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家弓家正

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

かゆみ いえまさ
家弓 家正
1964年
1964年
プロフィール
本名 家弓 家正(かゆみ いえまさ)[1]
性別 男性
出身地 日本の旗 日本東京府東京市(現:東京都港区[2]鹿児島県[3]
死没地 日本の旗 日本東京都[4]
生年月日 (1933-10-31) 1933年10月31日
没年月日 (2014-09-30) 2014年9月30日(80歳没)
血液型 O型[5][6]
職業 声優俳優
事務所 81プロデュース[7]
公式サイト 家弓家正 - 81プロデュースの公式サイト
公称サイズ(時期不明)[8]
身長 / 体重 172 cm / 62 kg
活動
活動期間 1956年[5] - 2014年
デビュー作 『花紅』
声優テンプレート | プロジェクト | カテゴリ

家弓 家正(かゆみ いえまさ、1933年10月31日[注 1][11] - 2014年9月30日[3][12][13])は、日本声優俳優東京府東京市(現:東京都港区)出身[2][3]81プロデュースに所属していた[7]

経歴

東京府東京市(現:東京都港区)出身[2][3]戦争による疎開を機に、父親の出身地である鹿児島県に移住[3]

旧制鹿児島県立第二鹿児島中学校に入学し、途中からは学制改革によって鹿児島県甲南高等学校の生徒となる[3]。同校では、新たに設立された演劇部が貴重な標準語を話せる生徒を部員に勧誘しており、それにより家正も演劇部に所属した[注 2]。その後、演劇を本格的に志して高校の途中で上京し[3]、1955年に舞台芸術学院を卒業[8][10]。学院の1年後輩に青野武がいる[15]。サンドイッチマンのアルバイトをしていた[15]

1956年に劇団七曜会に入り[10][16]、同年にNHKラジオドラマに声優として初出演する[17]。その後、1957年放送の『ミッキー・ルーニー・ショー』にて吹き替えデビュー[18]。NET(現:テレビ朝日)で1963年に放送された海外ドラマ『アイランダーズ』でのザック・マロイ役の吹き替えで初めて大きな役を担当する[17]

事務所は、桐の会[19]河の会[20]、プラスプロダクション[21]、プロダクションTHG[22]同人舎プロダクション[16]、クリエイティブオフィスZ[23]青二プロダクション[24]を経て、最後は81プロデュースに所属していた[7]

2014年9月30日午前10時15分、病気のため東京都内の病院で死去[4][12]。以前から通院加療中であったという[4][12]。80歳没。訃報は同年10月8日に、所属する81プロデュースから発表された[4][12][25]

人物

芸名は使わなかった。過去には姓名判断で「大変良くない名前だし、将来も良くないから絶対に変えなさい」と言われたが「僕らの仕事は保証もなく既に良くない」と本名で活動していた[16]

呑み仲間でもある若本規夫からは、収録の際に台詞を決して間違えないことから「精密機械」の異名を与えられた。これに対し本人は「ちょっと、何ていうか⋯非人間的(な表現)だねぇ(笑)」と返しており、「デビュー当時は生放送が基本で何度もトチると次は使ってもらえない時代だったし、トチらない奴に仕事が回った結果で、僕はそんな大したことしてない」と述べている[26]

山路和弘によると、吹き替えに関して家弓は「この仕事は錯覚だからね」とよく言っていたという[27]

藤村歩は尊敬する声優として家弓の名を挙げており、家弓は彼女に芝居の大切さを教えている[28]

趣味はカメラ[5]

特色・役柄

声種バスバリトン[29]。「腹の底から響くような重々しい声が魅力」[30]、「渋いのに優しさを秘めたようなソフトヴォイスが特徴」と評されている[31]。演じる役柄としては博士役、知的な悪役で知られていた[30]

テレビ草創期からテレビドラマアニメ吹き替えナレーションと幅広く活躍した[32]

吹き替えでは、フランク・シナトラドナルド・サザーランドを数多く担当[32]。ほかにもジェームズ・スチュアートに代表される二枚目俳優から、アレックス・コードクリストファー・リーなど、渋さ・アクの強さが滲むような俳優陣の吹き替えを担当した。

悪役

風の谷のナウシカ』のクロトワ役や『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』のパラガス役など、様々な作品で黒幕や敵役、悪役を演じた[4]

