男子100メートル競走世界記録の推移
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手動計時
[編集]1912年のストックホルムオリンピックの男子100m予選において、ドナルド・リッピンコット(アメリカ)が記録した10秒6[1]が国際陸連が初めて公認した世界記録である。その後、1929年頃には、1⁄10秒刻みのストップウォッチを3人の計測員が使用するといった手動計時の細かなルール[2]が定められ、それが運用されていった。
ここでは、国際陸連によって手動計時が公認されていた1912年から1976年までの世界記録の推移を示す。
記録 | 風速 | 名前 | 国籍 | 日付 | 備考[3] |
---|---|---|---|---|---|
10秒6 | ドナルド・リッピンコット | アメリカ合衆国 | 1912年7月6日 | OR | |
ジャクソン・ショルツ | アメリカ合衆国 | 1920年9月16日 | |||
10秒4 | チャールズ・パドック | アメリカ合衆国 | 1921年8月23日 | ||
0.0㎧ | エディ・トーラン | アメリカ合衆国 | 1929年8月8日 | ||
エディ・トーラン | アメリカ合衆国 | 1929年8月25日 | |||
10秒3 | パーシー・ウィリアムズ | カナダ | 1930年8月9日 | ||
+0.4㎧ | エディ・トーラン | アメリカ合衆国 | 1932年8月1日 | 電動10秒38 | |
ラルフ・メトカーフ | アメリカ合衆国 | 1933年8月12日 | |||
ユーロス・ピーコック | アメリカ合衆国 | 1934年8月6日 | |||
クリス・ベルガー | オランダ | 1934年8月6日 | |||
ラルフ・メトカーフ | アメリカ合衆国 | 1934年9月15日 | |||
+2.0㎧ | ラルフ・メトカーフ | アメリカ合衆国 | 1934年9月23日 | ||
+2.5㎧ | 吉岡隆徳 | 日本 | 1935年6月15日 | [4] | |
10秒2 | +1.2㎧ | ジェシー・オーエンス | アメリカ合衆国 | 1936年6月20日 | |
-0.9㎧ | ハロルド・デービス | アメリカ合衆国 | 1941年6月6日 | ||
+0.7㎧ | ロイド・ラビーチ | パナマ | 1948年5月15日 | ||
バーニー・ユーウェル | アメリカ合衆国 | 1948年7月9日 | 電動10秒35 | ||
0.0㎧ | エマニュエル・マクドナルド=ベイリー | イギリス | 1951年8月25日 | ||
+1.1㎧ | ハインツ・フュッテラー | 西ドイツ | 1954年10月31日 | ||
+0.9㎧ | ボビー・モロー | アメリカ合衆国 | 1956年5月19日 | ||
-1.0㎧ | アイラ・マーチソン | アメリカ合衆国 | 1956年6月1日 | ||
0.0㎧ | ボビー・モロー | アメリカ合衆国 | 1956年6月22日 | ||
-1.3㎧ | アイラ・マーチソン | アメリカ合衆国 | 1956年6月29日 | ||
-0.3㎧ | ボビー・モロー | アメリカ合衆国 | 1956年6月29日 | ||
10秒1 | +0.7㎧ | ウィリー・ウィリアムズ | アメリカ合衆国 | 1956年8月3日 | |
+1.0㎧ | アイラ・マーチソン | アメリカ合衆国 | 1956年8月4日 | ||
+1.5㎧ | リーモン・キング | アメリカ合衆国 | 1956年10月20日 | ||
+0.9㎧ | リーモン・キング | アメリカ合衆国 | 1956年10月27日 | ||
+1.3㎧ | レイ・ノートン | アメリカ合衆国 | 1959年4月18日 | ||
10秒0 | +0.9㎧ | アルミン・ハリー | 西ドイツ | 1960年6月21日 | 電動10秒25 |
-0.9㎧ | ハリー・ジェローム | カナダ | 1960年7月15日 | ||
0.0㎧ | オラシオ・エステベス | ベネズエラ | 1964年8月15日 | ||
+1.3㎧ | ボブ・ヘイズ | アメリカ合衆国 | 1964年10月15日 | 電動10秒06 | |
+2.0㎧ | ジム・ハインズ | アメリカ合衆国 | 1967年5月27日 | 電動10秒17 | |
+1.8㎧ | エンリケ・フィゲロラ | キューバ | 1967年6月17日 | ||
0.0㎧ | ポール・ナッシュ | 南アフリカ共和国 | 1968年4月2日 | A | |
+1.1㎧ | オリバー・フォード | アメリカ合衆国 | 1968年5月31日 | A | |
+2.0㎧ | チャールズ・エドワード・グリーン | アメリカ合衆国 | 1968年6月20日 | 電動10秒20 | |
+2.0㎧ | ロジェ・バンビュク | フランス | 1968年6月20日 | 電動10秒28 | |
9秒9 | +0.8㎧ | ジム・ハインズ | アメリカ合衆国 | 1968年6月20日 | 電動10秒03 |
