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安息香酸ナトリウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
安息香酸ナトリウム
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識別情報
CAS登録番号 532-32-1 チェック
PubChem 517055
ChemSpider 10305 チェック
UNII OJ245FE5EU チェック
E番号 E211 (防腐剤)
ChEBI
ChEMBL CHEMBL1356 チェック
RTECS番号 DH6650000
特性
化学式 C7H5NaO2
モル質量 144.1 g mol−1
外観 white or colorless crystalline powder
匂い odorless
密度 1.497 g/cm3
融点

410 °C, 683 K, 770 °F

への溶解度 62.69 g/100 mL (0 °C)
62.84 g/100 mL (15 °C)
62.87 g/100 mL (30 °C)
74.2 g/100 mL (100 °C)[1]
溶解度 液体アンモニアピリジンに溶けやすい[1]
メタノールへの溶解度 8.22 g/100 g (15 °C)
7.55 g/100 g (66.2 °C)[1]
エタノールへの溶解度 2.3 g/100 g (25 °C)
8.3 g/100 g (78 °C)[1]
1,4-ジオキサンへの溶解度 0.818 mg/kg (25 °C)[1]
危険性
GHSピクトグラム 急性毒性(低毒性)[2]
GHSシグナルワード 警告(WARNING)
Hフレーズ H319[2]
Pフレーズ P305+351+338[2]
NFPA 704
1
2
0
引火点 100 °C (212 °F; 373 K)
発火点 500 °C (932 °F; 773 K)
半数致死量 LD50 4100 mg/kg (oral, rat)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

安息香酸ナトリウム(あんそくこうさんナトリウム、英:sodium benzoate 化学式C6H5COONa)は、広く使用されている酸型保存料の一種であり、E番号E211安息香酸ナトリウム塩であり、水に溶解するとこの形で存在する。水酸化ナトリウム安息香酸と反応させることで製造可能である。

製造

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安息香酸ナトリウムは安息香酸の中和によって生成する。[3]

また、工業的にはトルエン酸素による部分酸化によって生産される。

自然発生

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安息香酸、安息香酸ナトリウムのような、およびそのエステルは、多くの自然の食品に含まれる[4]

果物野菜、特にクランベリービルベリーなどのベリー類に豊富で、その他の供給源として、エビなどのシーフードや牛乳チーズヨーグルトなどの乳製品がある。

用途

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防腐剤

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安息香酸ナトリウムは保存料であり、E番号はE211である。サラダドレッシング(酢酸など)、炭酸飲料(炭酸)、ジャムフルーツジュース(クエン酸)、漬物(酢酸)、調味料、冷凍ヨーグルトトッピングなどの酸性食品に最も広く使用されている。医薬品化粧品防腐剤としても使用されている。[5][6]これらの条件下では静菌及び殺菌性のある安息香酸(E210) に変換される。安息香酸は、一般に溶解度が小さいため直接使用されない。食品保存料としての濃度は、米国FDAによって重量0.1%に制限されている。[7]アメリカ飼料検査官協会に従って、安息香酸ナトリウムは、最大0.1%で動物性食品添加物として許可されている。[8]イギリスではソフトドリンクの大部分で、安息香酸ナトリウムがソルビン酸カリウムに置き換えられている。[9]

医薬品

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安息香酸ナトリウムは、アミノ酸に結合する能力を利用して尿素回路異常症治療薬として使用されている[10][11]。使用することで、これらのアミノ酸の排泄およびアンモニア濃度の低下につながる。最近の研究では、安息香酸ナトリウムは、統合失調症アドオン療法(1グラム/日)として有益である可能性があるとされている[12][13][14]。服用によって、統合失調症における陽性および陰性症候群の総スコアが、プラセボと比較して21%減少した。
安息香酸ナトリウムは、フェニル酪酸英語版と共に、高アンモニア血症英語版の治療に使用される[15][16]
安息香酸ナトリウムは、カフェインと共に、硬膜穿刺後の頭痛英語版麻薬の過剰投与に伴う呼吸抑制、[17][18]および血管性頭痛英語版を治療するためのエルゴタミンを除去するために使用される[19]

