氷流
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氷流(ひょうりゅう、英: Ice stream)は、氷河のとる形態であり、氷床の中で周囲の氷より流れの速い部分のことをいう[2][3][4]。南極にある氷の10 %を占めており、南極が持つ大きな特徴となっている。その規模は、最大で幅50 km、厚さ2 km、長さ数百kmになる。また、一般的に氷床から分離する氷はこの形態を取る[5][6]。
氷流の流動速度は年間で1000 mを超えることがあり、これは周囲の氷の流動速度より1桁以上大きい[3][7]。氷流の端で発生する剪断応力によって氷が変形し、氷に対する再結晶化が発生することによって流動性が大きくなり、剪断の発生している狭い範囲に変形が集中する。クレバスは、特にこうした場所に形成されやすい[5][8]。
一般的に、氷流の底面には水が存在しており、流動速度を大きくする要因となっている。基盤地形もまた大きな影響を与えており、氷流が硬い基盤岩の上にあるより、軟らかく変形しやすい堆積物の上にある方が流動速度が大きくなることがある[5][9]。
南極
[編集]南極氷床はいくつか存在する氷流によって海へと運ばれる[10]。東南極に存在する最大の氷流はランバート氷河である[8][4]。西南極に位置するパインアイランド氷河、スウェイツ氷河は最も不安定な状態にあり[11]、2006年の測定時にはこれらの氷河から合計で正味850億トンの氷が1年間に失われていることが分かった[12]。
南極氷床から氷が失われつつあると言われている。氷流、特に海への流出速度が過去から継続して大きくなりつつあることは、それがこうした不安定な状態にあることの主要な要因ではないにしても、重要な要因であると考えられている[12]。
グリーンランド
[編集]グリーンランド氷床は、ヘルハイム氷河、ヤコブスハブン氷河、カンゲルルススアーク氷河などによって海へと運ばれる[13]。
参考文献
[編集]- ^ Bamber, Jonathan L.; Vaughuan, David G.; Joughin, Ian (2000-02-18). “Widespread complex flow in the interior of the Antarctic Ice Sheet”. Science (American Association for the Advancement of Science) 287 (5456): 1248-1250. Bibcode: 2000Sci...287.1248B. doi:10.1126/science.287.5456.1248. PMID 10678828.
- ^ “What types of glaciers are there?”. National Snow and Ice Data Center. 2018年12月7日閲覧。
- ^ a b “氷河・雪氷圏辞典”. NPO法人 氷河・雪氷圏環境研究舎. 2018年12月7日閲覧。
- ^ a b “極地雪氷用語集”. 公益社団法人 日本雪氷学会 極地雪氷分科会. 2018年12月7日閲覧。
- ^ a b c “Ice”. British Antarctic Survey. 2018年12月7日閲覧。
- ^ Stokes, C.R.; Margold, M.; Clark, C.D.; Tarasov, L. (2016-02-18). “Ice stream activity scaled to ice sheet volume during Laurentide Ice Sheet deglaciation”. Nature (Nature Publishing Group) 530: 322-326. doi:10.1038/nature16947. ISSN 1476-4687 2018年12月7日閲覧。.
- ^ “雪が固まって融けるまで”. 南極豆事典. 国立極地研究所. 2018年12月7日閲覧。
- ^ a b “Ice sheet”. Natonal Geographic Education. National Geographic Society. 2018年12月7日閲覧。
- ^ Winsborrow, Monica C.M.; Clark, Chris D.; Stokes, Chris R. (2010-11). “What controls the location of ice streams?”. Earth-Science Reviews (Elsevier B.V.) 103 (1-2): 45-59. doi:10.1016/j.earscirev.2010.07.003. ISSN 0012-8252 2018年12月7日閲覧。.
- ^ Perkins, Sid (2007年3月31日). “What regulates the flow of huge ice streams?”. Science News. オリジナルの2007年7月15日時点におけるアーカイブ。 2018年12月7日閲覧。
- ^ Howard, Brian Clark (2014年5月13日). “West Antarctica Glaciers Collapsing, Adding to Sea-Level Rise”. National Geographic 2018年12月7日閲覧。
- ^ a b Rignot, Eric; Bamder, Jonathan L.; Van den Broeke, Michiel R.; Davis, Curt; Li, Yonghong; Van de Berg, Willem Jan; Van Meijgaard, Erik (2008). “Recent Antarctic ice mass loss from radar interferometry and regional climate modelling”. Nature Geoscience (Nature Publishing Group) 1 (2): 106-110. Bibcode: 2008NatGe...1..106R. doi:10.1038/ngeo102. ISSN 1752-0908 2018年12月7日閲覧。.
- ^ Andresen, Camilla S.; Straneo, Fiammetta; Ribergaard, Mads Hvid; Bjørk, Anders A.; Andersen, Thorbjørn J.; Kuijpers, Antoon; Nørgaard-Pedersen, Niels; Kjær, Kurt H. et al. (2011-12). “Rapid response of Helheim Glacier in Greenland to climate variability over the past century”. Nature Geoscience (Nature Publishing Group) 5 (1): 37-41. Bibcode: 2012EGUGA..14.4755A. doi:10.1038/ngeo1349. ISSN 1752-0908 2018年12月7日閲覧。.
外部リンク
[編集]- Perkins, Sid (2007年3月31日). “What regulates the flow of huge ice streams?”. Science News. オリジナルの2007年7月15日時点におけるアーカイブ。 2018年12月7日閲覧。