+0.9㎧ | ロニー・レイ・スミス | アメリカ合衆国 | 1968年6月20日 | 電動10秒14 | |
+0.9㎧ | チャールズ・エドワード・グリーン | アメリカ合衆国 | 1968年6月20日 | 電動10秒10 | |
+0.3㎧ | ジム・ハインズ | アメリカ合衆国 | 1968年10月14日 | OR,A,電動9秒95 | |
0.0㎧ | エディ・ハート | アメリカ合衆国 | 1972年7月1日 | ||
0.0㎧ | レイ・ロビンソン | アメリカ合衆国 | 1972年7月1日 | ||
+1.3㎧ | スティーブ・ウィリアムズ | アメリカ合衆国 | 1974年6月21日 | ||
+1.1㎧ | シルビオ・レオナルド | キューバ | 1975年6月5日 | ||
0.0㎧ | スティーブ・ウィリアムズ | アメリカ合衆国 | 1975年7月16日 | ||
-0.2㎧ | スティーブ・ウィリアムズ | アメリカ合衆国 | 1975年8月22日 | ||
+0.7㎧ | スティーブ・ウィリアムズ | アメリカ合衆国 | 1976年3月27日 | ||
+0.7㎧ | ハーヴェイ・グランス | アメリカ合衆国 | 1976年4月3日 | ||
ハーヴェイ・グランス | アメリカ合衆国 | 1976年5月1日 | |||
+1.7㎧ | ドン・クォーリー | ジャマイカ | 1976年5月22日 |
電動計時
[編集]世界的に100mの電動計時が始まったのは、1964年の東京オリンピックからである。当初は手動計時と電動計時とが併用され、両方の記録が公認されていたが、電動計時が普及したことにより、1977年1月より、国際陸連は電動計時による記録のみを公認するようになった。
ここでは、1977年以降の男子100mの世界記録の推移を示す。なお、1976年以前の電動計時による世界記録は、1968年のメキシコシティオリンピック男子100m決勝でジム・ハインズ(アメリカ)が記録した9秒95である。
記録 | 風速 | 名前 | 国籍 | 日付 | 備考[3] |
---|---|---|---|---|---|
9秒93 | +1.4㎧ | カルヴィン・スミス | アメリカ合衆国 | 1983年7月3日 | A |
9秒92 | +1.1㎧ | カール・ルイス | 1988年9月24日 | OR[5] | |
9秒90 | +1.9㎧ | リロイ・バレル | 1991年6月14日 | ||
9秒86 | +1.2㎧ | カール・ルイス | 1991年8月25日 | ||
9秒85 | +1.2㎧ | リロイ・バレル | 1994年7月6日 | ||
9秒84 | +0.7㎧ | ドノバン・ベイリー | カナダ | 1996年7月27日 | OR |
9秒79 | +0.1㎧ | モーリス・グリーン | アメリカ合衆国 | 1999年6月16日 | |
9秒77 | +1.6㎧ | アサファ・パウエル | ジャマイカ | 2005年6月14日 | |
+1.5㎧ | 2006年6月11日 | ||||
+1.0㎧ | 2006年8月18日 | ||||
9秒74 | +1.7㎧ | 2007年9月9日 | |||
9秒72 | +1.7㎧ | ウサイン・ボルト | 2008年5月31日 | ||
9秒69 | 0.0㎧ | 2008年8月16日 | OR | ||
9秒58 | +0.9㎧ | 2009年8月16日 |
脚注
[編集]- ^ 当時のストップウォッチは1⁄5秒刻みであったため、「10秒3⁄5」とも書かれる。
- ^ 計測員のうち2人以上のタイムが一致すればそれを、3人とも異なれば真ん中のタイムを公式記録とする、といった方法を採っていた。
- ^ a b 「OR」はオリンピック記録、「A」は高所(海抜1000m以上)記録。
- ^ 「追い風+2.0㎧までを公認とする」という追い風参考記録に関する規則は、1936年に施行されたため、それ以前の吉岡の記録が公認されている。なお、吉岡は1935年6月9日にも10秒3を記録しているが、これは4個のストップウォッチを用いて計測されたため、日本陸連は公認としたが、国際陸連は公認しなかった。
- ^ ソウルオリンピック後も、ベン・ジョンソンの9秒83(1987年)が世界記録とされていたが、この記録も後に抹消され、ルイスの記録は1990年1月に世界記録として公認された。なお、これ以前にルイスは9秒93を2回記録しているが、世界記録公認の手続きが行われなかったため、これらの記録は世界タイ記録としては扱われない。
出典
[編集]- 小川勝 『10秒の壁 ―「人類最速」をめぐる百年の物語』 集英社〈集英社新書〉、2008年 ISBN 978-4-08-720447-6
- 12th IAAF World Championships In Athletics: IAAF Statistics Handbook. Berlin 2009. pp. 202-203 (PDF)