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酸化セリウム(III)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
酸化セリウム(III)
識別情報
CAS登録番号 1345-13-7 チェック
PubChem 9905479
ChemSpider 8081132
UNII 82Q2098IFG
EC番号 234-374-3
特性
化学式 Ce2O3
モル質量 328.24 g/mol
外観 黄緑色のちり[要出典]
密度 6.2 g/cm3
融点

2177 °C, 2450 K, 3951 °F

沸点

3730 °C, 4003 K, 6746 °F

への溶解度 不溶
硫酸への溶解度 可溶
塩酸への溶解度 不溶
構造
結晶構造 六角形、hP5
空間群 P3m1, No. 164
危険性
GHSピクトグラム 急性毒性(低毒性)水生環境への有害性
関連する物質
その他の陰イオン 塩化セリウム(III)
その他の陽イオン 酸化ランタン(III)酸化プラセオジム(III)
関連物質 CeO2
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

酸化セリウム(III)希土類金属であるセリウムの酸化物。化学式はCe2O3で黄金色をしている。

用途

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エンジンと排ガス触媒

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自動車からの排ガス中のCO排出を最小限に抑えるための触媒コンバーターとして使用される。

酸素が不足すると酸化セリウム(IV)一酸化炭素により酸化セリウム(III)に還元される。

2 CeO2 + CO → Ce2O3 + CO2

酸素が過剰になると過程が逆になり酸化セリウム(III)が酸化セリウム(IV)に酸化される。

2 Ce2O3 + O2 → 4 CeO2

酸化セリウム(III)の自動車での主要な用途はCO及びNOxの排ガスを酸化するための触媒コンバーターであり[1]、第2にディーゼル燃料の燃料添加物としての用途が見出される。添加の結果燃料効率が向上し、炭化水素に由来する粒子状物質の排出量が減少する[2]。しかし酸化セリウムを含むエンジンの排ガスの健康に対する影響は研究と論争の対象になっている[3][4]

水分解

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酸化セリウム(IV)–酸化セリウム(III)サイクルまたはCeO2/Ce2O3サイクルは水素製造用の酸化セリウム(IV)と酸化セリウム(III)に基づく2段階の熱化学水分解過程である[5]

フォトルミネセンス

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酸化セリウム(III)と酸化スズ(II)(SnO)をセラミック固化し組み合わせたものはUV光の照射に使用される。これは320nmの波長の光を吸収し、412nmの波長の光を放出する[6]。この酸化セリウム(III)と酸化スズ(II)の組み合わせは珍しく、実験室規模では得るのに困難を伴う[要出典]

製造

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約1,400 °C (2,550 °F)で水素による酸化セリウム(IV)の還元により生成される。この方法で生成された試料は室温でゆっくり空気酸化されて二酸化物に戻る[7]

脚注

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  1. ^ Bleiwas, D.I. (2013). Potential for Recovery of Cerium Contained in Automotive Catalytic Converters. Reston, Va.: U.S. Department of the Interior, U.S. Geological Survey.
  2. ^ ディーゼル微粒子およびNOx同時低減触媒を装着した乗用車の排気ガスに関する研究(第2報)”. 石井素,鈴木央一,遠藤雄一,小高松男. 2021年12月13日閲覧。
  3. ^ Nanoparticles used as additives in diesel fuels can travel from lungs to liver, November 18, 2011. Marshall University Research Corporation”. 2020年6月閲覧。
  4. ^ Park, B.; Donaldson, K.; Duffin, R.; Tran, L.; Kelly, F.; Mudway, I.; Morin, J. P.; Guest, R. et al. (Apr 2008). “Hazard and risk assessment of a nanoparticulate cerium oxide-based diesel fuel additive - a case study.”. Inhal Toxicol 20 (6): 547–66. doi:10.1080/08958370801915309. PMID 18444008. 
  5. ^ Hydrogen production from solar thermochemical water splitting cycles Archived August 30, 2009, at the Wayback Machine.
  6. ^ Peplinski, D.R.; Wozniak, W. T.; Moser, J. B. (1980). “Spectral Studies of New Luminophors for Dental Porcelain”. Journal of Dental Research 59 (9): 1501–1509. doi:10.1177/00220345800590090801. PMID 6931128. 
  7. ^ Y. Wetzel (1963). “Scandium, Yttrium, Rare Earths”. In G. Brauer. Handbook of Preparative Inorganic Chemistry, 2nd Ed.. 1. NY,NY: Academic Press. pp. 1151 

外部リンク

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