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国鉄チキ5500形貨車 (2代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
国鉄チキ5500形貨車 (2代)
チキ5500形、チキ5802 2007年10月7日、遠賀川駅
チキ5500形、チキ5802
2007年10月7日、遠賀川駅
基本情報
車種 長物車
運用者 日本国有鉄道
北海道旅客鉄道
東日本旅客鉄道
東海旅客鉄道
西日本旅客鉄道
九州旅客鉄道
日本貨物鉄道
種車 コキ5500形
改造所 国鉄工場
改造年 1974年(昭和49年) - 1981年(昭和56年)
改造数 138両
主要諸元
車体色 赤3号
軌間 1,067 mm
全長 18,150 mm
全幅 2,630 mm
全高 1,379 mm
荷重 37 t
自重 16.0 t
換算両数 積車 4.0
換算両数 空車 1.6
台車 TR63F
車輪径 860 mm
最高速度 85 km/h
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チキ5500による50m定尺レール輸送列車

チキ5500形は、日本国有鉄道(国鉄)が1974年(昭和49年)度から1981年(昭和56年)度にかけてコキ5500形コンテナ車の改造により製作した、積載荷重37tロングレール輸送専用貨車長物車)である。

概要

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元々は東北上越新幹線建設に伴う50mレール輸送用に長物車が必要になったことから製作された車両である。当時の国鉄の財政事情から、高額な完全新製による増備が見送られており、予算抑制を目的として安価な余剰車両の改造による製作に切り替えられていた。

当時はコキ5500形が余剰となっていた。1971年(昭和46年)にコキ50000形とともに2種5tコンテナが登場すると1種5t (10ft) コンテナ5個積で製作されたコキ5500形は2種5t (12ft) コンテナ積載に対応する改造が行われたが、車体長の関係で4個しか積載することができず積載効率が劣り、速度面でも最高速度は85km/hまでと劣っていたため、余剰化していた車両を有効活用してレール輸送用の長物車を転用製作することになった。こうして登場したのが本形式であり、1974年度から1981年度にかけて138両が製作(転用改造)された。その用途から愛好家の間では「ロンチキ」という愛称で親しまれている[1]

50mレールの場合、チキ1500形チキ3000形などの汎用長物車では4両分必要となるのに対し、本形式では3両で輸送可能となった。

構造

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改造に際しては、コキ5500形のうち、TR63F台車を装備した車両を種車とした。コンテナ緊締装置、手ブレーキ、手すりを撤去し、床板、レール用緊締装置(受台)を新設している。これに伴い、ブレーキ装置は両側側ブレーキに変更された。

塗色はコキ5500形やコキ50000形と同様の赤3号であるが、旅客会社所属の一部は塗装がとなっている。

レールは28本積載可能である。曲線での通過を考慮し、左右に遊間があり、緊締装置まで自由に動ける構造となっている。装備の違いにより、多数の番台が存在する(後述)。

50mレール輸送用と200mレール輸送用が存在し、前者は3両編成で、後者は10数両編成で使用される。

50mレール輸送用は、中間車でレール用緊締装置を設けてレールを固定し、両端の車両は受台で垂直荷重を受ける構造となっている。

200mレール輸送用は、編成の中央に中央緊締車があり、両端にはレールを取り卸すための端末滑り台を設けたエプロン車が連結され、その他の中間車はガイドと中間滑り台を設けた積込車となっている。

形態別詳説

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5500番台
編成の両端に連結される車両(両端車)。200mレール輸送用。レールを取り卸すための端末滑り台を設けたエプロン車となっている。
5600番台
編成の中間に連結される車両(中間車)。200mレール輸送用。中間車または中央締結車として使用可能。
5700番台

編成の両端に連結される車両(両端車)。200m、50mレール兼用車。レールを取り卸すための端末滑り台を設けたエプロン車となっている。

5800番台

編成の中間に連結される車両(中間車)。200m、50mレール兼用車。中間車または中央締結車として使用可能。

5900番台

受金の数を増やして何れの位置でも使用可能にしたものである。

15900番台
東日本旅客鉄道(JR東日本)に所属する車両のうち、5900番台から改造・改番した車両。2021年度廃区分番台。

現況

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1987年(昭和62年)4月の国鉄分割民営化に際しては四国旅客鉄道(JR四国)を除くJR各社へ継承された。継承両数は北海道旅客鉄道(JR北海道)に16両、東日本旅客鉄道(JR東日本)に44両、東海旅客鉄道(JR東海)に13両、西日本旅客鉄道(JR西日本)に36両、九州旅客鉄道(JR九州)に14両、日本貨物鉄道(JR貨物)に14両の合計138両[2]である。