敵役について家弓自身は、普段できないことを思う存分でき、ストレス発散になるので面白いと語っている[17]。また、声優業自体が画面のタイミングに自分の演技を合わせなければならないという制約によるつまらなさを感じることもあることから、「いい人、やさしい人よりも屈折した人物の声をやってる方が飽きないんです(笑)」と語ったこともある[18]

「悪役に家弓」というイメージは古くからあったらしく、1963年のドラマ『逃亡者』シリーズで黒幕が明らかになるかというクライマックスの回に家弓がゲスト出演した際、レギュラー出演者から「やっぱりお前が一番悪い奴だったのか!!」と声をそろえ冗談交じりにののしられたというエピソードがある。しかし、実際の黒幕は家弓が吹き替えを担当した人物ではなかった。

フランク・シナトラ

1967年にテレビ朝日日曜洋画劇場』の前身である『土曜洋画劇場』で放送された『見知らぬ人でなく』以降、フランク・シナトラの吹き替えをほぼ専属で担当した。

初めてオファーが来た際はシナトラの全盛期であり、家弓は当初「シナトラは誰もが声を知っている程の世界的な歌手で、(当時存在した)ファンクラブからもクレームがくるのが目に見えている」と断るなど乗り気でなかったが、「本数も少ないし頼むからやってくれ」といわれ渋々担当することになったという[17]。その後、クレームがきたという話はなかったが、家弓は「降板させないため本人に見せないでくれていたのではないか」と述べている[17]

それからは、どきどきしながらシナトラに吹き替えていたという[17]。なお、気持ちの上での抵抗に関しては途中で「仕方がない」と諦めの心境に変わったといい、「つまり全く意識しないでやる事なんです。1ステージ何十万ドルもとる人と勝負できないもんですから」と語っている[16]

シナトラの芝居について、家弓は「歌手としては非常に好きだが、役者としてはあまり魅力を感じない」と評し、「何回も同じ人を吹き替えていると情が移るとか言われますが、私は性格的にあまり情が移らない方でして…」と述べている。また演技は「台本どおりきっちりしている」ため「崩しているようで崩してない」と吹き替える上で注意しているといい[17]、「僕は彼のことを二枚目の役とは思ってません。一種の仇役だと思ってやってるから皆さんすんなり受け入れてくれるんじゃないですか?」と語ったこともある[18]

これまで演じて楽しかったシナトラ作品に『波も涙も暖かい』を挙げている[17]。なお、家弓自身が面白いと感じて、吹き替えをやりたかったシナトラ作品は『三人の狙撃者』だったが、結局やる機会がなかったという[17]

ドナルド・サザーランド

ドナルド・サザーランドの吹き替えは、若い頃でなく「彼がある程度年をとってから」多く担当するようになった。ただし、初担当は1975年放映の『ジョニーは戦場へ行った』である[17]

サザーランドについて、家弓は「あの目が『絶対にこいつが悪い奴だ』と思わせる」と語った。また「しゃべり方が不思議で、息継ぎをせずにだらだらしゃべるため担当する時は辛いとも語り、『JFK』では15分もほとんど1人でしゃべり通すシーンだったため泣かされたという[17]

宮崎駿作品

宮崎駿の監督作品では、二度悪役として出演している。

未来少年コナン』では、独裁者のレプカを担当。家弓はレプカに対して、人物像を探れるような描写が少なく役が掴みにくかったといい、場面によって性格が大きく異なったことで「もう少し陰のあるキャラクターであって欲しかったな」と評している。また「もっと人間としての存在感というかリアリティがある役でいてほしかった」という趣の発言をしているほか、収録時に絵が完成しておらず苦労したこともあり「いろんな意味において不満の多かった作品ですね。僕にとっては」と発言している[33]

『未来少年コナン』の後に公開された『風の谷のナウシカ』ではクロトワを演じており、クロトワに関して家弓は「同じ“敵役”でも今回のクロトワという男は、レプカに比べて肩に力が入ってない⋯⋯とでもいうのでしょうか。要するに飄々と生きている感じです」と評し、「この宮崎さんが創った魅力あるキャラクターは、演じていてとても楽しかったですね」とコメントしている[34]

なお、上記二作の間に製作された『ルパン三世 カリオストロの城』では、宮崎本人からカリオストロ伯爵役を熱望されたが、諸事情により辞退している(演じたのは石田太郎)。

