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十字街 (函館市)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

十字街(じゅうじがい)は、北海道函館市末広町繁華街である。正式な町丁名ではない[1]

なお、一本東側の通り「銀座通り」(豊川町・末広町にまたがる)も併せて解説する。

十字街交差点(2013年)

概要

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十字街

函館市の旧市街地、函館山山麓の函館港側に位置する繁華街である。明治期までの函館経済の中心は青函航路の東浜桟橋(旧桟橋)付近だったが、街の拡大に伴い大正期に移動しできた[2]。十字街とは十字形をした街路の通称[3]で、国道279号/国道338号(重複区間)と北海道道675号立待岬函館停車場線が合流する交差点付近のことをいう。道路は明治18年函館大火復興改正で東浜町~蓬莱町間の通り、現在の電車通りができた[4]。1910年(明治43年)の「馬車鉄道開業路線図」には十字街と名乗る停留場はなく、恵比須町停留場となっているが、1913年(大正2年)の「電車線図」に十字街停留場が出ている[3]

当時の十字街付近は、映画館4軒や旧丸井今井函館店などを擁した函館を代表する中心繁華街であり、当時は全国有数の繁華街でもあった。[要出典]しかし、1934年(昭和9年)の昭和9年函館大火によりこの繁華街付近も大きな被害を受け、徐々に衰退が始まっていった[5]

太平洋戦争後の1960年(昭和35年)には末広町5番地・6番地・7番地を中心に取り囲むように新しいアーケードが設置されたが[6]、同年に十字街商店街について「このままでは場末街になる」という診断書が出され、衰勢が明らかとなった[7]1969年(昭和44年)には、丸井今井が本町地区に移転[7]、建物は函館市役所末広分庁舎、現・函館市地域交流まちづくりセンターとなったが、これは十字街を含む西部地区の斜陽化を防ぐ目的だった[7]

2002年(平成14年)10月に再開発ビル「アクロス十字街」が竣工、函館市水道局(現・函館市企業局上下水道部)が入居した。当初香港の日系企業の事業参加による中華街を予定していた[5]

銀座通り

十字街の東隣りの歓楽街。栄国橋があったことから栄国橋通り高田屋嘉兵衛の屋敷があったことから(旧)高田屋通り恵比須通り(恵比須町通り)とも呼ばれている[8][9]。1888年(明治21年)頃願乗寺川(亀田川分流)を埋め立てて道幅8間(14.5m)の道路を作ったもの[4]大正10年函館大火後に防火線とするためにコンクリート建築物を建築した。昭和9年函館大火後に函館駅前・大門に客足を奪われて衰微した[9]

年表

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  • 1885年明治18年)5月13日 - 明治18年函館大火被災[10]。復興時の道路改正で東浜町~蓬莱町間の道路、現在の電車通りができる
  • 1888年(明治21年)頃 - 願乗寺川(亀田川分流)埋め立て、銀座通りができる
  • 1892年(明治25年)4月25日 - 南部坂下の山丸二菊池呉服店跡に函館丸井今井呉服店(現・丸井今井函館店)が開店[11]
  • 1898年(明治31年)1月9日 - 亀函馬車鉄道(のちの函館馬車鉄道)十字街停留場開業
  • 1913年大正2年)10月30日 - 函館水電(現・函館市企業局交通部)十字街停留場電化開業
  • 1919年(大正8年)12月 - 西川町遊園地跡に函館区日用品販売所が開設[12]
  • 1921年(大正10年)4月14日 - 大正10年函館大火被災[13]
  • 1927年昭和2年)
    • 3月26日 - 函館区日用品販売所跡に複合公共施設「市民館」が開館[14][12]
    • 4月 - 市民館内に公衆食堂が開設される[15]
  • 1934年(昭和9年)
    • 3月21日 - 昭和9年函館大火被災
    • 月日不明 - 修復した市民館に函館市役所本庁舎第1仮庁舎を開設[16][17]
  • 1938年(昭和13年)
  • 1945年(昭和20年)3月 - 函館市役所本庁舎、2代目竣工に伴い旧・市民館より東雲町(函館駅前地区)に移転[12]
  • 1948年(昭和23年)5月 - 旧・市民館に市立函館図書館第一分館開館[12]
  • 1951年(昭和26年)
    • 2月17日 - 市立函館図書館第一分館(旧・市民館)と市立函館保健所(千歳町)が建物交換(図書館第一分館の移転先開館は同年4月)[20][12]
    • 8月26日 - 市立函館保健所建物(旧・市民館)内に函館競輪十字街場外車券売場開設
  • 1953年(昭和26年)4月3日 - 函館競輪十字街場外車券売場が末広町35に移転
  • 1954年(昭和29年)6月18日 - 十字街商盛会(アーケードを作る会)発足[21][22]
  • 1959年(昭和34年) - 函館初のエスカレーターが丸井今井函館店に設置される[23]
  • 1960年(昭和35年) - アーケード設置
  • 1962年(昭和37年)9月30日 - 函館競輪十字街場外車券売場廃止
  • 1969年(昭和44年) - 丸井今井函館店が五稜郭地区(本町地区、旧・大字亀田村地区)に移転。同年函館市が建物を購入[24]
  • 1970年(昭和45年) - 函館市水道局(現・函館市企業局上下水道部)が移転してくる(函館市役所末広町分庁舎)[24]
  • 1973年(昭和48年)10月1日 - 市立函館保健所が五稜郭町(旧・大字亀田村地区)に移転[25]
  • 1978年(昭和53年)12月8日 - 函館市交通局、深堀町より管理部門および運輸部門が移転してくる(函館市役所末広庁舎)
  • 1995年平成7年)6月 - 十字街市電操車塔を廃止、同年9月現在地に移設[19]
  • 2002年(平成14年)
    • 10月 - アクロス十字街(末広町5番A地区第一種市街地再開発事業)竣工[26]
    • 10月7日 - 函館市交通局、管理部門および運輸部門を駒場町駒場車庫内に移転させる
  • 2004年(平成16年)2月16日 - 第1回函館西部地区バル街開催[27]
  • 2007年(平成19年)4月1日 - 函館市役所末広分庁舎をリニューアルして函館市地域交流まちづくりセンター開所
  • 2011年(平成23年)4月1日 - 函館市水道局が改組され、函館市企業局上下水道部になる
  • 2013年(平成25年)4月1日 - 青森銀行末広町支店が函館支店内に移転[28]
  • 2020年(令和2年)3月9日 - 北洋銀行末広町支店が函館中央支店内に移転[29]

