■というデザイン、窓横などには「スクエアドット」と呼ばれる青色の模様なども281系から継承している。281系との併結時の一体感を感じさせるとともに、南紀方面に向かう特急「くろしお」との誤乗車を防ぐため、開発段階でホームに居てもはるかであることが一目で判るように配慮したという[5][6][7][9]。なお、281系にある屋根のJRマークは無い。
前面は287系同様の両開き貫通扉を備えているが、営業運転で併結する281系の貫通扉は非常用のため、幌を利用した車内通り抜けは実施されていない[6]。
287系や225系などに導入されているオフセット衝突対策や衝撃吸収構造の採用などにより車体構造を強化しているほか、EB-N装置の採用、機器の二重化など、安全に関する対策も強化されている[10][3][7]。
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車両ロゴ
(2019年11月8日 京都駅) -
車両後方から
(2019年11月8日 京都駅) -
側面の種別行先表示器
(2020年3月19日 京都駅) -
281系(左)と271系の連結部
機器類
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
主電動機は全閉式かご形三相誘導電動機[11]で、主回路装置は323系に準じたフルSiC-MOSFET素子適用[12]のWPC16形VVVFインバータ制御装置を搭載し、補助電源SIVと一体箱構成とした[11]。ブレーキ制御方式は全電気指令式、システムは287系に準じており[11]、各台車付近にMBS-Aブレーキ作用装置を1台搭載する。
電動空気圧縮機は、従来のスクリュー式に代わり、スクロール式をクモハ271形に1台搭載[11]。集電装置はシングルアーム式パンタグラフを同じくクモハ271形の連結寄りに1基設置した[11]。
車内
[編集]車内のカラーリングにおいては、華やかさや上品さをコンセプトとした281系を受け継ぎつつ、数々の新技術も導入された。多言語表示[注 1]にも対応した液晶ディスプレイ2画面による情報案内装置を設置。JR西日本の在来線車両では初となる、編成内のすべての座席にコンセントの設置を実現した。天井の高さは2,220 mmと、287系に比べて70 mm高くなった。荷物置き場は、従来デッキ部分に3段式で設置されていたものを、大型スーツケースを考慮して2段式となり、セキュリティも考慮し客室内に移した。客室、荷物置場、デッキなど、セキュリティ強化のため1両あたり8 - 9台の防犯カメラを搭載している。車いす対応の大型トイレを備え、洗面台には鏡にLED照明が埋め込まれ、自動で水やハンドソープが出るようになるなど、快適性の向上が見られる。フリーWi-Fiによるインターネットの接続も可能[5][6][13][14]。
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客室内
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肘掛に設置されているモバイル用コンセント
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車内ディスプレイ
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荷物置場
形式
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
287系同様、0.5M方式を採用した全電動車編成としている。前述のとおり、2019年(令和元年)時点では281系への増結用の付属編成のみが製造されている。グリーン車は設定されておらず、普通車のみで組成される。281系6両編成と併結する運用のため、野洲方先頭車のクモハ270形は営業運転で先頭に立つことはない。
編成
[編集]← 野洲・京都 関西空港 →
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形式 | クモハ270 -#0 (M'c) |
モハ270 -#0 (M') |
< クモハ271 -#0 (Mc) | |||
定員 | 34 | 44 | 44 | |||
機器 | V・SIV | V・SIV | V・SIV・CP |
- 凡例
- V:制御装置
- SIV:補助電源装置
- CP:電動空気圧縮機
編成表
[編集]2024年(令和6年)4月1日現在[18]
編成 番号 |
← 野洲・京都 関西空港 →
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落成日 | 備考 | ||
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クモハ 270 |
モハ 270 |
クモハ 271 | |||
HA651 | 1 | 1 | 1 | 2019/07/11 (近車) |
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HA652 | 2 | 2 | 2 | ||
HA653 | 3 | 3 | 3 | 2019/07/31 (近車) |
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HA654 | 4 | 4 | 4 | ||
HA655 | 5 | 5 | 5 | 2019/09/03 (近車) |
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HA656 | 6 | 6 | 6 |
運用