その他の用途

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安息香酸ナトリウムは、花火におけるホイッスルミックス(チューブ内に圧縮充填し、発火した際に口笛のような音を発する粉末)に用いられる。

食品保存のメカニズム

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この機構は、細胞内への安息香酸の吸収から始まる。それによって、細胞内pH英語版が5以下に低下すると、ホスホフルクトキナーゼを介したグルコース嫌気性発酵英語版が急激に減少し、食品の腐敗を引き起こす微生物の増殖と生存を阻害する[20]

健康と安全

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1909年安息香酸ナトリウムに対するハインツの広告

米国では、安息香酸ナトリウムは、米国食品医薬品局によって一般的に安全(GRAS)として認識されるように指定されている。[21]化学安全に関する国際プログラムでは、1日当たり体重647~825mg/kgの用量ではヒトに悪影響を及ぼさないとした。[22][23]

ラットマウスよりも安息香酸とその塩に対する耐性が著しく低い。[24]

人体では、グリシンと反応させてヒブリン酸英語版を形成し、次に排泄することによって、安息香酸ナトリウムを急速に除去している。[23]この代謝経路は、ブチレートCoAリガーゼ英語版による安息香酸塩を中間生成物に変換することで始まり、[25]その後グリシンN-アシルトランスビセラーゼ英語版によってヒブリン酸に代謝される。[26]

清涼飲料中のベンゼンとの関連

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アスコルビン酸(ビタミンC、E300)との反応により、安息香酸ナトリウムおよび安息香酸カリウムからベンゼンが生成されることがある。2006年、米国食品医薬品局は、アスコルビン酸と安息香酸塩の両方を含む、米国で入手可能な飲料100種を試験した。そのうち4つには、飲料水に対して環境保護庁によって設定された5ppb最大汚染物質レベル英語版を上回る濃度でベンゼンが含まれていた[27]。制限を超えた試験結果が出た飲料のほとんどは再製剤化され、その後は安全限界を下回った試験結果が出た[27]。熱、光、および貯蔵期間によって、飲料中でベンゼンが形成される速度が増加しうる。

多動性

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英国食品規格庁英語版(FSA)のために2007年に発表された研究では、安息香酸ナトリウムと反応させた特定の人工色素英語版多動行動英語版に関連している可能性があることを示している。結果は安息香酸ナトリウムの性質と矛盾していたので、FSAはさらなる研究を推奨した[28][29][30]。食品規格庁は、多動行動の観察の増加は、実際には安息香酸ナトリウムよりも人工色素に関連する可能性が高いと結論付けた[30]。この報告書の著者であるサウサンプトン大学のジム・スティーブンソンは、「この結果は、人工食品の色と安息香酸ナトリウム防腐剤の特定の混合物の消費が小児の多動行動の増加に関連していることを示唆している。他にも多くの影響が働いているが、これは少なくとも子供が避けることができるものである。」とした[30]

