コンテンツにスキップ

シナノゴールド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
‘シナノゴールド’
1. 果実
リンゴ属 Malus
セイヨウリンゴ M. pumila
交配ゴールデンデリシャス’ ('Golden Delicious') × 千秋 (‘Chiaki’)
品種 ‘シナノゴールド’ (‘Shinano Gold’)[1]
開発 日本の旗 日本 長野県須坂市(長野県果樹試験場)、1999年
テンプレートを表示

シナノゴールド’(: ‘Shinano Gold’)[注 1]は、長野県果樹試験場で育成された黄色いリンゴ(セイヨウリンゴ)の栽培品種である。‘ゴールデンデリシャス’と‘千秋’の交配によって作出され、1999年に登録された。果実はやや大型で黄色(図1)、果肉は果汁が多く、甘味・酸味ともにある。秋映シナノスイートとともに長野県で作出された「りんご三兄弟」とよばれる[6][7]イタリアでは、‘yello’という商標で商業栽培されている。

特徴

[編集]

樹姿は中間的からやや直立[8]。樹勢は中程度で節間長は短い[8][9]。開花期は‘ふじ’や‘つがる’よりやや遅い[8]自家不和合性に関わるS遺伝子型はS1S3である[10]。単為結実も起こる[8]。前期落果、後期落果ともに少ない[8]中生から晩生品種であり、果実熟期は長野県で9月下旬から10月上旬[8]、青森県で10月中旬から下旬[11][12]。果実のコルクスポット、ビターピットの発生は少ない[8]

果実は円形から長円形、やや大型で重さは350グラム程度[8][9][11](図1)。果皮は光沢があり、黄緑色から黄色、日に当たっていた部分が赤みを帯びることもある[8][11][12][13](図1)。こうあ部(果柄が生じる窪み)にサビ(果皮のコルク化)が生じることがある[8]。果肉は黄白色、硬さやきめは中程度、果汁が多く、甘味・酸味とも中位(糖度14–15%、酸度0.4–0.5%)、蜜は入らない[8]。寒冷地で栽培されたものは酸味が強い傾向がある[8][11]。貯蔵性は比較的よく、室温で3週間、冷蔵で3か月ほどである[8][14]。CA貯蔵では翌年6月頃まで貯蔵できる[12]

歴史

[編集]

長野県須坂市にある長野県果樹試験場において、1983年にゴールデンデリシャスを種子親、千秋を花粉親とした交配を行い、翌年、この交配に由来する495個体を育成した[9]。これらは1986年に定植して選抜が開始され、1992年に初結実し、果実品質が優れることから選抜され、1996年に農林水産省に品種登録が申請され、1999年に‘シナノゴールド’として品種登録された[9]

2021年時点で日本国内の栽培面積は約870ヘクタール青森県長野県岩手県など)である[15]。海外にも輸出され、台湾、香港、シンガポールなどに向けた輸出では好評を得ている(2018年時点)[9]

海外での栽培

[編集]
イタリアにおける南チロルの位置

2007年、長野県はイタリア南チロルの生産者団体VOGとVI.Pの2団体と「品種シナノゴールドに関する利用許諾契約」を締結し、現地でのシナノゴールドの試験栽培がスタートした。

2011年に試験栽培の状況を確認した結果、果実の外観がきれいで、品質・貯蔵性に優れ、食感とジューシーさに関し大変すばらしいとの評価を消費者から得たことから、2014年に商業栽培段階へと移行した。 その後、2016年品種シナノゴールド及び商標に関するライセンス契約を締結した。許諾商標は「yellow(黄色)」と「hello(ハロー)」からなる造語である「yello」とし、黄色が持つ明るく楽しいイメージを連想させ、20代から30代の若者世代をターゲットとしている。商品名の「Shinano Gold」は販売時に包装容器等に記載される[16]

2019年にはEU内に限られていた商業栽培が南アフリカニュージーランドオーストラリアチリアメリカの広範囲で可能になった。販売地域も約90か国に増え、南半球での栽培が開始されることにより年間通じての流通が可能になった[17]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 栽培品種(単に「品種」とよばれることも多いが、分類学における「品種」とは異なる区分であり、規約が異なる)を表記する国際規約(国際栽培植物命名規約)では、栽培品種名(栽培品種小名)を引用符で囲むこととしている[2]。近年では、日本語でも同様に表記されることがある[3][4][5]。本稿では、これにならって栽培品種名を引用符で囲って表記する。

出典

[編集]
  1. ^ Shinano Gold apple”. Orange Pippin. 2024年11月8日閲覧。
  2. ^ Brickell, C.D. et al. (2016). “International Code of Nomenclature for Cultivated Plants (9th ed.)”. Scripta Horticulturae. 18. International Society of Horticultural Science. ISBN 978-94-6261-116-0. https://www.ishs.org/sites/default/files/static/ScriptaHorticulturae_18.pdf 
  3. ^ リンゴ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2025年1月4日閲覧。
  4. ^ 金浜耕基, ed (2015). 果樹園芸学. 文永堂出版. ISBN 978-4830041297 
  5. ^ 小松宏光, 臼田彰, 羽生田忠敬, 小池洋男, 山下裕之 & 宮沢孝幸 (1998). “リンゴ新品種‘シナノスイート’について”. 長野県果樹試験場報告 5: 9-15. https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010640958.pdf. 
  6. ^ 徹底比較!信州りんご三兄弟 共和園芸農業協同組合 共和のりんご直送便”. www.applekyowa.com. 2019年11月15日閲覧。
  7. ^ シナノゴールド|とれたて大百科|野菜のチカラをもっと知る|JAグループ (野菜)”. JAグループ (野菜). 2019年11月15日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m シナノゴールド”. 中央果実協会. 2024年11月8日閲覧。
  9. ^ a b c d e 小松宏光「リンゴ‘シナノスイート’と‘シナノゴールド’の育成および高品質安定生産技術の開発」『園芸学研究』第17巻第3号、2018年、269-277頁、doi:10.2503/hrj.17.269 
  10. ^ 阿部和幸 & 荒川修 (2015). “リンゴ”. In 金浜耕基. 果樹園芸学. 文永堂出版. pp. 59–90. ISBN 978-4830041297 
  11. ^ a b c d シナノゴールド”. りんご大学. 2024年11月8日閲覧。
  12. ^ a b c りんご試作品種 「シナノゴールドJの特性”. 青森県産業技術センター. 2024年11月8日閲覧。
  13. ^ シナノゴールド|品種紹介|りんご情報局”. vegemart.net. 2019年11月15日閲覧。
  14. ^ 「海外進出する県オリジナル品種「シナノゴールド」」『信州自治』第67巻第7号。 
  15. ^ シナノゴールド リンゴ”. 果物ナビ. 2024年11月8日閲覧。
  16. ^ 欧州における品種シナノゴールド及び商標に関するライセンス契約締結について”. 長野県. 2019年10月26日閲覧。
  17. ^ 長野リンゴの「シナノゴールド」 海外栽培拡大へ  :日本経済新聞”. web.archive.org (2020年2月2日). 2020年2月2日閲覧。

外部リンク

[編集]