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ミルズの定数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

数論におけるミルズの定数: Mills' constant)とは、任意の自然数 n に対して

がすべて素数となる最小の正実数 A のことを言う。1947年に名前の由来である William Harold Mills により、素数の間隔に関する en:Guido Hoheisel および Albert Ingham らの成果を用いてその存在が証明された[1]。値は証明されていないものの、リーマン予想を真と仮定した場合

A = 1.3063778838630806904686144926...オンライン整数列大辞典の数列 A051021

となることが知られている。

ミルズ素数

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ミルズの定数から生成される素数 anミルズ素数と呼ばれる。ミルズ素数を求めるには、適当な a1 から順に an

の範囲における最小の素数としていけばよい。Hoheisel と Ingham らによって、a が十分大きいとき a3(a + 1)3 の間には少なくとも1つの素数が存在することが証明されているため、この不等式を満足するには a1 を十分大きく取ればよい。もしリーマン予想が真ならば「十分大きい」必要はなくなり、a1 = 2 としてミルズ素数

2, 11, 1361, 2521008887, ...オンライン整数列大辞典の数列 A051254

および上述した A が得られる。

a の上界として ee34 が知られている[2]。ミルズの定数を証明するにはこれを超えるまでミルズ素数を求めればよいが、そのような検証を行うにはあまりにも大きすぎる上界のため実用的でない。参考までに、2018年時点で知られている最大の素数は 282589933 − 1 であり、ee34 ≈ 214058779606.34... よりはるかに小さい。

2017年現在、リーマン予想仮定の下(a1 = 2)のミルズ素数は11番目までは素数であることが証明されており、その値

は20,562桁にも及ぶ[3]。また確率的素数としては14番目まで知られており、その値

は555,154桁にも及ぶ(オンライン整数列大辞典の数列 A108739)。

数値計算

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ミルズ素数が分かればミルズの定数を計算することができる。

これにより、リーマン予想仮定の下の A が6,850桁まで計算されている[4]。ミルズの定数を表す閉じた式は知られておらず、有理数かどうかも知られていない[5]

近似分数

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ミルズの定数の近似分数を近い順に記載する。収束分数オンライン整数列大辞典の数列 A123561)は太字で示した。

1/1, 3/2, 4/3, 9/7, 13/10, 17/13, 47/36, 64/49, 81/62, 145/111, 226/173, 307/235, 840/643, 1147/878, 3134/2399, 4281/3277, 5428/4155, 6575/5033, 12003/9188, 221482/169539, 233485/178727, 245488/187915, 257491/197103, 269494/206291, 281497/215479, 293500/224667, 305503/233855, 317506/243043, 329509/252231, 341512/261419, 353515/270607, 365518/279795, 377521/288983, 389524/298171, 401527/307359, 413530/316547, 425533/325735, 4692866/3592273, 5118399/3918008, 5543932/4243743, 5969465/4569478, 6394998/4895213, 6820531/5220948, 7246064/5546683,7671597/5872418, 8097130/6198153, 8522663/6523888, 8948196/6849623, 9373729/7175358, 27695654/21200339, 37069383/28375697, 46443112/35551055, 148703065/113828523, 195146177/149379578, 241589289/184930633, 436735466/334310211, 1115060221/853551055, 1551795687/1187861266, 1988531153/1522171477, 3540326840/2710032743, 33414737247/25578155953, ...

一般化

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c = 3 以外でも、c ≥ 2.106 であれば n = 1, 2, 3, ... が全て素数となる A が存在する。ルジャンドル予想が真ならば c = 2 の場合にも A が存在することが言える[6]が、後にルジャンドル予想を仮定しない証明が与えられた[7]

床関数天井関数に置き換えた でも、任意の自然数 r ≥ 3 に対し n = 1, 2, 3, ... が全て素数となる B が存在することが証明されている[8]r = 3 のとき、 B1.24055470525201424067... であり、生成される素数は次の通り。

2, 7, 337, 38272739, ...オンライン整数列大辞典の数列 A118910

Elsholtz はリーマン予想を仮定せずに および について n = 1, 2, 3, ... が全て素数となる A および B の値を導いた[9]

  • A ≈ 1.00536773279814724017
  • B ≈ 3.8249998073439146171615551375

脚注

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  1. ^ Mills, W. H. (1947). “A prime-representing function”. Bulletin of the American Mathematical Society 53 (6): 604. doi:10.1090/S0002-9904-1947-08849-2. https://www.ams.org/journals/bull/1947-53-06/S0002-9904-1947-08849-2/S0002-9904-1947-08849-2.pdf. 
  2. ^ Dudek, Adrian W. (2016). “An explicit result for primes between cubes”. Functiones et Approximatio Commentarii Mathematici 55 (2): 177–197. arXiv:1401.4233. doi:10.7169/facm/2016.55.2.3. MR3584567. 
  3. ^ Caldwell, Chris (7 July 2006). “The Prime Database”. Primes. 2017年5月11日閲覧。
  4. ^ Caldwell, Chris K.; Cheng, Yuanyou (2005). “Determining Mills' Constant and a Note on Honaker's Problem”. Journal of Integer Sequences 8: p. 5.4.1. MR2165330. http://www.cs.uwaterloo.ca/journals/JIS/VOL8/Caldwell/caldwell78.html. 
  5. ^ Finch, Steven R. (2003). “Mills' Constant”. Mathematical Constants. Cambridge University Press. pp. 130–133. ISBN 0-521-81805-2 
  6. ^ Warren Jr., Henry S. (2013). Hacker's Delight (2nd ed.). Addison-Wesley Professional. ISBN 9780321842688 
  7. ^ Matomäki, K. (2010). “Prime-representing functions”. Acta Mathematica Hungarica 128 (4): 307–314. doi:10.1007/s10474-010-9191-x. http://users.utu.fi/ksmato/papers/Primerepfunc.pdf. 
  8. ^ Tóth, László (2017). “A Variation on Mills-Like Prime-Representing Functions”. Journal of Integer Sequences 20: p. 17.9.8. arXiv:1801.08014. https://cs.uwaterloo.ca/journals/JIS/VOL20/Toth2/toth32.pdf. 
  9. ^ Elsholtz, Christian (2020). “Unconditional Prime-Representing Functions, Following Mills”. American Mathematical Monthly 127 (7): 639–642. arXiv:2004.01285. doi:10.1080/00029890.2020.1751560. 

参考文献

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外部リンク

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