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オルニトミモサウルス類

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オルニトミムス科から転送)
オルトミモサウルス類
Ornithomimosauria
生息年代: 140–65.5 Ma
[1]
地質時代
白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
階級なし : コエルロサウルス類 Coelurosauria
階級なし : 手盗形類 Maniraptoriformes
階級なし : オルトミモサウルス類 Ornithomimosauria
学名
Ornithomimosauria
Barsbold1976
下位分類
本文参照

オルニトミモサウルス類学名: Ornithomimosauria)もしくはオルニトミムス類は、マニラプトル形類に属する恐竜の一群である。ダチョウ恐竜とも呼ばれる[2]

概要

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白亜紀ローラシア大陸(現在のアジア、ヨーロッパ、北アメリカ)に生息していたコエルロサウルス類獣脚類恐竜の系統群の一つである。現在では一般に階級無しの系統群として扱われるが提案時は下目として設立され、現在でも日本語ではオルニトミモサウルス下目と表記される場合がある。現在の走鳥類に似た走行性英語版の体格を持つ。走行速度は種によっては最高時速は60-80kmに達したとの推定もある[3]。この分類群の原始的な属としてはンクウェバサウルスペレカニミムスシェンゾウサウルスヘクシング、およびおそらくデイノケイルスが含まれる。デイノケイルスは腕のみで2.4 mに達する。より進歩的なものはオルニトミムス科として分類され、分類群の命名もととなったオルニトミムス他、ガリミムスストルティオミムスが含まれる。ポール・セレノに代表される一部の研究者は鳥に似た奇妙な恐竜であるアルヴァレスサウルス科に近縁であるとし、両者でオルニトミムス形類を形成するとしている(分類節を参照)。

形態

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ストルティオミムスの復元図

オルトミモサウルス類の形態的特徴として小さくスレンダーな頭骨・大きな・長い首、腕・固まった尾・強靭な後肢等が挙げられる。腕と尾を除けば走鳥類と非常に似た体つきをしており実際に生態にも共通点があったと推測される。比較的原始的な属であるペレカニミムスハルピミムスには歯があったが、より進化的なオルニトミムス科の種では歯が無く、くちばし状の口器になっている。 オルニトミムスでは羽毛の化石が発見されており[4]、他のコエルロサウルス類同様に羽毛を持っていたと推定される。

生態

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大きな脳を持ち視覚もよかったとされる。 1997年には14体の シノルニトミムスSinornithomimus) の化石がまとまって発見された。そのうちの11体は幼体亜成体でありシノルニトミムスは群れで行動していたと考えられている[5]

オルトミモサウルス類の2種(ガルディミムスとオルニトミムス)と現生の鳥類や爬虫類との強膜輪の比較から周日行性英語版、つまり短い間隔で終日活動していたことが示唆される[6]

食性

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オルトミモサウルス類の食性についてははっきりとした結論は出ていない。

その歯の無いくちばし状の口器から進歩的なオルニトミムス科では雑食性であるとも考えられるが、ガリミムスオルニトミムスでは頭部化石の研究からくちばしに小さなスリットを多数持つことがわかっており、フラミンゴのような濾過食ではなかったかという説がある[7][8]。ただ水中の藍藻類や小動物だけでは、オルニトミムス上科の恐竜にとって十分な量を確保できなかったのではないかという反論もある(小型恐竜といってもそれらの水鳥よりははるかに大きかった)。 また胃石の化石や頭の真横に着いた眼、前述の細く長く物をフックのように引き寄せるのに使われたと思われる手などから植物食、または植物食の傾向が強い雑食だったというのが現在の主流である[9]

歯を持つ原始的なペレカニミムスでは主に小動物を捕食していたと考えられている[10]

生息地と起源

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現在のところ化石はかつてローラシア大陸であったヨーロッパ(ペレカニミムス)、アジア(ハルピミムス他)、北アメリカ(オルニトミムス、ストルティオミムス)から発見されている。かつてタンザニアで発見されたジュラ紀の属エラフロサウルス[11][12][13][14]オーストラリアティミムスTimimus[15]もこのグループに属するとされ、ゴンドワナ起源(あるいは分裂以前のパンゲア起源)と考えられたこともあった。しかし、現在では前者はケラトサウルス類[16][17]、後者はオルニトミモサウルス類以外のコエルロサウルス類(おそらくはティラノサウルス上科もしくはドロマエオサウルス科)に分類されている[18]。系統解析の結果ヨーロッパおよびアジアの属が基底的であり、オルニトミモサウルス類は東アジアもしくはヨーロッパの白亜紀前期バーレム期(1億3000万年前から1億2500万年前)に生じ、その後白亜紀後期以前に北アメリカに移住したと結論されている[19]。しかし、2012年の研究では白亜紀前期ヴァランジュ期に現在の南アフリカに生息したヌクウェバサウルスNqwebasaurus)がこのグループの基底に位置するとされ、初期には広範に生息していた可能性が指摘されている[20]

