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グアリコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
グアリコ
生息年代: 中生代前期白亜紀, 125 Ma
骨格図
地質時代
前期白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
: グアリコ Gualicho
学名
Gualicho
Apesteguía et al.2016
タイプ種
G. shinyae
Apesteguía et al.2016

グアリコ (学名 Gualicho)は獣脚類恐竜の一つ。模式種グアリコ・シンヤエ(Gualicho shinyae)である。当時ゴンドワナ大陸の一部を形成していた、現在でいう北パタゴニアにあたる地域に生息していた。化石はウインクル層前期白亜紀セノマニアン期後期からチューロニアン期前期、約9300万年前前後)から知られる。

記載

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復元図
ヒトとのサイズ比較

有名なティラノサウルスのように、グアリコは二本指の退化した前肢を持っていた。この事は、グアリコがカルノサウルス類であるという事を前提として、ティラノサウルス類アベリサウルス類に起こった前肢の退化がカルノサウルス類においても同様に起こっていたことを意味する[1]

発見

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2007年2月、フィールド自然史博物館のプレパレーター、新谷明子はエゼキエル・ラモス・メシア・ダムの西、ビオランテサイトで新種の獣脚類の骨格を発見した。2016年、その標本はマコヴィッキーらによって命名・記載された。属名はマプチェ神話テュエルチェ文化における悪魔のような存在であるグアリチュを意味する。種小名は発見者、新谷への献名である[2]

ホロタイプ MPCN PV 0001 は、頭骨を欠く部分骨格で成る。それは四つの胴椎、三つの中部尾椎、肋骨、腹肋骨、左の肩甲骨、左前肢、右前腕、両方の恥骨の遠位端、右の大腿骨、左の大腿骨の遠位端、右の脛骨および腓骨の近位端、中足骨要素、三つの右足の末節骨で構成される。ほとんどの骨は発見された時、本来の解剖学的な位置のままだったが、大部分は風化によって破損していた[2]

グアリコは、胴椎の類似から同じくウインクル層のビオランテサイトから発見されたメガラプトラに属するアオニラプトルシノニムである事が示唆されている[3][4]。しかしながら、アオニラプトルは国際命名規約の要項を満たしていないため無効名である[5]

分類

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D左の指骨
生体復元図

グアリコの系統解析では、メガラプトラとネオヴェナトル類について二つの可能性が示唆されている。一つはそれらがカルカロドントサウルス科である可能性、もう一つはそれらがカルノサウルス類よりもコエルロサウルス類に近縁である可能性である[2]

以下のクラドグラムは2016年のマコヴィッキーらによる分析に基づく[2]

アロサウルス上科 

メトリアカントサウルス科

アロサウリア

アロサウルス科

カルカロドントサウリア

カルカロドントサウルス科

ネオヴェナトル類

デルタドロメウス

グアリコ

ネオヴェナトル

キランタイサウルス

メガラプトラ

以下のクラドグラムは2018年のポルフィリらによって発見された12の最も節約的な系統樹の厳密な平均結果に従う [6]。また、結果は異なるが、方法論の分析は、2016年の Apesteguiaらの分析と実質的に同一である。その分析でサンプリングされなかった2つのメガラプトラ、トラタイェニアムルスラプトルが組み込まれているという事のみが異なる[2]

鳥獣脚類

エオカルカリア

ネオヴェナトル

コンカヴェナトル

アクロカントサウルス

アロサウルス

シンラプトル

モノロフォサウルス

シャオキロン

カルカロドントサウルス

ティラノティタン

マプサウルス

ギガノトサウルス

コエルロサウルス類

グアリコ

キランタイサウルス

メガラプトラ

フクイラプトル

メガラプトル科

ムルスラプトル

トラタイェニア

メガラプトル

アエロステオン

アウストラロヴェナトル

オルコラプトル

ティラノラプトラ

Cau (2024)は獣脚類の類縁関係のレビューにおいて、グアリコをデルタドロメウスの姉妹群とし、両分類群をともにエラフロサウルス亜科英語版に配置した[7]

Calvo et al. (2025)はグアリコの上腕骨を成体のメガラプトルの標本を含む他のメガラプトル類のものと比較し、重大な形態学的差異があるため両分類群が近縁でないと結論した。またCalvo et al. (2025)はグアリコの上腕骨の形態がコエルロサウルス類の様々な分類群と数多くの類似性を共有していることを指摘し、特定の分岐群へ確証を持ってグアリコを分類できないとした[8]

参照

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  1. ^ Davis, Nicola (13 July 2016). “Meet Gualico shinyae, the puny armed distant relative of T-rex”. The Guardian. 13 July 2016閲覧。
  2. ^ a b c d e “An Unusual New Theropod with a Didactyl Manus from the Upper Cretaceous of Patagonia, Argentina”. PLOS One 11 (7): e0157793. (2016). Bibcode2016PLoSO..1157793A. doi:10.1371/journal.pone.0157793. PMC 4943716. PMID 27410683. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4943716/. 
  3. ^ Is Gualicho Aoniraptor?”. The Theropod Database Blog (2016年7月13日). 14 July 2016閲覧。
  4. ^ Nuovi resti di Aoniraptor? Ehm... Benvenuto Gualicho!”. Theropoda. 14 July 2016閲覧。
  5. ^ Mortimer, Michael. “Is Gualicho Aoniraptor?”. The Theropod Database Blog. 6 November 2019閲覧。
  6. ^ Porfiri, Juan D.; Juárez Valieri, Rubén D.; Santos, Domenica D.D.; Lamanna, Matthew C. (March 2018). “A new megaraptoran theropod dinosaur from the Upper Cretaceous Bajo de la Carpa Formation of northwestern Patagonia”. Cretaceous Research 89: 302–319. doi:10.1016/j.cretres.2018.03.014. 
  7. ^ Cau, Andrea (2024). “A Unified Framework for Predatory Dinosaur Macroevolution”. Bollettino della Società Paleontologica Italiana 63 (1): 1-19. doi:10.4435/BSPI.2024.08. https://www.paleoitalia.it/wp-content/uploads/2024/04/Cau_2024_BSPI_ONLINE.pdf. 
  8. ^ Calvo, J. O.; Porfiri, J. D.; Aranciaga Rolando, A. M.; Novas, F. E.; Dos Santos, D. D.; Wessel, D. E.; Lamanna, M. C. (2025). “Morphological and Phylogenetic Significance of the First Adult Humerus of the Patagonian Cretaceous Theropod Megaraptor namunhuaiquii Novas, 1998”. Annals of Carnegie Museum 90 (3): 161–181. doi:10.2992/007.090.0301.