統合作戦司令官
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日本 統合作戦司令官 Chief of Staff, Joint Staff | |
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組織 | 行政府 防衛省 |
種類 | 自衛官 |
所属機関 | 統合作戦司令部 |
任命 | 防衛大臣 |
ウェブサイト | 防衛省・自衛隊 |
統合作戦司令官(とうごうさくせんしれいかん)は、統合作戦司令部[1]の長[2]。防衛大臣の指揮監督を受け、統合作戦司令部の隊務を統括し、自衛隊の部隊運用を統合指揮する。
解説
[編集]2011年の東日本大震災以降、統合幕僚監部を司る統合幕僚長は、アメリカにおける文民の最高司令官である大統領と国防長官の最高軍事補佐機関であるスタッフとしての統合参謀本部議長の職務と、最高司令官の命令を武官として最高の立場で指揮するラインとしての統合軍司令官の機能を併任させているため、大規模災害や有事の際に、内閣総理大臣や防衛大臣への補佐と各部隊への指揮という2つの任務に忙殺され対応できない可能性が指摘されていた。そこで統合幕僚監部から運用部を切り離すなどして、新たに統合幕僚監部とは別の常設の「統合司令部」を創設し「統合司令官」ポストを新設して部隊運用に専念させ、統合幕僚長を大臣の補佐に専念させる構想がもちあがった。
2022年12月16日に閣議決定された国家防衛戦略(旧・防衛計画の大綱)及び防衛力整備計画(旧・中期防衛力整備計画)において、常設の統合司令部が設立される方針が示された。これに基づき、2024年2月9日に統合作戦司令部の設置が盛り込まれた防衛省設置法等の一部を改正する法律案が国会に提出され、同年5月10日に可決・成立し、5月17日に公布された。2024年度末に市ヶ谷に設置される予定である[3]。
統合作戦司令官は四幕僚長と同格の4つ星の将官となる。四幕僚長が所属する四幕僚監部は防衛省本省の機関[注釈 1]である一方、統合作戦司令部は三自衛隊の共同の部隊として、自衛隊内に設置されるので、統合作戦司令官の自衛隊内では最高位の自衛官となる。
防衛大臣と統合幕僚長と統合作戦司令官の関係
[編集]統合作戦司令官の設置により、従来はいずれも統合幕僚長がになっていた、自衛隊の運用に関する、自衛隊の最高指揮監督権を有する内閣総理大臣と防衛大臣の補佐を統合幕僚長が、作戦上の自衛隊の部隊運用・指揮を統合作戦司令官が分担することになる。これにより、アメリカ軍との関係でいえば、統合幕僚長は制服組トップの統合参謀本部議長が、統合作戦司令官はインド太平洋軍司令官がそれぞれカウンタパートとなって、作戦の調整などを行うことになる。統合幕僚長が最高位の自衛官であるという構図に変化はない。
防衛省設置法等の一部を改正する法律(令和6年法律第24号)による改正後の、「自衛隊法」第21条の2第3項によると、 「前2項(統合作戦司令部とそれ以外の、陸海空自衛隊)の共同の部隊の運用に係る防衛大臣の指揮は、統合幕僚長を通じて行い、これに関する防衛大臣の命令は、統合幕僚長が執行するものとするほか、当該部隊に対する防衛大臣の指揮監督について幕僚長の行う職務に関しては、防衛大臣の定めるところによる。」 と定められている。
また同改正後の同法第21条の3第2項及び第3項によると 「統合作戦司令官は、防衛大臣の指揮監督を受け、統合作戦司令部の隊務を統括する。」 「防衛大臣は、第6章に規定する行動、第100条の5第1項に規定する国賓等の輸送、防衛省設置法第4条第1項第18号に規定する調査及び研究のうち運用に係るものその他の自衛隊の運用に関し、統合運用による円滑な任務遂行を図る必要がある場合には、自衛隊の部隊の全部又は一部を統合作戦司令官に一部指揮させることができる。」 と定められている。
- 防衛大臣からの指揮監督系統
部隊運用 | 防衛大臣 | ||||||||||||||||||||
統合幕僚長 | |||||||||||||||||||||
部隊運用以外 | |||||||||||||||||||||
統合作戦司令官 | 陸海空各幕僚長 | ||||||||||||||||||||
統合任務部隊指揮官 | |||||||||||||||||||||
陸上総隊司令官等 | |||||||||||||||||||||
自衛艦隊司令官等 | |||||||||||||||||||||
航空総隊司令官等 | |||||||||||||||||||||
サイバー防衛隊司令等 | |||||||||||||||||||||
- アメリカ軍とのカウンターパート比較(統合作戦司令部設置後)
自衛隊 | アメリカ軍 | ||||||||||||||||||||||||
防衛大臣 | 国防長官 | ||||||||||||||||||||||||
補佐 | |||||||||||||||||||||||||
統合 幕僚長 | 統合参謀 本部議長 | ||||||||||||||||||||||||
統合作戦 司令官 | インド太平洋軍 司令官 | ||||||||||||||||||||||||
部隊運用 | |||||||||||||||||||||||||
自衛隊部隊 | アメリカ軍部隊 | ||||||||||||||||||||||||
歴代司令官
[編集]ここでは前身の統合幕僚監部運用部長も掲載する。
運用部長
[編集]代 | 階級 | 氏名 | 在職期間 | 出身校・期 | 前職 | 後職 |
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1 | 陸将 | 用田和仁 | 2006年 3月27日 - 2006年 9月18日 | 防大19期 | 統合幕僚会議事務局第3幕僚室長 | 第7師団長 |