日本では白亜紀前期の化石が群馬県福井県で、白亜紀後期の化石が熊本県御船町で発見されている[21]。2023年、福井県立恐竜博物館は同県勝山市にある白亜紀前期の地層で発見された恐竜化石をオルニトミモサウルス類に属する新属新種と認め、「ティラノミムス・フクイエンシス」(福井産のティラノもどき)と命名した[22]

分類

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オルニトミムス科Ornithomimidae)は1890年に O.C.マーシュにより命名され、最初は「メガロサウルス下目」(ゴミ箱分類群であり、中型から大型の獣脚類が含まれた)に分類された。しかし、しだいに獣脚類の多様性が明らかになって行き、それぞれのより正しい類縁関係が明らかになって来るとこの科はコエルロサウルス下目へと移された。他の獣脚類と比較してオルニトミムス科の独自性が理解されて来たため、1976年にリンチェン・バルスボルドはこの科を独自の下目であるオルニトミモサウルス下目に分類した。1990年代以降分岐学的に定義されるようになるとオルニトミムス科およびオルトミモサウルス類の内容は論文の筆者ごとに様々に変化している。

1990年代前半にはトーマス・ホルツ英語版に代表される古生物学者によりアークトメタターサルな足を持つ獣脚類が近縁な関係にあるという分類が提案された。このグループは二足歩行の獣脚類であり、速く走るための適応として中足骨が「狭窄された」構造(アークトメタターサル)を持つ。Holtz (1994)での系統群アークトメタターサリアArctometatarsalia)の定義は 「アークトメタターサルな足を最初に発達させた獣脚類とその全ての子孫」とされた。そしてこのグループにはトロオドン科ティラノサウルス上科、オルニトミモサウルス類が含まれた。後にHoltz (1996, 2000)ではブランチベースの定義として「オルニトミムスおよび鳥類よりもオルニトミムスとより新しい共通の祖先を持つ全ての獣脚類」とされた。その後研究の結果ティラノサウルス上科やトロオドン科がオルトミモサウルス類よりも別のコエルロサウルス類に近縁であることが示されるようになると、ホルツを含むほとんどの古生物学者はアークトメタターサリアが自然な分類群であるという説を放棄した。アークトメタターサリアの厳密な定義はオルニトミムスに基づいており、オルニトミモサウルス類の広義の定義となる余分な名前となっている。そのため一般的にアークトメタターサリアという名は放棄されている。

2005年に古生物学者ポール・セレノは「イエスズメよりオルニトミムス・エドモントニクスにより近縁な全ての種」という定義に基づいて系統群オルニトミムス形類Ornithomimiformes)を提案した。セレノはオルニトミモサウルス類をより狭い意味として再定義したため、オルニトミモサウルス類と姉妹群であり元々はオルニトミモサウルス類に含まれていたアルヴァレスサウルス科を含む新たな系統群を表す用語を必要としたからである。しかし、この概念はセレノのウェブサイトでしか発表されておらず、公式に出版された正当な名ではない[23]。またこの「オルニトミムス形類」はホルツのアークトトメタターサリアとよく似た定義であり、内容が同じである。「オルニトミムス形類」の方が新しいグループであるが、アークトメタターサリアはホルツにより根本的に改変されているとして、セレノはその優先権を拒絶している[23]。その後の別の研究での系統解析ではアルヴァレスサウルス科はオルニトミモサウルス類よりむしろ鳥類に近縁であり、マニラプトラに含まれるとする結果も得られている[24]。2008年には、小林快次シノオルニトミムスなどを研究材料とした論文において、オルニトミモサウルス類とアルヴァレスサウルス科は、やはり多少なりとも分類の離れた存在であることが示されている[25]

近年の研究ではオルニトミモサウルス類の中で ペレカニミムスシェンゾウサウルスShenzhousaurus)、デイノケイルス科、ガルディミムス科、ハルピミムス科を比較的原始的なグループとしオルニトミムス科を適応の進んだグループとして分けている。さらにオルニトミムス科のなかでも北米型としてストルティオミムス、オルニトミムス、アジア型としてガリミムスアンセリミムスシノルニトミムスとしている。

分類

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系統

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Beishanlong grandisの復元図

オルニトミモサウルス類は鳥類よりオルニトミムスに近縁な全ての獣脚類からなるブランチベースのグループ、もしくはより限定的な意味のグループとして様々な使われ方をしている。包括的な定義が適応されるとアルヴァレスサウルス科がオルニトミモサウルス類に含まれる可能性があるため、より限定的な意味での使われ方が一般的になってきている。別の系統群としてセレノにより2005年にオルニトミムス形類が(Ornithomimus velox > Passer domesticus)として定義され、アルヴァレスサウルスよりオルニトミムスに近縁な恐竜として再定義されたオルニトミモサウルス類とともにアルヴァレスサウルス他のマニラプトラよりオルニトミムスに近縁であることが判明した恐竜を含む包括的な意味でのオルニトミモサウルス類と置き換えられた。グレゴリー・ポールはオルニトミモサウルス類が原始的で、飛べない鳥類であり、デイノニコサウルス類Deinonychosauria)やオヴィラプトロサウルス類より進歩的であるという説を提案している[26]

