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風立ちぬ (松田聖子のアルバム)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『風立ちぬ』
松田聖子スタジオ・アルバム
リリース
録音 1981年8月 - 9月
CBS・ソニー信濃町スタジオ
ジャンル ポップ・ミュージック
時間
レーベル CBS・ソニー
プロデュース 若松宗雄(CBS・ソニー)
月野清人(サンミュージック
チャート最高順位
  • 週間1位(オリコン[1]
  • 1981年度年間38位(オリコン)
  • 週間52位(Blu-spec CD盤・オリコン)
松田聖子 アルバム 年表
Silhouette 〜シルエット〜
(1981年)
風立ちぬ
(1981年)
聖子・fragrance
(1981年)
『風立ちぬ』収録のシングル
  1. 白いパラソル
    リリース: 1981年7月21日
  2. 風立ちぬ
    リリース: 1981年10月7日
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風立ちぬ』(かぜたちぬ)は、1981年10月21日CBS・ソニー(現:ソニー・ミュージックレーベルズ)からリリースされた松田聖子の4作目のオリジナル・アルバム

背景

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帯コピー:こころの香り 聖子、いま19のメッセージ…(CD選書盤では″いま″の部分が省略されている)

″Side A″の作曲・編曲を大瀧詠一、″Side B″の「白いパラソル」以外の編曲を鈴木茂、全曲の作詞を松本隆が行っており、細野晴臣を除く元はっぴいえんどのメンバーが強く関与している[2]。特に、松本は本作以降長期に渡りほとんどの楽曲の作詞を担当する事になり、松田の音楽史の中でひとつの転換点と考えられる。鈴木は「白いパラソル」以外の全曲でエレクトリック・ギターを担当している。

今作を大瀧・鈴木のプロデュース作品という風に当事者(大瀧自身のライナーノーツなど)および音楽評論家や関係者など他者から語られる事もあるが、実際は両者ともサウンドに関する責任者(実質的なサウンド・プロデューサー)であり(大瀧は自身の楽曲におけるスーパーバイザーとしてクレジット)、アルバム全体のトータルプロデュースおよびディレクションはCBS・ソニー(若松宗雄)とサンミュージック(月野清人)のプロデューサーディレクターの担当である。

″Side A″は大瀧のサウンドプロデュースによる独特の作風が色濃く出ており、これまでの松田の作品と一線を画している。大瀧は、今作の7か月前に発表した自身のアルバム『A LONG VACATION』の収録曲と対になるようにそれぞれの曲を制作したと『大瀧詠一作品集Vol.1』のライナーノーツで解説している(対応する曲は収録順に「君は天然色」「雨のウェンズデイ」「恋するカレン」「FUN×4」「カナリア諸島にて」)。また、これまで松本と組んだ作品は、「はっぴいえんど」などでの実験的な作品ばかりだったので、歌謡界で商業的に通用するかどうかの試金石だったが、今作がヒットして自信になったとも述べている。

若松によると、多くの作曲家は曲を作る場合、まずデモテープを作成してオケを編曲家に作ってもらい、それを歌い手に渡して曲を覚えてもらうというやり方を採るが、大瀧はデモテープも何もない状態でスタジオに来てピアノの前に座り、松田がその脇に立って「じゃあやってみよう」という感じで曲を作っていく、毎回ぶっつけ本番に近い状況だったという[3]。そのためメロディーが途中で変わることもしょっちゅうで、松田はかなり苦労していたといい、若松に「大瀧さんと話して、もっと分かりやすいようにしてください」と頼むこともあったと回顧している[3]

今作レコーディング時の松田は、過酷なスケジュールによる喉の酷使で声の状態が非常に悪く、また、大瀧の指導が厳しいものであったため、スタジオに向かうのが嫌でバスの中で泣いた事もあったという。その後、無事にレコーディングは完了し、大瀧も作品の出来栄えを見て松田を称賛した。

LPリリースから1か月後の11月21日には、マスター・サウンド(当時のソニーが持てる技術を駆使した最高音質)仕様盤と[4]メタルポジション(IEC TYPE IV)用コンパクトカセットテープを用いたメタル・マスター・サウンド仕様の音楽テープがそれぞれ発売された。

2014年9月25日、待望のSACD化(ハイブリッド盤)。企画・販売は株式会社ステレオサウンド。「松田聖子SACD化プロジェクト」第1弾としてアルバム『SQUALL』と同時発売された[5]。オリジナル2トラックミックスダウンマスターに遡ってDSDマスタリングされている。この企画のスーパーバイザーである嶋護(しま もり)は解説書の中で、「『一千一秒物語』から『いちご畑でつかまえて』を経て『風立ちぬ』という流れは、詞と曲、プロダクション、歌唱、演奏、録音とどこをとっても、日本のポップスが到達した感動的な頂点の一つに数えられるだろう」と異例とも言える熱烈な賛辞を送っている。

