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2012年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは10月5日に開幕した。アメリカンリーグの第43回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 43rd American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、13日から18日にかけて計4試合が開催された。その結果、デトロイト・タイガース(中地区)がニューヨーク・ヤンキース(東地区)を4勝0敗で下し、6年ぶり11回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのは、前年の地区シリーズに次いで2年連続3度目。今シリーズはタイガースが初戦からの4連勝、いわゆる "スウィープ" でヤンキースを退けた。しかも、初戦の6回表に先制してからは、相手に得点を先行される場面が一度もなかった。リーグ優勝決定戦で相手に一度もリードさせないままのスウィープ達成は、シリーズが7戦4勝制になった1985年以降では初めてである[3]。また、ポストシーズンの7戦4勝制シリーズにおいてヤンキースが一度もリードを奪えぬままスウィープを喫するのは、1963年のワールドシリーズでロサンゼルス・ドジャースに敗れて以来49年ぶりのことだった[4]。シリーズMVPには、第1戦の延長12回表に勝ち越し・決勝の適時二塁打を放つなど、4試合で打率.353・2本塁打・6打点・OPS 1.186という成績を残したタイガースのデルモン・ヤングが選出された。しかしタイガースは、ワールドシリーズではナショナルリーグ王者サンフランシスコ・ジャイアンツに0勝4敗で敗れ、28年ぶり5度目の優勝を逃した。
タイガースの内野手
ミゲル・カブレラ(左。写真は2014年5月12日撮影)と、ヤンキースの先発投手・
黒田博樹(写真は2013年5月22日撮影)
10月11日にまずタイガース(中地区優勝)が、そして12日にはヤンキース(東地区優勝)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
タイガースは2011年、95勝67敗で地区を制し5年ぶりにポストシーズンへ進んだが、リーグ優勝決定戦で敗退した。年明けの1月に指名打者ビクター・マルティネスが左膝前十字靭帯断裂の重傷を負ったため打線の補強が急務となり、FAの一塁手プリンス・フィルダーを獲得、守備力の低下には目をつぶってミゲル・カブレラを一塁から三塁へコンバートした[5]。こうして迎えた2012年、チームは開幕4連勝スタートを切ったが、それ以降は調子が上がらず7月上旬まで負け越しの状態が続いた。前半戦終了時は44勝42敗で、地区首位シカゴ・ホワイトソックスとは3.5ゲーム差の地区3位だった。巻き返しを図り7月23日にはトレードで先発右腕アニバル・サンチェスと二塁手オマー・インファンテを獲得したが、後半戦もなかなか首位に立てず、一時は監督ジム・リーランドの解任も取り沙汰された[6]。ただ9月以降ホワイトソックスが13勝18敗と失速したこともあり[7]、同月25日に首位へ浮上すると、その6日後には地区優勝を決めた[8]。平均得点4.48はリーグ6位、防御率3.75はリーグ3位。打線ではカブレラが三冠王となり、フィルダーとふたりで74本塁打・247打点を挙げる強力な中軸を形成した[9]。また先発投手陣も防御率リーグ2位と好投したが、その一方で救援投手陣は防御率リーグ10位に低迷し、打線にも極端に攻撃力の低いポジションがあるなど、チームとしてのバランスに欠ける面はあった[6]。地区シリーズではオークランド・アスレチックスを3勝2敗で下した[10]。
ヤンキースは2011年、97勝65敗で地区を制するも地区シリーズでタイガースに敗れた。オフには先発投手陣強化のため、不振のA.J.バーネットを放出する一方で、新たにマイケル・ピネダや黒田博樹を加えた[11]。2012年は6月中旬に地区首位へ浮上すると、その後は下位球団との差を徐々に広げ、前半戦終了時には52勝33敗で2位ボルチモア・オリオールズに7.0ゲーム差をつけた。ピネダや抑え投手マリアノ・リベラ、外野手ブレット・ガードナーらが相次いで故障で長期欠場に追い込まれたが、リベラの穴をラファエル・ソリアーノが埋めるなど、厚い選手層を武器に勝利を重ねた[12]。7月18日にはゲーム差がこの年最大の10.0まで開く。しかしそこから勢いが衰え、翌日から9月11日までの50試合を22勝28敗と負け越し、残り21試合でオリオールズに追いつかれた[13]。独走状態から一転して緊迫の優勝争いとなったが、ここで怪我から復帰した先発投手CC・サバシアや途中加入の外野手イチローらがチームの原動力となった[14]。その結果、負ければ2位転落という試合に勝利し続けて首位を維持したまま、10月3日のレギュラーシーズン最終日に地区優勝を手にした[15]。平均得点4.96はリーグ2位、防御率3.85はリーグ5位。前述のようにリベラやガードナー、サバシアら主力選手が故障離脱する困難な状況下、野手では二遊間コンビのロビンソン・カノとデレク・ジーター、投手では黒田やソリアーノがチームを支えた[14]。地区シリーズではオリオールズを3勝2敗で下した[16]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、ヤンキースがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は10試合対戦し、ヤンキースが6勝4敗と勝ち越していた[17]。
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
- ※ 第1戦終了後にジーターが故障のためロースターを外れ、第2戦からはヌニェスが代わりに登録された。
地区シリーズのロースターからは、タイガースは変更はない[18]。これに対しヤンキースは、内野手のエドゥアルド・ヌニェスに代えて救援投手のコディ・エプリーを登録した。ヌニェスは地区シリーズでは3試合に出場し、5打数1安打だった。タイガースは投手陣に右投手を多く擁するため、左投手との対戦を得意とするヌニェスにとっては強みが発揮できない可能性があった[19]。投手をひとり増やしたのは、黒田博樹が地区シリーズ第3戦から中3日で今シリーズ第2戦に先発登板することとなるなど、日程の都合により投手陣への負担が大きくなり、対策として層を厚くする必要があったためである[20]。
2012年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月13日に開幕し、途中に移動日と雨天順延を挟んで6日間で4試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
|
10月13日(土) |
第1戦 |
デトロイト・タイガース |
6-4 |
ニューヨーク・ヤンキース |
ヤンキー・スタジアム |
|
10月14日(日) |
第2戦 |
デトロイト・タイガース |
3-0 |
ニューヨーク・ヤンキース
|
10月15日(月) |
|
移動日 |
|
10月16日(火) |
第3戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
1-2 |
デトロイト・タイガース |
コメリカ・パーク
|
10月17日(水) |
第4戦 |
雨天順延
|
10月18日(木) |
第4戦 |
ニューヨーク・ヤンキース |
1-8 |
デトロイト・タイガース
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優勝:デトロイト・タイガース(4勝0敗 / 6年ぶり11度目)
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『ハードボール・タイムズ』のクリス・ジャフは2012年10月、歴代のポストシーズン各シリーズのうち、優勝球団が初戦から全勝する "スウィープ" のシリーズを対象に「敗退球団がリードしたイニング数が10以上なら0ポイント、5以上10未満なら2ポイント、……全くなければ25ポイント」「1試合平均の得点差が2未満なら0ポイント、2以上2.5未満なら1ポイント、……3以上3.5未満なら5ポイント、以降は0.5点ごとに2ポイントずつ加算」などの条件を設定し、つまらなさを算出した。その結果、今シリーズは54ポイントを獲得し、同年の両リーグ優勝決定戦まで計67度のスウィープ中4位タイとなった[注 1][3]。