コエルロサウルス類内での位置については諸説あり、その一つWeishampel et al.2004に拠るクラドグラムを下記に示す[8]

ここに示すオルニトミモサウルス類内部のクラドグラムはTurner, Clarke, Ericson and Norell, 2007により得られたものである[27]。系統群の名前についてはSereno, 2005に拠る[28]

オルニトミモサウルス類

ペレカニミムス

unnamed

アーケオルニトミムス

シェンゾウサウルス

unnamed

ハルピミムス

unnamed

ガルディミムス

オルニトミムス科

ストルティオミムス

ガリミムス

unnamed

オルニトミムス

アンセリミムス

下記のクラドグラムはJin Liyong, Chen Jun and Pascal Godefroit (2012)の解析に拠るものである[29]

オルニトミモサウルス類

ペレカニミムス

unnamed

ヘクシング Hexing

シェンゾウサウルス

unnamed

ベイシャンロン Beishanlong

ハルピミムス

未命名の歯の無い系統群

ガルディミムス

オルニトミムス科

出典

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  1. ^ Holtz, Thomas R. Jr. (2012) Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages, Winter 2011 Appendix.
  2. ^ British Museum (Natural History): Ostrich Dinosaurs
  3. ^ Paul, regarding his comparative speed estimates, notes that "... just how swift is swift? In hard, precise measure, this can be a real can of worms; for just how fast living animals run is not well known." (Paul, G.S. 1988. Predatory Dinosaurs of the World. New York: Simon & Schuster.)
  4. ^ Zelenitsky, D. K.; Therrien, F.; Erickson, G. M.; Debuhr, C. L.; Kobayashi, Y.; Eberth, D. A.; Hadfield, F. (2012). “Feathered Non-Avian Dinosaurs from North America Provide Insight into Wing Origins”. Science 338 (6106): 510. doi:10.1126/science.1225376. 
  5. ^ Varricchio, D.J.; Sereno, P.C., Zhao X., Tan L., Wilson J.A. & Lyon, G.A. (2008). “Mud-trapped herd captures evidence of distinctive dinosaur sociality”. Acta Palaeontologica Polonica 53 (4): 567–578. doi:10.4202/app.2008.0402. 
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  7. ^ Norell, M.A., Makovicky, P.J., & Currie, P.J. 2001. The beaks of ostrich dinosaurs. Nature 412: 873-874.
  8. ^ a b Makovicky, P.J., Kobayashi, Y. & Currie, P.J. 2004. Ornithomimosauria. In D.B. Weishampel, P. Dodson & H. Osmólska (eds.), The Dinosauria, Second Edition. University of California Press, Berkeley/Los Angeles/London.: 137-150.
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  22. ^ 「ティラノもどき」見つけた 福井の羽毛恐竜化石、新種と認定”. 毎日新聞. 2023年9月8日閲覧。
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  24. ^ Senter, Phil (2007). “A NEW LOOK AT THE PHYLOGENY OF COELUROSAURIA (DINOSAURIA: THEROPODA)”. Journal of Systematic Palaeontology 5 (4): 429. doi:10.1017/S1477201907002143. 
  25. ^ Phylogenetic position of Ornithomimosauria in Coelurosauria with comments on the relationship of ornithomimosaurs and alvarezsaurids (Yoshitsugu Kobayashi:2008)
  26. ^ Paul, G.S. (2002). Dinosaurs of the Air: The Evolution and Loss of Flight in Dinosaurs and Birds. Baltimore: Johns Hopkins University Press 
  27. ^ Turner, A.H., Pol, D., Clarke, J.A., Erickson, G.M., and Norell, M. (2007). "Supporting online material for: A basal dromaeosaurid and size evolution preceding avian flight". Science, 317: 1378-1381. doi:10.1126/science.1144066 (supplement)
  28. ^ Sereno, P. C. 2005. Stem Archosauria—TaxonSearch [version 1.0, 2005 November 7]
  29. ^ Jin Liyong, Chen Jun and Pascal Godefroit (2012). "A New Basal Ornithomimosaur (Dinosauria: Theropoda) from the Early Cretaceous Yixian Formation, Northeast China". In Godefroit, P. (eds). Bernissart Dinosaurs and Early Cretaceous Terrestrial Ecosystems. Indiana University Press. pp. 467–487.