イベント

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  • 函館港まつり
    • ワッショイはこだて(旧・一万人<踊り>パレード)十字街コーススタート地点(銀座通り側、2023年現在)[30]
    • ファンタジアクロス☆十字街商盛会の港まつり - 十字街商盛会による協賛イベント[31][32]
  • 函館西部地区バル街[33]

主要施設

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かつてあった主要施設

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  • 公共施設
  • 交通
  • 金融機関
    • 青森銀行末広町支店 - 五稜郭地区函館支店内へ移転後函館支店に統合[28]
    • 北洋銀行末広町支店 - 大門地区(函館駅前)函館中央支店内へ移転[29]
  • 医療・福祉
    • 日赤函館血液センター - 函館競輪十字街場外車券売場だった建物を改修して開設。1978年(昭和53年)1月、日之出町へ移転[36]
  • 商業・娯楽施設
    • 金森洋物店 - 昭和38年北海道指定有形文化財。1880年(明治13年)11月開店の輸入雑貨店。開拓使茂辺地煉瓦石製造所が製造したレンガを用いて建てられた。1925年(大正14年)閉店し函館市に譲渡され、現在は市立函館博物館郷土資料館[37]
    • 丸井今井函館店 - 1969年(昭和44年)五稜郭地区(本町交差点付近)に移転
    • 函館競輪十字街場外車券売場[34]
    • 東宝銀映座 - 旧・恵比須町に所在。東宝直営店[38]Wikiサイト『消えた映画館の記憶』の文献調査によると「函館銀映座」、「銀映座」とも(出典元は全国映画館名簿<1941年、1943年、1947年、1950年、1953年、1955年、1958年、1960年、1963年、1966年、1968年>)、広末町7番地(同名簿1966年、1968年)[39]。函館市内にあった東宝系列の項目「函館東宝」も参照
    • 函館区日用品販売所[12]

その他

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市街地となる以前については、戊辰戦争中の1869年6月20日(明治2年5月11日)、旧幕府軍の幹部土方歳三が箱館にある新政府軍の包囲で孤立していた弁天台場を救出しようと一隊を率いて五稜郭より進撃を試みたが、土方自身が腹部を撃たれて落馬、そのまま亡くなった最期の地とする説がある(十字街異国橋説)ものの、関連小説の影響の可能性もあり、史実かどうかははっきりしていない[40][41][42]