その他出演作

超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』でアークエンジェル(アレックス・コード)を担当した際は、「CIAは日本では陰謀に関わる悪玉として知られているが、自分は主人公側なので主役をサポートする人格者を演じなきゃならない、少々やりにくい」と述べた[18]

出演

太字はメインキャラクター。

テレビドラマ

テレビアニメ

1963年
1964年
1965年
1968年
1969年
1971年
1972年
1973年
1974年
1975年
1976年
1977年
1978年
1979年
1983年
1989年
1991年
1993年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2011年
2013年
2014年

劇場アニメ

1979年
1982年
1984年
1985年
1987年
1988年
1989年
1992年
1993年
1994年
1995年
1999年
2003年
2007年
2009年
2013年
2014年

OVA

1985年
1988年
1989年
1992年
1995年
2005年
2001年
2010年

ゲーム

2022年以降の出演作品は、生前の収録音声を使用したライブラリ出演。

1991年
1992年
1993年
1994年
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2005年
  • GUILTY GEAR XX / -SLASH-(スレイヤー)
2006年
2008年
2009年
2010年
  • 白騎士物語 -光と闇の覚醒-(レダム司祭)
  • 鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 約束の日へ(お父様、ナレーション)
2011年
2012年
2013年
2014年
2016年
  • クロスワールド(カザキリ[62]
2022年

ラジオドラマ

ドラマCD

吹き替え

担当俳優

アーサー・ケネディ
アレックス・コード
クリストファー・プラマー
クリストファー・リー
ジェームズ・スチュアート
ジョン・フォーサイス
  • トパーズマイケル)※フジテレビ版
  • 母の旅路(クレイ・アンダーソン)※テレビ朝日版
  • 冷血アルヴィン)※NET版
スターリング・ヘイドン
デヴィッド・キャラダイン
ドナルド・サザーランド
フランク・シナトラ
マクシミリアン・シェル
マックス・フォン・シドー
リチャード・アンダーソン
ロイ・シャイダー
ロバート・ウェッバー

映画

ドラマ

アニメ

人形劇

  • キャプテン・スカーレット
    • ミステロン探知機を出せ!(パターソン将軍)
    • 消えたロケット(船長、警備員)
    • ミステロン基地発見!(XK3号操縦士)
    • ミステロン基地を爆破せよ!(シュローダー)
    • 地獄の猛火!(SKR4号操縦士)
    • アメリカ大陸を救え!(原子力都市保安部長)
    • スペクトラムの暗号をねらえ!(シュローダー)
    • 原子炉爆発寸前!(大尉)
    • 地球の首都を救え!(バクスター)
  • サンダーバード
  • ジョー90
    • 大手術作戦(シャーマン博士)
    • ジャングル死の脱出(少尉)
    • 決死のスピードレース(バーンズ少尉)
    • 恐怖の爆弾トラック(軍曹)
    • 戦慄の脱獄囚(パット・モラン大尉)
    • すばらしい誕生日(軍曹)
  • ロンドン指令X 人工衛星スパイ(ハーソロン)

カセットブック

ナレーション

CM

その他コンテンツ

後任

2011年頃からは、一部の作品で持ち役の降板をしていた。家弓の持ち役を引き継いだ人物は以下の通り。

ただし、他の声優も総入れ替えされた作品(『バーテンダー 神のグラス』の葛原隆一〈後任:内田直哉[66]〉など)はこの趣旨から外れるため、この表には記載しない。

後任 役名 概要作品 後任の初担当作品
土師孝也 ジェイムズ・ブラック 名探偵コナン 名探偵コナン 純黒の悪夢[注 3]
スレイヤー GUILTY GEARシリーズ GUILTY GEAR Xrd -REVELATOR-[68]
大木民夫 サルマン ホビット三部作 ホビット 決戦のゆくえ[69]
長克巳 エリック・レーンシャー / マグニートー X-MEN:フューチャー&パスト ローグ・エディション追加シーン
銀河万丈 “アークエンジェル”マイケル・コールドスミス・ブリッグス3世 超音速攻撃ヘリ エアーウルフ BD版追加シーン[70]
宝亀克寿 パラガス ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦 ドラゴンボールヒーローズ
郷田ほづみ ネフェルタリ・コブラ ONE PIECE 第776話[注 4]
トビー上原 シャドウガイスト ストリートファイターEX ファイティングEXレイヤー
村治学 摩毛狂介 ルパン三世 1st series ルパン三世 ルパンは今も燃えているか?
津田英三 ナナカマド博士 ポケットモンスター ダイヤモンド&パール ポケットモンスター[注 5]
大塚明夫 お父様 鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 鋼の錬金術師 MOBILE
辻親八 ゴルドー 金色のガッシュベル!! 『金色のガッシュベル!! 永遠の絆の仲間たち』[71]

