電気事業法
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
電気事業法 | |
---|---|
日本の法令 | |
通称・略称 | 電事法 |
法令番号 | 昭和39年法律第170号 |
種類 | 経済法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 1964年6月25日 |
公布 | 1964年7月11日 |
施行 | 1965年7月1日 |
所管 |
(逓信省→) (電気庁→) (軍需省→) (商工省→) (資源庁→) (通商産業省→) (資源エネルギー庁→) (原子力安全・保安院→) 経済産業省 [電力局→公益事業局→産業政策局/地方通産局→商務情報政策局/地方経済産業局] 資源エネルギー庁 [公益事業部→電力・ガス事業部] |
主な内容 | 電気事業等について |
関連法令 |
電気工事士法 電気工事業の業務の適正化に関する法律 電気用品安全法 有線電気通信法 電気通信事業法 電波法 鉄道事業法 ガス事業法 など |
条文リンク | 電気事業法 - e-Gov法令検索 |
ウィキソース原文 |
電気事業法(でんきじぎょうほう、昭和39年法律第170号)は、1964年に制定された「電気事業および電気工作物の保安の確保」について定められている日本の法律である。
これに電気用品安全法、電気工事士法、電気工事業の業務の適正化に関する法律(略称:電気工事業法)を加え、慣例的に電気保安四法(でんきほあんよんほう)と呼ぶ。監督官庁は経済産業省商務情報政策局電力安全課および資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力基盤整備課である[1][2]。
沿革
[編集]明治24年(1891年)1月20日夜の仮議事堂の焼失[注釈 1]により電気事業における保安管理の必要性が認識されるようになってきた。しかし、明治26年(1893年)までは逓信省が管轄し[注釈 2]、実務は警察に担わせるという体制であった。
- 明治24年(1891年) 7月27日 (明治天皇の名による)勅令第95号「逓信省官制」[3](電気事業の監督を逓信大臣に下命)
- 明治24年(1891年) 8月17日 逓信省訓令第7号「電気事業営業者取締法」(上記官制により警視庁・北海道庁・府県に電気事業取締方法の制定を指示)
- 明治24年(1891年)12月28日 警察令第23号「電気営業取締規則」(警視庁制定:上記訓令に応じた代表的なもの)
- 明治26年(1893年)10月11日 逓信省訓令第3号(統一的管理とするため逓信省を監督官庁とした)
- 明治29年(1896年) 5月 9日 逓信令第5号「電気事業取締規則」(電気事業の・感電事故や火災の増加に鑑み欧米の規則を参考に日本で初めて制定)
- 明治44年(1911年) 3月29日 法律第55号「電気事業法」(いわゆる旧電気事業法の最初のもの)。3月30日公布、10月1日施行。
- 明治44年(1911年)に発布された「電気事業法」及び関連法規は省令でなく、法律として電気事業の保護助長、公益的監督、保安監督について規定しており、これらが現在の電気法規の基となった[4]。主要なものを列挙する。
- 明治44年(1911年) 9月 5日 逓信省令第25号「電気事業法施行規則」(電気工作物の保安監督について規定)
- 明治44年(1911年) 9月 5日 逓信省令第26号「電気工事規程」
- 明治44年(1911年) 9月 5日 逓信省令第27号「電気事業主任技術者資格検定規則」
- 明治44年(1911年) 9月28日 逓信省令第31号「自家用電気工作物施設規則」(現今の技術基準に相当)
- 明治44年(1911年) 9月28日 逓信省令第32号「電気事業法施行規則第六十五條ニ依ル電気事故届出規程」
- 明治44年(1911年)12月21日 逓信省令第55号「特別高圧電線路取締規則」
- 明治44年(1911年)に発布された「電気事業法」及び関連法規は省令でなく、法律として電気事業の保護助長、公益的監督、保安監督について規定しており、これらが現在の電気法規の基となった[4]。主要なものを列挙する。
旧電気事業法は数度の改正を経た(1927年3月31日公布、9月1日施行、監督を強化し、社債発行限度を拡張。1931年4月2日公布、1932年12月1日施行、電力業の国家統制を強化)後、昭和13年(1938年)の第73帝国議会において、日本発送電株式会社法の成立などと合わせて改正され、電力の国家管理体制が確立した。終戦後の昭和25年(1950年)、電気事業再編成令および公益事業令の公布に伴い、旧電気事業法は廃止された[5]。
その後、通商産業省に設置された「電気事業審議会」の答申を受け、昭和39年(1964年)3月に電気事業法が閣議決定、同年の第46国会にて7月11日に成立、同日施行された[6]。
1990年代に入り、競争原理の導入による経営効率化の促進や、電気料金内外価格差の是正を目的として段階的に規制緩和が行われた[7][8][9][10]。
- 1995年 31年ぶりとなる電気事業法改正。発電部門への新規参入の拡大、料金制度の改善等
- 2000年 電力小売部門における一部自由化開始、料金規制の見直し等
- 2003年 小売自由化範囲の拡大、振替料金制度の廃止、送配電等業務支援機関および卸電力取引市場の創設等(2005年施行)
2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故に起因する計画停電や電気料金の値上げを受け、「安定供給の確保」「電気料金の最大限抑制」「需要家の選択肢や事業者の事業機会拡大」を目的として、2013年4月2日に「電力システムに関する改革方針」が閣議決定された[11]。同決定において、①広域系統運用の拡大、②小売及び発電の全面自由化、③法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保という3段階からなる改革の全体像が示され、第1弾、第2弾、第3弾の実施に必要な措置を定めた電気事業法改正案が、それぞれ、第185回臨時国会(2013年)、第186回通常国会(2014年)、第189回通常国会(2015年)において成立した[12][10]。
- 2013年11月 広域的運営推進機関の設置等(2015年4月施行)[13]
- 2014年6月 電力小売全面自由化等(2016年4月施行)[14]
- 2015年6月 送配電部門の法的分離の実施、小売電気料金の規制の撤廃等(2020年4月施行予定)[15]
2020年には、自然災害の頻発等を踏まえ、災害時の連携強化、送配電網の強靭化、分散型電力システムの導入を目的とする改正が行われた。[16]
構成
[編集]- 第1章 - 総則(第1条 - 第2条)
- 第2章 - 電気事業(第2条の2 - 第37条の2)
