長生
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長生(ちょうせい)は囲碁用語の一つで、死活がらみで同型反復になる特殊な形。中国にある長生殿での対局中にこの形が出現したことからこの名がついた[1]。
現代の日本ルールでは、実戦で黒白双方とも譲らなかった場合ルールにより無勝負となる。一方で中国ルールでは、超コウルール(同形反復の禁止)により生き死にの結論が出される。
下の図のような形が長生の代表例である。
長生の経過
[編集]上の図で、黒にaと打たれると五目ナカデで白は全滅する。そこで、同じ点に下図白1と差し込む妙手がある。放置すると白bに抜かれて生きなので、黒は2に打って2子を抜くよりない。
白は3に取り返すことになるが、黒は目を奪うため▲の点にウチカく。すると一番上の図に戻ることになる。
このまま打ち続ければ、永遠に同じ形が繰り返されることになる。このまま両者が譲らなかった場合には、無勝負となることに決められている。
コウつき長生
[編集]下図のような形がコウつき長生の一例である。白からaに打たれると、黒全体の死活がからむ本コウとなる。
黒1とコウを取った時、白2がコウダテとして使える。黒3と取り返した後、
白4とコウを取り返した時、今度は黒5と差し込む手がコウダテになる。白6と取り返すと、最初の形に戻る。これも双方が譲らなければ永遠に繰り返されることとなり、無勝負となる。
プロの対局での出現例
[編集]実戦で生じた事例は少ない。
- 1993年9月23日、本因坊リーグの林海峰名誉天元 - 小松英樹八段戦において終局間際に上記コウつき長生が発生し、無勝負となった。この時は、打ち直しをせずリーグは半星扱いとなった。
- 2009年9月14日、富士通杯予選Bにおいて、王銘琬九段 - 内田修平三段の対局でコウつき長生が発生。同日打ち直しで王が勝利した。
- 2013年6月29日、KB国民銀行囲碁リーグにおいて、安成浚四段 - 崔哲瀚九段の対局で長生が発生。規定により、再対局はなく89手で引き分けとなった。韓国初の事例、かつ日本以外のプロ組織による公式戦では初の長生となった。また、プロの対局でコウが関係しない長生が発生した初のケースでもあった。
モニュメント
[編集]日本棋院の最寄り駅である市ケ谷駅改札付近の床面には、2010年の改装時に防滑素材を張り替える際、囲碁発陽論にある詰碁の問題(黒先長生)を題材としたモザイクアートが設置されている[2][3]。長生は永遠に繰り返すことから、長寿につながる縁起のよいものとして選ばれた[3][2]。
脚注
[編集]- ^ 関口晴利『囲碁ルールの研究』文芸社、2007年、79頁。ISBN 9784286031422。
- ^ a b “JR市ケ谷駅構内に詰め碁モニュメント-床に難問「黒先長生」”. 市ケ谷経済新聞. 2024年6月28日閲覧。
- ^ a b “JR市ヶ谷駅構内での囲碁モニュメント除幕式|囲碁のニュース|公益財団法人日本棋院”. archive.nihonkiin.or.jp. 2024年6月28日閲覧。