[編集]全車吹田総合車両所日根野支所に配置されており[18]、281系6両編成と併結の上で関空特急「はるか」として東海道本線(琵琶湖線・JR京都線)・大阪環状線・阪和線・関西空港線などで運用されている[14]。2031年(令和13年)開業予定のなにわ筋線を走ることを見据えての設計がされており、将来的な281系の置き換えも可能な設計となっている[7]。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による利用者の減少を受け、2020年(令和2年)4月1日から当分の間、「はるか」を6両編成で運行することになり[19]、元々3両編成単体での運用がなかった本形式は運用から外れた。その後、翌2021年(令和3年)3月13日のダイヤ改正より一部の列車で9両編成の運転が再開され、本形式も運用に復帰した。その後、2023年(令和5年)になりインバウンド回復や夏休み期間の旅客増加を受け2023年(令和5年)8月より大半の列車が9両で運転されるようになったことから、日中の運用にも復帰している。
2022年(令和4年)8月6日には、団体臨時列車として伯備線へ初入線した[20]。
沿革
[編集]- 2019年(令和元年)
- 2020年(令和2年)
- 3月14日:運用開始[2]。
- 4月1日:新型コロナウイルス感染症による乗客減のため、「はるか」が6両編成で運転されることになったため運用を外れる[19]。
- 2021年(令和3年)
- 2022年(令和4年)
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 2020年3月14日にダイヤ改正を実施します (PDF) - 西日本旅客鉄道、2019年12月13日
- ^ a b c d 271系が営業運転を開始 -『鉄道ファン(鉄道ニュース)』交友社、2020年3月16日
- ^ a b 特急「はるか」へ新型車両を投入します! ~両数が増えて便利に快適にご利用いただけます~ - 西日本旅客鉄道、2019年6月21日
- ^ a b c d 関空特急「はるか」の新型271系が登場! 現行281系と連結、全席にコンセント設置 -『乗りものニュース』メディア・ヴァーグ、2019年7月10日
- ^ a b c d e 特急「はるか」新型車両『271系』の報道公開に行ってきました -『鉄道チャンネル(鉄道ニュース)』 エキスプレス、2019年7月10日
- ^ a b c d e 関空特急に新車、JR西が見据える「はるか」先 インバウンド急増に対応、先行きに慎重さも -『東洋経済オンライン』東洋経済新報社、2019年7月12日
- ^ 地域とみんなをつないで結ぶ。「ハローキティ新幹線 展」関連イベント 271系「ハローキティ はるか」も先行展示 - 西日本旅客鉄道、2020年2月20日
- ^ JR西日本 特急「はるか」新型車両投入へ 2020年春ごろを予定 -『Yahoo!ニュース(the page)』LINEヤフー、2019年6月21日(2021年4月14日時点でのアーカイブ)
- ^ JR西日本、関空アクセス特急「はるか」に新車両271系導入。既存車両へ3両増結。全座席に電源装備 -『トラベルwatch』インプレス、2019年6月21日
- ^ a b c d e 鉄道ファンvol.703, p. 46.
- ^ 「省エネルギー化に貢献するフルSiC適用高効率8極PMSM駆動システムの開発」『日立評論』第102巻第4号、日立製作所、2020年。
- ^ 特急「はるか」に新型車両を投入 営業開始時期は2020年春ごろ -『鉄道チャンネル(鉄道ニュース)』 エキスプレス、2019年6月21日
- ^ a b JR西日本、特急「はるか」の新型車両「271系」を公開。全席にコンセント、Wi-Fiサービス提供 -『トラベルwatch』インプレス、2019年7月10日
- ^ a b c d e f g h 鉄道ファンvol.703, p. 43.
- ^ a b 鉄道ファンvol.703, p. 45.
- ^ JR西日本, 271系を報道陣に公開 JR西日本, 271系を報道陣に公開 -『鉄道ファン(鉄道ニュース)』交友社、2019年7月10日
- ^ a b c JR電車編成表2024夏, p. 151.
- ^ a b 一部臨時列車の運休について (PDF) - 西日本旅客鉄道、2020年3月24日
- ^ 271系が伯備線に初入線 -『鉄道ファン(鉄道ニュース)』交友社、2022年8月8日
- ^ 271系が試運転を行ない吹田へ -『鉄道ファン(鉄道ニュース)』交友社、2019年7月11日
- ^ 271系HA653編成・HA654編成が登場 -『鉄道ファン(鉄道ニュース)』交友社、2019年8月2日
- ^ 271系HA655編成・HA656編成が登場 -『鉄道ファン(鉄道ニュース)』交友社、2019年9月4日
- ^ 2021年春ダイヤ改正について (PDF) - 西日本旅客鉄道、2020年12月18日
- ^ 【JR西日本×日本旅行 共同企画】鉄道の魅力が満載! 「271系新型ハローキティ はるかで行く 車両基地入線 日帰りの旅」発売について (PDF) - 西日本旅客鉄道・日本旅行、2021年10月26日
- ^ 【JR 西日本×日本旅行 共同企画 ご好評につき継続実施決定!】鉄道の魅力が満載!「271系新型 ハローキティ はるかで行く 車両基地入線 日帰りの旅」発売について (PDF) - 西日本旅客鉄道・日本旅行、2021年12月8日
- ^ JR西日本×日本旅行共同企画 271系新型ハローキティはるかで行く 車両基地入線日帰りの旅 - 日本旅行
- ^ ハローキティと一緒に「ハローキティ はるか号」で行く 倉敷・尾道・福山 - 日本旅行
参考文献
[編集]- 田邊尚記・若杉景祐(西日本旅客鉄道 鉄道本部 車両部 車両設計室)・津田康宏(西日本旅客鉄道 近畿統括本部 吹田総合車両所日根野支所)「271系特急形直流電車」『鉄道ファン』第703号、交友社、2019年11月。
- ジェー・アール・アール 編『JR電車編成表 2024夏』交通新聞社、2024年5月24日。ISBN 978-4-330-02824-8 。