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トキ (リンゴ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
‘トキ’
1. 果実
リンゴ属 Malus
セイヨウリンゴ M. pumila
交配王林’ × ‘ふじ[1]
品種 ‘トキ’[2] (‘Toki’)[3]
開発 日本の旗 日本 青森県五所川原市(土岐傳四郎)、2004年[2]
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トキ’(: ‘Toki’)[注 1]は、‘王林’と‘ふじ’を交配して育成された黄色いリンゴ(セイヨウリンゴ)の栽培品種である(図1, 2)。青森県五所川原市の土岐伝四郎によって育成され、2004年に登録された。中生品種であり日本での収穫は9–10月。果肉は緻密で果汁が多く、酸味が低いため食味が甘い。

特徴

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樹勢が強く、側枝が直立しやすい[1]。斑点落葉病に耐性がある[1]自家不和合性に関わるS遺伝子型はS2S9である[1][8]。生産力は中程度[1]。隔年結果性はほとんどみられない[1]。早期落果、後期落果はほとんどない[1]中生品種であり、日本での収穫期は9月下旬から10月上旬[9]。果実の熟期がややばらつく[1]

2. ‘トキ’(左から2列目)は熟すと黄色くなり、同じ黄色系の‘王林’(最右列)よりも黄味が強い。

果実は円形から扁円形、重さは300–400グラムでややばらつく[1][9]。果皮は黄緑色から黄色、日に当たっていた面が紅色を帯びる[1][9][10]。こうあ部(果柄が生じている窪み)や側面にサビ(果皮のコルク化)がわずかに発生する[1]。果肉は緻密でシャキシャキしており、極めて多汁で食感がよく、芳香があり、糖度は高く(14–15%)、酸度は低い(0.2–0.3%)[1][9][3]。貯蔵期間は冷蔵で2ヶ月程度[9][3]

歴史

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青森県五所川原市の土岐伝四郎が育成し、2001年に原田種苗によって登録出願され、2004年に‘トキ’として品種登録された[1][11]。当初は、種子親が‘王林’、花粉親が‘紅月’としていたが、その後のDNA調査から花粉親は‘ふじ’と訂正された[1]。品種名は育成者の土岐傳四郎氏に由来し[12]、トキの交配育成の功労により2010年に木村甚彌賞が土岐氏に贈られている[13]

利用

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2021年の日本における‘トキ’の栽培面積は約417ヘクタールであり、品種別では11位であった[10][14]

生食用として利用される[3]

台湾香港中秋節では、月に見立てた‘トキ’のような黄色の果物が贈答用に人気である[15]。ただし旧暦の8月15日に行われるため年度によって需要の時期が異なり、2013年には早く収穫された‘トキ’が流通し評判を落としてしまった[15]。また、‘トキ’は熟期が揃いにくいため、カラーチャートにより適期の収穫が呼びかけられている[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ 栽培品種(単に「品種」とよばれることも多いが、分類学における「品種」とは異なる区分であり、規約が異なる)を表記する国際規約(国際栽培植物命名規約)では、栽培品種名(栽培品種小名)を引用符で囲むこととしている[4]。近年では、日本語でも同様に表記されることがある[5][6][7]。本稿では、これにならって栽培品種名を引用符で囲って表記する。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n リンゴ新品種「トキ」は黄色の中生種として有望である”. 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 (2017年). 2022年11月13日閲覧。
  2. ^ a b トキ - 品種登録迅速化総合電子化システム”. 農林水産省 (2004年11月8日). 2022年11月13日閲覧。
  3. ^ a b c d Toki”. Pomiferous. Pomiferous.com. 2024年11月8日閲覧。
  4. ^ Brickell, C.D. et al. (2016). “International Code of Nomenclature for Cultivated Plants (9th ed.)”. Scripta Horticulturae. 18. International Society of Horticultural Science. ISBN 978-94-6261-116-0. https://www.ishs.org/sites/default/files/static/ScriptaHorticulturae_18.pdf 
  5. ^ リンゴ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2025年1月4日閲覧。
  6. ^ 金浜耕基, ed (2015). 果樹園芸学. 文永堂出版. ISBN 978-4830041297 
  7. ^ 小松宏光, 臼田彰, 羽生田忠敬, 小池洋男, 山下裕之 & 宮沢孝幸 (1998). “リンゴ新品種‘シナノスイート’について”. 長野県果樹試験場報告 5: 9-15. https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010640958.pdf. 
  8. ^ 阿部和幸 & 荒川修 (2015). “リンゴ”. In 金浜耕基. 果樹園芸学. 文永堂出版. pp. 59–90. ISBN 978-4830041297 
  9. ^ a b c d e トキ”. りんご大学. 2024年11月8日閲覧。
  10. ^ a b トキ リンゴ”. 果物ナビ. 2024年11月8日閲覧。
  11. ^ トキ”. 旬の食材百科. フーズリンク. 2024年11月8日閲覧。
  12. ^ 水梨かおる (2016年10月18日). ““黄色いリンゴ”の時代が到来?増加の背景にある理由とは”. ウォーカープラス. 2022年11月13日閲覧。
  13. ^ 木村甚彌賞”. 一般社団法人青森県りんご対策協議会. 2022年11月13日閲覧。
  14. ^ 特産果樹生産動態等調査 / 長期累年 りんご”. e-Stat. 総務省統計局. 2024年12月5日閲覧。
  15. ^ a b 青森県が黄色リンゴ「トキ」の適期収穫呼びかけ 市場価値下落防ぐため”. 弘前経済新聞 (2022年9月25日). 2022年11月13日閲覧。
  16. ^ トキの熟度は平年並みからやや進んでいる!早もぎせずに、しっかり味をのせて収穫を!!”. 青森県「攻めの農林水産業」推進本部 (2019年9月13日). 2022年11月13日閲覧。

外部リンク

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  • トキ”. りんご大学. 2024年11月8日閲覧。
  • トキ リンゴ”. 果物ナビ. 2024年11月8日閲覧。