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シュウ酸ジフェニル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シュウ酸ジフェニル
Skeletal formula of diphenyl oxalate
Ball-and-stick model of the diphenyl oxalate molecule{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 3155-16-6 チェック
PubChem 18475
ChemSpider 17449 ×
特性
化学式 C14H10O4
モル質量 242.227 g/mol
外観 固体
融点

136℃

熱化学
標準生成熱 ΔfHo 129·0 ± 0·8[1]
関連する物質
関連物質 シュウ酸ジメチル
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

シュウ酸ジフェニル(しゅうさんジフェニル、diphenyl oxalate)は、シュウ酸フェニル基が2つ結合した構造を持つ有機化合物である。ジエステルの一種。シュウ酸ジフェニルまたはその誘導体は、ケミカルライト(冷光)などの化学発光に使われる有名な化合物群である。

合成

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シュウ酸ジメチルフェノールを加えて加熱すると、エステル交換反応が起こりシュウ酸ジフェニルが生成する。通常はルイス酸などの触媒を加える[2]

H
3
COOC–COOCH
3
+ 2 C
6
H
5
OH → C
6
H
5
OOC–COOC
6
H
5
+ 2 CH
3
OH

化学発光の機構

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シュウ酸ジフェニルを使う化学発光の機構
シュウ酸ジフェニルを使う化学発光の機構

シュウ酸ジフェニルと蛍光色素 (dye) との混合物に過酸化水素(濃度約35%)が混ざると、シュウ酸ジフェニルが過酸化水素で酸化されながら分解し、2分子のフェノールと1分子の過シュウ酸エステル (ROOC-COOOH) が生じる。過シュウ酸エステルはさらに酸化を受けて 1,2-ジオキセタンジオン(図の四員環化合物)となる。1,2-ジオキセタンジオンは自発的に分解して2分子の二酸化炭素に変わるが、このときに蛍光色素にエネルギーを与えて励起させる[3]。励起された蛍光色素はエネルギーを光 () として放出しながら基底状態に戻る。この光の波長、すなわち目に見えるは蛍光色素の分子構造に依存する。例えば 9,10-ジフェニルアントラセンを添加しておくと青い光が、ルブレンを添加しておくと橙色の光が観測される。

関連項目

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参考文献

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  1. ^ Carson, A. S.; Fine, D. H.; Gray, P.; Laye, P. G. (1971). “Standard enthalpies of formation of diphenyl oxalate and benzoic anhydride and some related bond dissociation energies”. Journal of the Chemical Society B: Physical Organic: 1611. doi:10.1039/J29710001611. 
  2. ^ 例: Biradar, A. V.; Umbarkar, S. B.; Dongare, M. K. Appl. Catal., A: General 2005, 285, 190-195. DOI: 10.1016/j.apcata.2005.02.028
  3. ^ Rauhut, M. M. Acc. Chem. Res. 1969, 2, 80.