脚注

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  1. ^ 函館市の町名 - 函館市。「十字街」という町名は存在しない
  2. ^ 鈴木文彦「路線価でひもとく街の歴史 第36回北海道函館市」『ファイナンス』2023年2月号、財務省、pp.62-65
  3. ^ a b 函館・道南大辞典 p.216
  4. ^ a b 函館市史 通説編第2巻 pp.523-525
  5. ^ a b "末広町5番A地区第一種市街地再開発事業" アーレックス 2024年7月8日閲覧
  6. ^ "残したい函館文化【十字街アーケード通り】" sitakke/peeps hakodate 2021年7月10日更新 2024年7月21日閲覧
  7. ^ a b c 商店街の消長と小売業の変貌 - 『新編函館市史』(函館市ウェブサイトに公開)
  8. ^ 函館市史 通説編第3巻 pp.696-697
  9. ^ a b 函館・道南大事典 p.139
  10. ^ "函館の大火史(説明)" 函館市 2023年11月7日更新 2024年7月7日閲覧
  11. ^ “今井藤七”. ステップアップ (函館市文化・スポーツ振興財団) (vol.167). (2003-02).
  12. ^ a b c d e f g h i 函館西部地区Ⅲ 内陸部 p.43
  13. ^ 函館市史 通説編第3巻 pp.723-725
  14. ^ 函館市史 通説編第3巻 pp.235-237
  15. ^ 函館市史 通説編第3巻 pp.834-835
  16. ^ 函館市史通説編第3巻 pp.235-237,828
  17. ^ 函館=その歴史・史跡・風土= p.110
  18. ^ "函館市の映画館" 消えた映画館の記憶 2024年6月18日更新 2024年9月3日閲覧。原出典元は「全国映画館名簿 1955年」
  19. ^ a b "市電操車塔" はこぶら 函館市 2024年7月12日閲覧
  20. ^ 保健所事業概要 令和3年(2021年)版 市立函館保健所 p.7
  21. ^ 共同組合十字街商盛会 自己紹介(Facebook) 2024年6月22日閲覧
  22. ^ "協同組合十字街商盛会" 函館市 2024年1月10日更新 2024年6月22日
  23. ^ 函館市史 通説編第4巻 pp.428-431
  24. ^ a b "旧市役所分庁舎、塔屋残し3階建てに" 函館新聞/e-Hakodate 2003年11月19日11:20更新 2024年7月12日閲覧
  25. ^ 保健所事業概要 令和3年(2021年)版 市立函館保健所 p.8
  26. ^ "市街地再開発事業実績" 函館市 2023年3月14日公開 2024年6月21日閲覧
  27. ^ "函館西部地区バル街について" 第3回地域商業の魅力と活力の再生検討部会資料 東大阪市 2014
  28. ^ a b "店舗統合・移転のお知らせ" 青森銀行 2024年7月6日閲覧
  29. ^ a b "『末広町支店』の店舗移転のお知らせ" 北洋銀行 2019年12月13日
  30. ^ "開港164周年記念函館港まつりワッショイはこだて開催要綱" 函館港まつり実行委員会 2023年
  31. ^ "フアンタジアクロス☆十字街商盛会の港まつり" 函館市 2023年7月21日更新 2024年7月7日閲覧
  32. ^ "【2023/8/1~3】演奏を聞きながらビアガーデン「十字街商盛会の港まつり」" 函館イベント情報局 2023年8月1日更新 2024年7月7日閲覧
  33. ^ "街を楽しむ「バル街」 エリア別レポート" はこぶら 函館市 2013年4月23日更新 2024年7月11日閲覧
  34. ^ a b "函館競輪事業概要 令和4年度" 函館市競輪事業部 2023年 p.42
  35. ^ 函館市交通局労働組合『函交労50年の歩み』函館市交通局労働組合、1995年、p33、p.85
  36. ^ 函館西部地区Ⅲ 内陸部 p.13
  37. ^ "市立函館博物館郷土資料館" 函館市 2023年7月1日更新 2024年9月3日閲覧
  38. ^ 函館市史 通説第3巻 pp.711 - 714
  39. ^ "函館市の映画館" 消えた映画館の記憶  2024年6月18日更新 2024年9月3日閲覧
  40. ^ 函館市史編さん室(編)『函館市史 通説編2』函館市、1990年、pp.254 - 257
  41. ^ 木村裕俊『ある巡査の書簡から 土方歳三最期の地を探して』函館蔦屋書店、2020年、pp.16-17
  42. ^ 木村幸彦『史伝土方歳三』学習研究社〈学研M文庫〉、2001年、p.336

参考文献

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  • 自治体史
    • 函館市史 函館市総務部函館市史編さん室編 函館市
      • 通説編第2巻 1980年
      • 通説編第3巻 1980年
      • 通説編第4巻 1997年
    • 函館市交通局労働組合『函交労50年の歩み』函館市交通局労働組合、1995年
  • 商業誌・個人誌
    • 須藤隆仙 『函館・道南大事典』 南北海道史研究会 1985年
    • 木村幸比古『史伝土方歳三』学習研究社〈学研M文庫〉、2001年 ISBN 4059011037
    • 茂木治『資料 函館西部地区Ⅲ 内陸部』、2010年
    • 木村裕俊『ある巡査の書簡から 土方歳三最期の地を探して』函館蔦屋書店、2020年
  • 雑誌
    • 『ファイナンス』2023年2月号、財務省

関連項目

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