2 | 空将 | 下平幸二 | 2006年2007年 7月 2日 | 9月19日 -防大19期 | 航空幕僚監部運用支援・情報部長 兼 統合幕僚監部付 |
統合幕僚副長 |
3 | 陸将 | 林一也 | 2007年2009年 3月23日 ※2008年3月26日 陸将昇任 |
9月 1日 - 防大21期 | 防衛研究所副所長 (陸将補) |
第9師団長 |
4 | 空将 | 齊藤治和 | 2009年2010年 7月25日 | 3月24日 -防大22期 | 航空総隊司令部幕僚長 | 北部航空方面隊司令官 |
5 | 空将 | 廣中雅之 | 2010年2011年 8月 4日 | 7月26日 -防大23期 | 航空幕僚監部人事教育部長 | 西部航空方面隊司令官 |
6 | 海将 | 井上力 | 2011年2012年 7月25日 | 8月 5日 -防大24期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 | 舞鶴地方総監 |
7 | 海将 | 河村正雄 | 2012年2014年 3月27日 | 7月26日 -防大25期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 | 護衛艦隊司令官 |
8 | 空将 | 前原弘昭 | 2014年2015年 3月29日 | 3月28日 -防大27期 | 航空幕僚監部監理監察官 | 航空総隊副司令官 |
9 | 空将 | 武藤茂樹 | 2015年2016年12月21日 | 3月30日 -防大28期 | 航空幕僚監部人事教育部長 | 南西航空混成団司令 |
10 | 空将 | 増子豊 | 2016年12月22日 - 2018年 7月31日 | 防大29期 | 航空支援集団副司令官 | 中部航空方面隊司令官 |
11 | 空将 | 引田淳 | 2018年2019年 3月31日 | 8月 1日 -防大31期 | 西部航空方面隊副司令官 | 中部航空方面隊司令官 |
12 | 海将 | 中畑康樹 | 2019年2020年 8月24日 | 4月 1日 -防大30期 | 海上自衛隊第1術科学校長 | 海上自衛隊補給本部長 |
13 | 海将 | 下淳市 | 2020年2022年 3月29日 | 8月25日 -防大31期 | 開発隊群司令 | 舞鶴地方総監 |
14 | 海将 | 伍賀祥裕 | 2022年2023年 8月28日 | 3月30日 -防大35期 | 統合幕僚監部総務部長 | 潜水艦隊司令官 |
15 | 海将 | 八木浩二 | 2023年 | 8月29日 - 2024年 8月 1日防大35期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 | 海上幕僚副長 |
16 | 海将 | 川村伸一 | 2024年 | 8月 2日中央大・ 海44期幹候 |
自衛艦隊司令部幕僚長 |
関連法規
[編集]自衛隊法(令和7年3月施行予定)[4][1][5][6](なお原文は縦書きで、数字はいずれも漢数字)
- (編成)
- 第21条の2 陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の共同の部隊として統合作戦司令部を置く。
- 2 前項に定めるもののほか、陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の防衛大臣直轄部隊(陸上総隊、方面隊、自衛艦隊、地方隊、教育航空集団、練習艦隊、航空総隊、航空支援集団、航空教育集団及び航空開発実験集団を除く。)は、統合運用による円滑な任務遂行上一体的運営を図る必要がある場合には、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の共同の部隊として置くことができる。
- 3 前2項の共同の部隊の運用に係る防衛大臣の指揮は、統合幕僚長を通じて行い、これに関する防衛大臣の命令は、統合幕僚長が執行するものとするほか、当該部隊に対する防衛大臣の指揮監督について幕僚長の行う職務に関しては、防衛大臣の定めるところによる。
- (統合作戦司令官)
- 第21条の3 統合作戦司令部の長は、統合作戦司令官とする。
- 2 統合作戦司令官は、防衛大臣の指揮監督を受け、統合作戦司令部の隊務を統括する。
- 3 防衛大臣は、第6章に規定する行動、第100条の5第1項に規定する国賓等の輸送、防衛省設置法第4条第1項第18号に規定する調査及び研究のうち運用に係るものその他の自衛隊の運用に関し、統合運用による円滑な任務遂行を図る必要がある場合には、自衛隊の部隊の全部又は一部を統合作戦司令官に一部指揮させることができる。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b “自衛隊「統合作戦司令部」新設へ | お知らせ | ニュース”. 自由民主党 (2024年5月15日). 2024年5月19日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2024年5月10日). “自衛隊を一元的に指揮「統合作戦司令部」設置 改正法が成立 | NHK”. NHKニュース. 2024年5月19日閲覧。
- ^ “自衛隊「統合司令部」の設置法成立 24年度末に発足へ”. 日本経済新聞 (2024年5月10日). 2024年9月19日閲覧。
- ^ “自衛隊法 - e-Gov 法令検索”. デジタル庁. 2024年8月31日閲覧。
- ^ “防衛省設置法等の一部を改正する法律(法律第24号〈令和6年5月17日〉)”. 衆議院第213回国会 制定法律の一覧. 2024年8月31日閲覧。
- ^ “陸海空自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令官が誕生、日本の命運を担う”. JBbress. (2024年5月13日) 2024年5月19日閲覧。