- 第3章 - 電気工作物(第38条 - 第57条の2)
- 第4章 - 土地等の使用(第58条 - 第66条)
- 第5章 - 電力・ガス取引監視等委員会(第66条の2 - 第66条の17)
- 第6章 - 登録安全管理審査機関、指定試験機関及び登録調査機関(第67条 - 第96条)
- 第7章 - 卸電力取引所(第97条 - 第99条の14)
- 第8章 - 雑則(第100条 - 第114条の2)
- 第9章 - 罰則(第115条 - 第123条)
- 附則
技術基準を定める省令
[編集]電気事業法第39条・第56条に基づいて以下の技術基準及びそれぞれ解釈が定められている。
- 発電用太陽電池設備の技術基準を定める省令制定[17]
- 電気設備に関する技術基準を定める省令[18]
- 発電用水力設備の技術基準を定める省令[19]
- 発電用火力設備の技術基準を定める省令[20]
- 発電用原子力設備の技術基準を定める命令[21]
- 発電用風力設備に関する技術基準を定める省令[22]
資格者の選任
[編集]事業用電気工作物を設置する者は、その事業用電気工作物の工事、維持および運用のための保安の監督をさせるため、電気工作物の種類に応じ、次の主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、事業所ごとに主任技術者を選任しなければならない。[23]
- 電気主任技術者(第1種 - 第3種)
- ダム水路主任技術者(第1種、第2種)
- ボイラー・タービン主任技術者(第1種、第2種)
なお経済産業省は2015年(平成27年)、主任技術者制度の解釈及び運用(内規)[24]を定め、上記規定[23]の緩和を行っている。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “関係法令一覧 (METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2019年12月13日閲覧。
- ^ 平成29年度「歴史公文書等の所在把握を目的とした調査・検討」報告書 - 国立公文書館Webサイト。
- ^ 『逓信省職員録. 明治29年7月現在』近代デジタルライブラリー
- ^ 日本電気協会発行『電気規則集』(第二版)明治44年11月 国会図書館デジタルコレクション
- ^ 電気事業講座4 電気事業関係法令. エネルギーフォーラム. (2008年3月29日). p. 27
- ^ 電気事業講座4 電気事業関係法令. エネルギーフォーラム. (2008年3月29日). p. 35
- ^ “電気事業制度の概要|電気事業制度について|資源エネルギー庁”. www.enecho.meti.go.jp. 2020年2月1日閲覧。
- ^ “第4次電気事業制度改革について” (pdf). 日本エネルギー経済研究所 (2008年). 2020年2月1日閲覧。
- ^ “エネルギー白書2010-第3部 平成21年度においてエネルギーの需給に関して講じた施策の概況 第7章 電気事業制度・ガス事業制度のあり方 第1節 電気事業制度”. www.enecho.meti.go.jp. 経済産業省資源エネルギー庁. 2020年2月1日閲覧。
- ^ a b “電気事業便覧2017年版” (pdf). 経済産業省資源エネルギー庁. pp. 269-271 (2018年3月30日). 2020年2月1日閲覧。
- ^ “「電力システムに関する改革方針」(平成25年4月2日閣議決定)について|電力システム改革について|資源エネルギー庁”. www.enecho.meti.go.jp. 2020年2月1日閲覧。
- ^ “電力システム改革について|電気事業制度について|資源エネルギー庁”. www.enecho.meti.go.jp. 2020年2月1日閲覧。
- ^ “「電気事業法の一部を改正する法律」(平成25年11月13日成立)について|電力システム改革について|資源エネルギー庁”. www.enecho.meti.go.jp. 2020年2月1日閲覧。
- ^ “「電気事業法等の一部を改正する法律」(第2弾改正)(平成26年6月11日成立)について|電力システム改革について|資源エネルギー庁”. www.enecho.meti.go.jp. 2020年2月1日閲覧。
- ^ “「電気事業法等の一部を改正する等の法律」(平成27年6月17日成立)について|電力システム改革について|資源エネルギー庁”. www.enecho.meti.go.jp. 2020年2月1日閲覧。
- ^ “「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました (METI/経済産業省)”. www.meti.go.jp. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “日本法令索引”. hourei.ndl.go.jp. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “日本法令索引”. hourei.ndl.go.jp. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “日本法令索引”. hourei.ndl.go.jp. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “日本法令索引”. hourei.ndl.go.jp. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “日本法令索引”. hourei.ndl.go.jp. 2021年9月19日閲覧。
- ^ “日本法令索引”. hourei.ndl.go.jp. 2021年9月19日閲覧。
- ^ a b 電気事業法(昭和39年法律第170号。以下「法」という。)第43条第1項の選任、法第43条第2項の許可、1995年制定の電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号。以下「規則」という。)第52条第1項の表第6号に掲げる事業場又は設備に行う主任技術者の選任、規則第52条第2項の承認及び規則第52条第3項ただし書による。
- ^ 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)の一部改正について(2015年4月23日 経済産業省)
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 電気事業法(e-Gov法令検索)
- 電気事業制度の概要-関係法令・ガイドライン等 - 資源エネルギー庁
- 電力の安全-法令 - 経済産業省
- 『電気事業法』 - コトバンク