公定書の状態

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関連項目

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出典

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  1. ^ a b c d e sodium benzoate”. chemister.ru. 2020年12月21日閲覧。
  2. ^ a b c Sigma-Aldrich Co., Sodium benzoate. Retrieved on 2014-05-23.
  3. ^ International Programme on Chemical Safety”. Inchem.org. 2013年1月14日閲覧。
  4. ^ del Olmo, Ana; Calzada, Javier; Nuñez, Manuel (20 November 2015). “Benzoic acid and its derivatives as naturally occurring compounds in foods and as additives: Uses, exposure, and controversy”. Critical Reviews in Food Science and Nutrition 57 (14): 3084–3103. doi:10.1080/10408398.2015.1087964. PMID 26587821. 
  5. ^ Skin Deep® Cosmetics Database | Environmental Working Group”. Cosmeticsdatabase.com. 2013年1月14日閲覧。
  6. ^ Robitussin (Guaifenesin)”. Rxmed.com. 2013年1月14日閲覧。
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  8. ^ AAFCO (2004). Official Publication. p. 262. 
  9. ^ Saltmarsh, Mike (2015-03-15). “Recent trends in the use of food additives in the United Kingdom”. Journal of the Science of Food and Agriculture 95 (4): 649–652. doi:10.1002/jsfa.6715. ISSN 1097-0010. PMID 24789520. "... the preservative used in the study, sodium benzoate, has been replaced by potassium sorbate in the majority of soft drinks." 
  10. ^ Häberle, J; Boddaert, N; Burlina, A; Chakrapani, A; Dixon, M; Huemer, M; Karall, D; Martinelli, D et al. (2012). “Suggested guidelines for the diagnosis and management of urea cycle disorders”. Orphanet Journal of Rare Diseases 7: 32. doi:10.1186/1750-1172-7-32. PMC 3488504. PMID 22642880. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3488504/. 
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  12. ^ Add-on Treatment of Benzoate for Schizophrenia A Randomized, Double-blind, Placebo-Controlled Trial of d-Amino Acid Oxidase Inhibitor December 2013
  13. ^ Digest of Neurology and Psychiatry”. Institute of Living.. 16 April 2018閲覧。
  14. ^ Mental Health Research Institute Staff Publications, University of Michigan. Mental Health Research Institute
  15. ^ Cinnamon May Help Halt Parkinson's Disease Progression - News Releases - Rush University Medical Center”. 2021年5月21日閲覧。[リンク切れ]
  16. ^ PHENYLBUTYRATE, SODIUM BENZOATE. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases. (2012). https://livertox.nih.gov/PhenylbutyrateSodiumBenzoate.htm 
  17. ^ Yücel, A; Ozyalçin, S; Talu, GK; Yücel, EC; Erdine, S (1999). “Intravenous administration of caffeine sodium benzoate for postdural puncture headache”. Reg Anesth Pain Med 24 (1): 51–4. doi:10.1097/00115550-199924010-00010. PMID 9952095. 
  18. ^ mayoclinic.org, Caffeine And Sodium Benzoate (Injection Route)
  19. ^ ebi.ac.uk, CHEBI:32140 - sodium caffeine benzoate
  20. ^ Krebs H. A., Wiggins D., Stubbs M., Sols A., Bedoya F. (September 1983). “Studies on the mechanism of the antifungal action of benzoate”. Biochem. J. 214 (3): 657–663. doi:10.1042/bj2140657. PMC 1152300. PMID 6226283. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1152300/. 
  21. ^ CFR - Code of Federal Regulations Title 21”. www.accessdata.fda.gov. 2021年5月21日閲覧。
  22. ^ Concise International Chemical Assessment Document 26: Benzoic acid and sodium benzoate”. Inchem.org. 2013年1月14日閲覧。
  23. ^ a b Cosmetic Ingredient Review Expert Panel Bindu Nair (2001). “Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate”. Int J Tox 20 (Suppl 3): 23–50. doi:10.1080/10915810152630729. PMID 11766131. https://www.semanticscholar.org/paper/1fa190b60988a4ad272e39e132bcc12b00429464. 
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  26. ^ glycine N-acyltransferase”. BRENDA. Technische Universität Braunschweig.. 7 May 2014閲覧。 Substrate/Product
  27. ^ a b Data on Benzene in Soft Drinks and Other Beverages”. 米国食品医薬品局 (16 May 2007). 12 January 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。7 November 2013閲覧。
  28. ^ Food Standards Agency issues revised advice on certain artificial colours 6 September 2007
  29. ^ Food Colorings and Hyperactivity "Myomancy" 7 September 2007
  30. ^ a b c Agency revises advice on certain artificial colours, Food Standards Agency, 11 September 2007
  31. ^ a b c シグマ アルドリッチ. “Sodium benzoate”. 17 July 2009閲覧。
  32. ^ Therapeutic Goods Administration. “Chemical Substances”. 15 June 2009時点のオリジナルよりアーカイブ。17 July 2009閲覧。
  33. ^ British Pharmacopoeia Commission Secretariat. “Index (BP)”. 11 April 2009時点のオリジナルよりアーカイブ。2 March 2010閲覧。
  34. ^ Japanese Pharmacopoeia 15th Edition”. 2 March 2010閲覧。
  35. ^ 米国薬局方英語版=Revisions to USP 29–NF 24”. 17 July 2009閲覧。

外部リンク

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