JR旅客会社においては2022年(令和4年)4月1日現在、JR西日本に35両[3]、JR九州に10両[4]在籍している。JR貨物には2010年(平成22年)4月1日現在、15両が在籍している[5]

旅客会社保有車のロングレール輸送では、200m前後に溶接されたレールを運べるよう10数両の固定編成を組み、レールセンターとレール交換作業現場の間の輸送に使われる[6]。JR貨物所属のものは、製鉄所から保線基地までの50mの定尺レール輸送に3車1連で運用される。

本形式は製造初年から50年程度経過して老朽化が進んでいる。

JR東日本所属車
越中島貨物駅(東京レールセンター内)と岩切駅(隣接する仙台レールセンター)を拠点として東日本エリアの各地域または中小私鉄向けのレール輸送(伊豆箱根鉄道秩父鉄道等)にて運用されていた。越中島常駐車は幕張車両センターに、岩切常駐車は仙台車両センターに所属し交互に行き交うこともあった。JR東海キヤ97系気動車をベースに耐寒耐雪対応等のカスタマイズを行った、レール輸送用の新型車両キヤE195系気動車を導入して置き換えることとなり[7]、2022年2月3日までに廃車された[8]
JR西日本所属車
吹田総合車両所京都支所の向日町レールセンターを拠点に、アーバンネットワークをはじめとするJR西日本管内におけるレール輸送に携わっている[6]。なお、JR東日本所属車は編成両端にエプロン車が連結されているのに対し、JR西日本所属車は片方(東京寄りと下関寄りのいずれか)にしか連結されていない。2021年6月30日には台車に亀裂が見つかるなど老朽化に起因するトラブルが発生している[9]
JR九州所属車
JR九州内のレール輸送に使用される。

出典

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  1. ^ ロンチキが郡山へ - railf.jp、2021年12月7日
  2. ^ 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』No.496 増刊 鉄道車両年鑑1988年版 p.69
  3. ^ 「JR車両のデータバンク2022」『鉄道ファン』第62巻7号(通巻735号) 付録、交友社、2022年7月、27頁。 
  4. ^ 「JR車両のデータバンク2022」『鉄道ファン』第62巻7号(通巻735号) 付録、交友社、2022年7月、31頁。 
  5. ^ 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』No.840 増刊 鉄道車両年鑑2010年版 p.107
  6. ^ a b 「関西チキ工臨のすべて」『鉄道クラブ』第6巻、コスミック出版、2019年6月、85頁。 
  7. ^ 東北地区へのレール輸送用新型気動車の投入について』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2017年9月5日http://www.jreast.co.jp/press/2017/20170902.pdf2021年1月5日閲覧 
  8. ^ 「JR車両のデータバンク2022」『鉄道ファン』第62巻7号(通巻735号) 付録、交友社、2022年7月、35頁。 
  9. ^ レール運搬車両の台車に亀裂が見つかった事象について - 西日本旅客鉄道ニュースリリース 2021年7月1日

参考文献

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  • イカロス出版『季刊ジェイ・トレイン』2010年 Vol.40 吉岡心平「コンテナ貨車物語(上)」
  • 誠文堂新光社 岡田直昭・谷雅夫『新版 国鉄客車・貨車ガイドブック』1978年
  • 秀和システム 高橋政士・松本正司『貨物列車 機関車と貨車の分類と歴史がわかる本』
  • ネコ・パブリッシングRail Magazine』「JR事業用車のすべて」2001年12月号 Vol.219
  • 貨車技術発達史編纂委員会「日本の貨車-技術発達史-」2009年、社団法人日本鉄道車輌工業会

関連項目

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  1. ^ 地球環境保全への貢献”. 東海旅客鉄道. 2023年11月29日閲覧。