チャラン属
チャラン属 | |||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||
Chloranthus Sw. (1787)[1] | |||||||||||||||
タイプ種 | |||||||||||||||
Chloranthus inconspicuus Sw. (1787) = チャラン Chloranthus spicatus (Thunb.) Makino (1902) | |||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||
チャラン属[2][3]、ヒトリシズカ属[4] |
チャラン属 (ヒトリシズカ属、学名: Chloranthus) は、被子植物のセンリョウ科に分類される1属である。多年草または常緑小低木であり、葉縁に鋸歯をもつ葉が対生している。花被を欠き雄しべと雌しべだけからなる花が、穂状花序につく (図1)。雄しべは3個が合着しており (1個が3裂しているとされることもある)、雌しべの背側についている。東アジアから東南アジアに分布し、ヒトリシズカやキビヒトリシズカ、フタリシズカなど約15種が知られている。
チャランは精油を採取するために栽培されており、またお茶の香り付けなど香料に使われることがある。またいくつかの種は薬用に利用されている (有毒でもある)。ヒトリシズカやチャランなどは観賞用に栽培されることがある。
特徴
[編集]多年草または茎が緑色の常緑性小低木[4][5][2](下図2)。茎や葉は無毛、精油を含み、芳香がある[4]。葉は対生し (ときに輪生状)、対生する葉柄は低い峯 (葉鞘) でつながっている[4][5]。葉身は楕円形から卵円形、葉縁に鋸歯がある[2](図1, 2c)。托葉は線形で小さい[4][5][2]。
多数の花をつけた穂状花序が頂生または腋生し、この花序はしばしば分枝する[4][5][2] (下図3)。花は苞に腋生し、小さく、両性、雌しべとその背側 (背軸側) についた雄しべからなり、花被を欠く[4][5][2]。雄しべは白色や黄色、3個が基部で合着し (または1個が3裂し)、裂片は短く椀状になる種 (フタリシズカなど) と、裂片 (葯隔) が細長く伸びる種 (ヒトリシズカなど) がある[4][5][2] (下図3)。前者では、雄しべが子房上部を覆っている[4]。中央の裂片に葯 (半葯) が2個ある場合と、葯を欠く場合があり、左右の裂片には1個ずつ葯がある[4][5][2] (下図3a)。子房は1室、向軸側に1本の維管束が走り、直生胚珠が1個下垂しており、ふつう花柱を欠き、柱頭は切形[4][5] (下図3a)。果実は核果、球形から倒卵形、白色や淡緑色[4][5][2]。
分布
[編集]日本、韓国、中国東部、ロシア東部、東ヒマラヤ、バングラデシュ、東南アジア、ニューギニアに分布している[1]。
人間との関わり
[編集]チャラン属のチャランは、花や地下茎から精油を採取するために栽培されており、またお茶の香り付けなどに利用されることもある[4][6]。ヒトリシズカやキビヒトリシズカ、フタリシズカ、C. holostegius、C. multistachys などいくつかの種は、特に中国では生薬とされることがある[5][7][8]。ただし多くは有毒でもある[4]。またヒトリシズカやチャランなどは観賞用に栽培されることがある[9][10]。
分類
[編集]チャラン属 (ヒトリシズカ属ともよばれる[4]) はセンリョウ科に属する。センリョウ科の中では、小低木から多年草である点、両性花をもつ点でセンリョウ属と共通しており、系統的にも近縁であることが示されている[11]。
チャラン属内には、約15種が知られている[1] (下表1)。これらの種については、分子系統解析から下図4のような系統関係が推定されている (一部の種を含んでいない)[12]。このような系統関係は、雄しべの形態的多様性に対応したものであることが示されている。
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4. チャラン属の系統仮説の1例[12] (一部の種は含まれていない) |
表1. チャラン属の分類体系の1例[1][13]
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脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k “Chloranthus”. Plants of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年8月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 米倉浩司 (2015). “センリョウ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 52–53. ISBN 978-4582535310
- ^ 林 弥栄 & 門田 裕一 (監修) (2013). “ヒトリシズカ”. 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社. p. 22. ISBN 978-4635070195
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 大森雄治 (1999). “日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物”. 横須賀市博物館研究報告 自然科学 46: 9-21. NAID 40003710131.
- ^ a b c d e f g h i j Flora of China Editorial Committee (2008年). “Chloranthus”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月15日閲覧。
- ^ “Chloranthus spicatus”. Tropical Plants Database, Ken Fern. 2021年8月15日閲覧。
- ^ “はかなくも可憐な花「ヒトリシズカ」”. 養命酒製造株式会社 (2019年4月). 2021年8月14日閲覧。
- ^ 堀田清・野口由香里. “ヒトリシズカ”. 薬用植物園. 北海道医療大学. 2021年4月23日閲覧。
- ^ “ヒトリシズカ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2021年8月14日閲覧。
- ^ “チャラン”. 観葉植物の種類・育て方. 2021年8月15日閲覧。
- ^ Stevens, P. F. (2001 onwards). “Schisandraceae”. Angiosperm Phylogeny Website. Version 14, July 2017. 2021年8月7日閲覧。
- ^ a b Kong, H. Z., Chen, Z. D. & Lu, A. M. (2002). “Phylogeny of Chloranthus (Chloranthaceae) based on nuclear ribosomal ITS and plastid trnL‐F sequence data”. American Journal of Botany 89 (6): 940-946. doi:10.3732/ajb.89.6.940.
- ^ 米倉浩司・梶田忠. “植物和名ー学名インデックス YList”. 2021年8月15日閲覧。
外部リンク
[編集]- Flora of China Editorial Committee (2008年). “Chloranthus”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年8月15日閲覧。 (英語)
- “Chloranthus”. Plants of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年8月15日閲覧。 (英語)