歴史学研究会
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歴史学研究会(れきしがくけんきゅうかい、英: The Historical Science Society of Japan、略称: 歴研)は、日本の歴史研究の民間学術団体。日本歴史学協会加盟学会[1]。1931年に結成された庚午会を起源とする。
概要
[編集]東京帝国大学文学部史学科出身の若手有志によって1931年に結成された「庚午会」を前身とする。「歴史の大衆化」、「歴史の科学的研究」の発展を目的として、翌1932年に設立された。主たる事業として月刊雑誌『歴史学研究』[2](1933年創刊)の編集が挙げられる。戦後の歴史学研究会はマルクス主義を中心におく歴史学であった[3]。
2021年、日本軍の慰安婦の契約構造を経済学の視点から分析したJ・マーク・ラムザイヤー教授の論文に関し、歴史的正義にもとづき対抗するとして、論文の撤回を求め、市民団体などと緊急声明を出した[4][5]。(詳細は、「J・マーク・ラムザイヤー#J・マーク・ラムザイヤーに対するキャンセル運動(2021年)」参照。)
会綱領
[編集]- 第一 われわれは、科学的真理以外のどのような権威をも認めないで、つねに、学問の完全な独立と研究の自由とを主張する。
- 第二 われわれは、歴史学の自由と発展とが、歴史学と人民との、正しいむすびつきのうちのみにあることを主張する。
- 第三 われわれは、国家的な、民族的な、そのほかすべての古い偏見をうち破り、民主主義的な、世界史的な立場を主張する。
- 第四 われわれは、これまでの学問上の成果を正しくうけつぎ、これをいっそう発展させ、科学的な歴史学の伝統をきずきあげようとする。
- 第五 われわれは、国の内外を問わず、すべての進歩的な学徒や団体と力を合わせ、祖国と人民との文化を高めようとする。
役員
[編集]歴代委員長
[編集]- 1959年 - 1962年:江口朴郎(西洋史、マルクス主義史学、東京大学名誉教授)
- 1963年 - 1965年:遠山茂樹(日本史、岩波新書『昭和史』著者、横浜市立大学名誉教授)
- 1965年 - 1969年:太田秀通(西洋史、東京都立大学・東京国際大学教授)
- 1969年 - 1970年:藤原彰(日本近代史、岩波新書『昭和史』著者、南京事件研究者、一橋大学名誉教授)
- 1970年 - 1973年:永原慶二(日本中世史、経済史、一橋大学名誉教授)
- 1973年 - 1976年:稲垣泰彦(日本中世史、東京大学史料編纂所長)
- 1976年 - 1979年:野沢豊(中国史、東京都立大学教授)
- 1979年 - 1982年:斉藤孝(国際政治史、学習院大学名誉教授)
- 1982年 - 1986年:荒井信一(西洋史、国際関係史、日本の戦争責任資料センター共同代表、駿河台大学名誉教授)
- 1986年 - 1989年:中村平治(インド史、東京外国語大学名誉教授)
- 1989年 - 1993年:西川正雄(西洋史、東京大学名誉教授)
- 1993年 - 1996年:中村政則(日本近現代史、一橋大学名誉教授、「最後の講座派」)
- 1996年 - 1999年:峰岸純夫(日本中世史、東京都立大学名誉教授)
- 1999年 - 2002年:小谷汪之(インド史、東京都立大学教授)
- 2002年 - 2004年:増谷英樹(ドイツ・オーストリア・ユダヤ史、東京外国語大学名誉教授)
- 2004年 - 2007年:木畑洋一(イギリス近現代史、国際関係史、東京大学・成蹊大学教授)
- 2007年 - 2010年:藤田覚(日本近世史、東京大学名誉教授)
- 2010年 - 2013年:池享(日本中世史、一橋大学名誉教授)