- ^ "MLB Announces League Championship Series Umpires / Kellogg will serve as ALCS Crew Chief; Darling will lead NLCS Crew," MLB.com, October 13, 2012. 2021年7月23日閲覧。
- ^ a b Chris Jaffe, "The 10 worst postseason sweeps ever," The Hardball Times, October 22, 2012. 2021年7月23日閲覧。
- ^ The Associated Press, "Tigers Rout Yankees 8-1 for ALCS Sweep," WNYC, October 19, 2012. 2021年7月23日閲覧。
- ^ Peter Kerasotis, "For Better or Worse, Cabrera Takes Over at Third," The New York Times, March 12, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ a b SLUGGER 「30球団通信簿 デトロイト・タイガース 2年連続地区優勝を果たすも手放しでは喜べないシーズン」 『月刊スラッガー』2012年12月号、日本スポーツ企画出版社、2012年、雑誌15509-12、59頁。
- ^ Matt Spiegel, "Spiegel: August Baseball Of Consequence Means A Playoff Game Every Night," CBS Chicago, August 13, 2015. 2023年7月22日閲覧。
- ^ Associated Press, "Tigers wrap up AL Central as Miguel Cabrera bolsters Triple Crown bid," ESPN.com, October 1, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ Steve Keating, "Cabrera-led Tigers look to reclaim baseball throne," Reuters, October 5, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ Jim Caple, ESPN Senior Writer, "Justin Verlander complete in victory," ESPN.com, October 12, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ Craig Calcaterra, "Springtime Storylines: Are the Yankees the best team in baseball?," NBC Sports, April 2, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ Marc Carig / The Star-Ledger, "Despite imperfections and injuries, Yankees keep finding ways to win," nj.com, July 13, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ Wallace Matthews, ESPN Staff Writer, "We wouldn't bet on these Bombers," ESPN.com, September 11, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ a b 杉浦大介 「30球団通信簿 ニューヨーク・ヤンキース 分厚い選手層で故障者の穴を埋めリーグ最高勝率で地区V」 『月刊スラッガー』2012年12月号、日本スポーツ企画出版社、2012年、雑誌15509-12、54頁。
- ^ David Waldstein, "Yankees Finish With a Flourish, Capturing East," The New York Times, October 3, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ Ian O'Connor, ESPN Senior Writer, "CC's CG delivers death blow to O's," ESPN.com, October 12, 2012. 2023年7月22日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年7月23日閲覧。
- ^ Brendan Savage, "Detroit Tigers roster for ALCS vs. New York Yankees the same as it was for ALDS," mlive.com, October 13, 2012. 2022年6月1日閲覧。
- ^ Andy McCullough / The Star-Ledger, "Yankees vs. Tigers: Cody Eppley added to ALCS roster, Eduardo Nunez out," nj.com, October 13, 2012. 2022年6月1日閲覧。
- ^ Erik Boland, "Joe Girardi: Nick Swisher's better than he's looked," Newsday, October 13, 2012. 2022年6月1日閲覧。
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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ワールドシリーズ優勝(04回) | |
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ワールドシリーズ敗退(07回) | |
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リーグ優勝(11回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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球団 | |
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歴代本拠地 | |
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文化 | |
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永久欠番 | |
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ワールドシリーズ優勝(27回) | |
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ワールドシリーズ敗退(14回) | |
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リーグ優勝(41回) | |
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できごと | |
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傘下マイナーチーム | |
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