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LE-5

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
LE-5エンジン展示モデル

LE-5は、宇宙開発事業団(NASDA、現・宇宙航空研究開発機構(JAXA))が航空宇宙技術研究所(NAL)や三菱重工業(MHI)、石川島播磨重工業(現・IHI)と共同開発したロケットエンジンである。

概要

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液体酸素(LOX)と液体水素(LH2)を推進剤とした実用ロケットエンジンとしては日本初のものである。H-Iロケット(開発開始当初はN改良型2型ロケット)の第2段用エンジンとして1975年から開発が始められた。艤装と燃焼器の製造はMHI、ターボポンプガスジェネレータの製造はIHIがそれぞれ担当した。

開発にあたっては、NASDAやNALよりも基礎研究で先行していた東京大学宇宙航空研究所(後の宇宙科学研究所(ISAS))の7トン級LOX/LH2エンジンES-702[1]や10トン級LOX/LH2エンジンES-1001の成果をコンポーネントレベルでフィードバックしており、LE-5の開発に失敗した場合には10トン級エンジンをバックアップとして使用する予定であった[2]

軌道上での再着火を考慮して設計されており、H-Iロケットの運用において初めて軌道上再着火に成功した。以後再着火能力はLE-5Aにも引き継がれ、LE-5Bでは再々着火まで可能となっている。LE-5Aまでは、推力のスロットリング(推力調整)を行うことはできなかったが、LE-5Bからは、60%、30%、タービンを駆動させない3%のスロットリングができるようになった[3]

構造

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エンジンの燃焼サイクルはガスジェネレータサイクルを採用し、ガスジェネレータで発生させた混合比0.9の水素リッチな低温燃焼ガスを用いてターボポンプを駆動し、燃料を昇圧する。駆動に用いられた燃焼ガスはノズル下部から排出される。従来のガスジェネレータサイクルエンジンと異なり、始動時にはタービンスピナや高圧スタートタンク等のスタータを用いず、クーラントブリードサイクルで動作する。これはLE-5において世界で初めて採用された信頼性の高い始動方式である[4]。始動後の推力の立ち上がりが確認された後、ガスジェネレータサイクルへの切り替えが行われる。

燃焼室はテーパー状のニッケル管を多数並べ金ろう付けした管構造燃焼器であり、ニッケル管で構成された冷却ジャケット内に液体水素を流すことで再生冷却を行う[5]。また、その外側を金属板で補強することで耐圧性を確保している。

主要諸元

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LE-5ファミリー主要諸元一覧
  LE-5 LE-5A LE-5B
燃焼サイクル ガスジェネレータサイクル エキスパンダブリードサイクル
(ノズルエキスパンダ)
エキスパンダブリードサイクル
(チャンバエキスパンダ)
真空中推力 kN 102.9(10.5 tf) 121.5(12.4 tf) 137.2(14 tf)
混合比 5.5 5 5
膨張比 140 130 110
真空中比推力 s 450 452 447
燃焼圧力 MPa 3.65 3.98 3.58
LH2ターボポンプ回転数 min-1 50,000 51,000 52,000
LOXターボポンプ回転数 min-1 16,000 17,000 18,000
全長 m 2.68 2.69 2.79
質量 kg 255 248 285

備考

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1986年マクドネル・ダグラス社から購入の打診があったがLE-5での輸出契約は成立せず、すでに開発が開始されていたLE-5Aへと交渉は移行した。

出典

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  1. ^ 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所報告. 特集 6 液水/液酸ステージの開発 - 棚次亘弘,成尾芳博,丸田秀雄,秋葉鐐二郎,倉谷健治
  2. ^ 宇宙科学研究所報告 特集 第6号 液水/液酸エンジンの研究報告 液水/液酸エンジンの開発 - 棚次亘弘, 成尾芳博, 倉谷健治, 秋葉鐐二郎, 岩間彬
  3. ^ 三菱重工技報 Vol.48 No.4
  4. ^ 日本機械学會誌 第90巻 第822号 (2) 液酸・液水ロケットエンジン(LE-5)の開発 : 技術賞 - 十亀英司, 藤田敏彦, 上條謙次郎, 藤村 威明, 岡安彰
  5. ^ 日本機械学会誌 最近のロケットエンジン - 五代富文

関連項目

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外部リンク

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