収録曲

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LP / CT

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Side A
全作詞: 松本隆、全作曲: 大瀧詠一、全編曲: 多羅尾伴内
#タイトル作詞作曲・編曲ストリングス編曲時間
1.「冬の妖精」松本隆大瀧詠一 
2.「ガラスの入江」松本隆大瀧詠一 
3.「一千一秒物語」松本隆大瀧詠一松任谷正隆
4.「いちご畑でつかまえて」松本隆大瀧詠一 
5.風立ちぬ松本隆大瀧詠一井上鑑
合計時間:
Side B
全作詞: 松本隆。
#タイトル作詞作曲編曲時間
1.「流星ナイト」松本隆財津和夫鈴木茂
2.「黄昏はオレンジ・ライム」松本隆鈴木茂鈴木茂
3.白いパラソル松本隆財津和夫大村雅朗
4.「雨のリゾート」松本隆杉真理鈴木茂
5.「December Morning」松本隆財津和夫鈴木茂
合計時間:

CD

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トラックリスト
全作詞: 松本隆。
#タイトル作詞作曲編曲時間
1.「冬の妖精」松本隆大瀧詠一多羅尾伴内
2.「ガラスの入江」松本隆大瀧詠一多羅尾伴内
3.「一千一秒物語」松本隆大瀧詠一多羅尾伴内 / ストリングス編曲: 松任谷正隆
4.「いちご畑でつかまえて」松本隆大瀧詠一多羅尾伴内
5.「風立ちぬ」松本隆大瀧詠一多羅尾伴内 / ストリングス編曲: 井上鑑
6.「流星ナイト」松本隆財津和夫鈴木茂
7.「黄昏はオレンジ・ライム」松本隆鈴木茂鈴木茂
8.「白いパラソル」松本隆財津和夫大村雅朗
9.「雨のリゾート」松本隆杉真理鈴木茂
10.「December Morning」松本隆財津和夫鈴木茂
合計時間:

楽曲解説

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Side A

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  1. 冬の妖精
  2. ガラスの入江
  3. 一千一秒物語
    Another Side of Seiko 27』の投票では第27位にランクイン。
    Cメロ8小説の歌詞「一千一秒」の部分にメトロノームの音が入っているが、レコーディングの時にはタイミングを合わせるに苦労したと言う話を若松宗雄がYouTubeで語っている。
  4. いちご畑でつかまえて
    『Another Side of Seiko 27』では第19位にランクイン。
    捉えどころのないメロディラインは、松田の曲という事を忘れて大瀧のキーに合わせて作ったメロディの「ハーモニー」を主旋律にしたからである。
    翌年に発売されたベスト・アルバム『Seiko・index』では、イントロのドラム部分がカットされているバージョンが収録されている。
    また、『大瀧詠一 Song Book I 大瀧詠一 作品集 Vol.1 (1980-1998)』(2010年版)には、本来提供する予定だったカウントとエンディングのリプライズをカットしたバージョンで収録されている(しかし、カウントなどを除くと対となる曲「FUN×4」と合わなくなり、矛盾が生じる)。
    2020年のアルバム『SEIKO MATSUDA 2020』のCD版には、この曲と「FUN×4」を大瀧自身の手によって掛け合わせた楽曲「いちご畑でFUN×4」が収録されている。2023年3月21日発売の『大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK/NIAGARA ONDO BOOK』のDISC 1『NOVELTY SONG BOOK』に大滝のセルフカバーが収録された。
  5. 風立ちぬ
    アルバムタイトル曲。後に大滝自身もキーを″C″に変えてライブで「二度と歌う事は無いだろう」という文言付きで一度だけ披露している(同ヴァージョンは2016年発売のアルバム『DEBUT AGAIN』に収録)。

Side B

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  1. 流星ナイト
  2. 黄昏はオレンジ・ライム
  3. 白いパラソル
    6枚目のシングルA面曲。
  4. 雨のリゾート
  5. December Morning

参加ミュージシャン

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レコーディング・メンバー
Producer: M.Wakamatsu(CBS/SONY), K.Tsukino(SUN Music)
Engineer: T.Yoshida / T.Suzuki / Assistant Engineer: A.Saida
Photographer: T.Mutoh / Designer: M.Yamada / Stylist: Y.Miyake
Recording Date: August, September 1981 / Recording Place: CBS/SONY Shinanomachi Studio

関連作品

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カバー

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一千一秒物語

脚注

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出典

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参考資料

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  • オリコン『ALBUM CHART-BOOK COMPLETE EDITION 1970-2005』オリコン・マーケティング・プロモーション、2006年4月。ISBN 978-4-87131-077-2