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過レニウム酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
過レニウム酸
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識別情報
CAS登録番号 13768-11-1
ChemSpider 21106462 チェック
RTECS番号 TT4550000
特性
化学式 H4O9Re2(固体)
HReO4(気体)
モル質量 251.2055 g/mol
外観 淡黄色固体
密度 ?
融点

? °C (? K)

沸点

昇華

への溶解度 可溶
酸解離定数 pKa -1.25[1]
構造
配位構造 八面体形-四面体形(固体)
四面体形(気体)
危険性
GHSピクトグラム
EU分類 腐食性 C
主な危険性 腐食性 (C)
経口摂取での危険性 あり。
呼吸器への危険性 あり。
への危険性 あり。
皮膚への危険性 あり。
NFPA 704
0
3
0
Rフレーズ R34
Sフレーズ S26 S36/37 S39 S45
引火点 不燃性
関連する物質
関連物質 Re2O7
Mn2O7
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

過レニウム酸(かレニウムさん、: perrhenic acid)は、化学式が Re2O7(OH2)2 と表されるレニウム化合物である。酸化レニウム(VII) Re2O7水溶液を蒸発させることで得られる。慣例的に過レニウム酸は HReO4 の化学式をもつとされる。この化学種は、水あるいは蒸気中で酸化レニウム(VII)を昇華させることで生じる[2]。Re2O7 の溶液を数か月放置すると、分解して HReO4•H2O の結晶が生じる。これは四面体形の ReO4- を含む[3]。ほとんどの用途においては、過レニウム酸と酸化レニウム(VII)は相互に使用される。

性質

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固体の過レニウム酸の構造は と表される[4]。この化学種は、配位子とする金属酸化物のまれな例である。ほとんどの金属-オキソ-アクア種は対応する水酸化物に対して不安定である。

気体の過レニウム酸は、HReO4 という化学式が示唆するように四面体形である。

濃厚水溶液中では三塩基酸であるメソ過レニウム酸(H3ReO5)を生成するとされているが、これは単離されていない。過レニウム酸の濃厚水溶液の当量導電率の低下は、この弱酸であるメソ過レニウム酸の生成が原因と推定される[5]

過マンガン酸イオンとは異なり、水溶液中では安定で、酸化剤としての作用は弱く、過テクネチウム酸イオンに類似する。アルカリ性水溶液中では安定、HClHBrHI水溶液中では還元される[6]

水溶液中における過レニウム酸イオンの標準酸化還元電位は以下の通りである[7]

反応

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過レニウム酸または無水酸化レニウム(VII)を硫化水素で処理すると硫化レニウム(VII)が得られる。

複雑な構造を有し[8]二重結合水素化触媒する硫化レニウム(VII)は、貴金属触媒毒となる硫黄化合物に耐性があるため有用である。Re2S7 はまた亜酸化窒素還元を触媒する。

HCl 下の過レニウム酸はチオエーテルおよび三級ホスフィンによって Re(V) に還元され、ReOCl3L2 を与える[9]

白金に担持された過レニウム酸は、石油産業において有用な水素化触媒および接触水素化分解触媒となる[10]。例えば、過レニウム酸の溶液を染み込ませたシリカは500 °C水素還元される[要出典]。この触媒はアルコール脱水素化や、アンモニアの分解促進に用いられる。

触媒作用

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過レニウム酸は多くの均一触媒の前駆体であり、その一部はレニウムの高いコストに値するニッチな用途に有望視されている。また、アミドおよびオキシムニトリルへの脱水を触媒する[11]

三級アルシンと結合した過レニウム酸は、過酸化水素によるアルケンエポキシ化触媒を与える[12]

他の利用

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過レニウム酸はX線ターゲットの製造に用いられる。

出典

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  1. ^ http://www.iupac.org/publications/pac/1998/pdf/7002x0355.pdf
  2. ^ Glemser, O.; Müller, A.; Schwarzkopf, H. (1964). “Gasförmige Hydroxide. IX. Über ein Gasförmiges Hydroxid des Rheniums”. Zeitschrift für anorganische und allgemeine Chemie 334: 21–26. doi:10.1002/zaac.19643340105. .
  3. ^ グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン英語版. ISBN 978-0-08-037941-8
  4. ^ Beyer, H.; Glemser, O.; Krebs, B. “Dirhenium Dihydratoheptoxide Re2O7(OH2)2 - New Type of Water Bonding in an Aquoxide” Angewandte Chemie, International Edition English 1968, Volume 7, Pages 295 - 296. doi:10.1002/anie.196802951.
  5. ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  6. ^ F.A. コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
  7. ^ Allen J. Bard, Roger Parsons, Joseph Jordan, Standard Potentials in Aqueous Solution, Marcel Dekker Inc (1985).
  8. ^ Schwarz, D. E.; Frenkel, A. I.; Nuzzo, R. G.; Rauchfuss, T. B.; Vairavamurthy, A. (2004). “Electrosynthesis of ReS4. XAS Analysis of ReS2, Re2S7, and ReS4”. Chemistry of Materials 16: 151–158. doi:10.1021/cm034467v. 
  9. ^ Parshall, G. W.; Shive, L. W.; Cotton, F. A. (1997). “Phosphine Complexes of Rhenium”. Inorganic Syntheses 17: 110–112. doi:10.1002/9780470132487.ch31. 
  10. ^ Holleman, A. F.; Wiberg, E. "Inorganic Chemistry" Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.
  11. ^ Ishihara, K.; Furuya, Y.; Yamamoto, H. (2002). “Rhenium(VII) Oxo Complexes as Extremely Active Catalysts in the Dehydration of Primary Amides and Aldoximes to Nitriles”. Angewandte Chemie, International Edition 41 (16): 2983–2986. doi:10.1002/1521-3773(20020816)41:16<2983::AID-ANIE2983>3.0.CO;2-X. 
  12. ^ van Vliet, M. C. A.; Arends, I. W. C. E.; Sheldon, R. A. (1999). “Rhenium Catalysed Epoxidations with Hydrogen Peroxide: Tertiary Arsines as Effective Cocatalysts”. J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 (3): 377–80. doi:10.1039/a907975k. 

関連項目

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