脚注

注釈

  1. ^ 生年月日を1932年10月31日と書かれた資料もある[2][9][10]
  2. ^ 後に、在京の鹿児島県甲南高校演劇部OBで作った甲南テアトロ会にも参加した[14]
  3. ^ 死後2年ほどは出番がなかったため、第783話は過去の収録音声を流用したライブラリ出演となり[67]、劇場版では『純黒の悪夢』から、テレビシリーズでは第1078話から土師が演じることになった。
  4. ^ 家弓の生前に放送された第512話では家弓ではなく上田敏也が担当した。
  5. ^ ただし、厳密には津田が演じたナナカマド博士は並行世界の人物で、家弓が演じたナナカマド博士とは別人である。

出典

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  2. ^ a b c d e f g DJ名鑑 1987三才ブックス、1987年2月15日、58頁。
  3. ^ a b c d e f g 「訃報 家弓家正」『南日本新聞』2014年10月9日、朝刊、23面。
  4. ^ a b c d e “「ナウシカ」クロトワ役 声優の家弓家正が死去”. スポーツニッポン. https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/10/09/kiji/K20141009009070020.html 2015年3月13日閲覧。 
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  9. ^ 『日本タレント名鑑(1988年版)』VIPタイムズ社、1988年、69頁。 
  10. ^ a b c 『タレント名鑑NO1』芸能春秋社、1962年、146頁。 
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  12. ^ a b c d 俳優・声優の家弓家正さんが死去 「ナウシカ」のクロトワや「ドラゴンボールZ」パラガス役など演じる”. ITmedia (2014年10月8日). 2024年10月31日閲覧。
  13. ^ 「ナウシカ」クロトワ役 声優の家弓家正が死去”. Sponichi Annex. スポーツニッポン (2014年10月9日). 2024年10月31日閲覧。
  14. ^ 『樟風遙か 甲南高校創立百周年 同窓会記念誌』甲南高校創立百周年記念事業同窓会実行委員会、2006年11月3日、144頁。 
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  16. ^ a b c d 阿部邦雄「第2部 人気声優インタビュー60人集」『TV洋画の人気者 声のスターのすべて』近代映画社、1979年、255-258頁。ASIN B000J8GGHO 
  17. ^ a b c d e f g h i j k とり・みき『とり・みきの映画吹替王』洋泉社、2004年、50-59頁。ISBN 4896918371 
  18. ^ a b c d 『ロマンアルバムスペシャル 超音速攻撃ヘリエアーウルフ』徳間書店、1987年、68-70頁。 
  19. ^ 『出演者名簿(1963年版)』著作権資料協会、1963年、133頁。 
  20. ^ 『出演者名簿(1966年版)』著作権資料協会、1965年、103頁。 
  21. ^ 『出演者名簿(1969年版)』著作権資料協会、1968年、121頁。 
  22. ^ 『出演者名簿(1972年版)』著作権資料協会、1971年、124頁。 
  23. ^ 『声優の世界-アニメーションから外国映画まで』朝日ソノラマファンタスティックコレクション別冊〉、1979年10月30日、78頁。 
  24. ^ 掛尾良夫 編「男性篇」『声優事典 第二版』キネマ旬報社、1996年3月30日、88頁。ISBN 4-87376-160-3 
  25. ^ <訃報>”. 81プロデュース (2014年10月). 2014年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月25日閲覧。
  26. ^ GUILTY GEAR XX Λ CORE PLUS』内 クリア後のインタビュー
  27. ^ 【声のお仕事】山路和弘さん#1「ジェイソン・ステイサムみたいな男って、どうしてモテるんだろうね」”. フムフムニュース (2022年9月28日). 2023年2月26日閲覧。
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外部リンク