- 2013年 - 2016年:久保亨(東洋史、中国近現代史、信州大学特任教授)
- 2016年 - 2019年:小澤弘明(ハプスブルク帝国史、近代ドイツ・オーストリア史、千葉大学教授)
- 2019年 - 2022年:若尾政希(日本近世史・思想史、一橋大学教授)
- 2022年 -:加藤陽子(日本近現代史、東京大学教授)
歴代編集長
[編集]- 1959年 - 1960年:石母田正(古代中世史、法政大学教授、唯物史観)
- 1960年 - 1961年:永原慶二(上記参照)
- 1961年 - 1962年:遠山茂樹(上記参照)
- 1962年 - 1963年:大石慎三郎(日本近世史、学習院大学名誉教授、享保の改革の研究者)
- 1963年 - 1965年:佐伯有一(東洋経済史、中国近現代史、東京大学名誉教授)
- 1965年 - 1967年:佐々木潤之介(日本近世史、一橋大学名誉教授)
- 1967年 - 1968年:荒井信一(上記参照)
- 1968年 - 1969年:藤原彰(上記参照)
- 1969年 - 1971年:土井正興(ローマ史、専修大学教授)
- 1971年 - 1972年:板垣雄三(イスラム学、東京大学名誉教授、東京経済大学名誉教授、文化功労者)
- 1972年 - 1974年:西川正雄(上記参照)
- 1974年 - 1976年:金原左門(社会学、日本近代政治史、文化史、中央大学名誉教授)
- 1976年 - 1977年:富永幸生(ドイツ現代史、独ソ関係史、青山学院大学教授)
- 1977年 - 1979年:中村平治(上記参照)
- 1979年 - 1982年:加藤幸三郎(経済史、専修大学名誉教授)
- 1982年 - 1985年:中村政則(上記参照)
- 1985年 - 1987年:小谷汪之(上記参照)
- 1987年 - 1990年:増谷英樹(上記参照)
- 1990年 - 1994年:宮地正人(日本近代史、東京大学名誉教授、国立歴史民俗博物館長、九条の会賛同者)
- 1994年 - 1997年:伊集院立(西洋史、法政大学社会学部教授)
- 1997年 - 2000年:加藤博(中東社会経済史、イスラム社会論、一橋大学名誉教授)
- 2000年 - 2003年:村井章介(日本中世史・対外関係史、東京大学名誉教授)
- 2003年 - 2006年:岸本美緒(明清社会経済史、お茶の水女子大学名誉教授)
- 2006年 - 2009年:小澤弘明(ハプスブルク帝国史、近代ドイツ・オーストリア史、千葉大学教授)
- 2009年 - 2012年:栗田禎子(中近東・アフリカ近現代史、千葉大学教授)
- 2012年 - 2015年:大門正克(日本近現代経済史、農村社会史、早稲田大学特任教授、横浜国立大学副学長・理事・教授)
- 2015年 - :鈴木茂(ブラジル近現代史。名古屋外国語大学教授、東京外国語大学名誉教授)
歴代事務局長
[編集]- 1987年 - 1989年:吉田伸之(日本近世史、東京大学名誉教授)
- 1989年 - 1992年:池享(上記参照)
- 1992年 - 1995年:保立道久(日本近世史、東京大学名誉教授)
- 1995年 - 1999年:藤田覚(上記参照)
- 1998年 - 2002年:榎原雅治(日本中世史史、東京大学史料編纂所教授)
- 2002年 - 2004年:渡辺尚志(日本近世史、村落史、一橋大学教授)
- 2004年 - 2007年:山田邦明(日本中世史、愛知大学教授)
- 2007年 - 2011年:中野聡(現代アメリカ史、米比関係史。一橋大学学長)
- 2011年 - 2014年:小野将(日本近世史、東京大学史料編纂所准教授)
- 2014年 - 2017年:石居人也(社会史、一橋大学教授)
- 2017年 - :中澤達哉(西洋史、早稲田大学教授)
脚注
[編集]- ^ 日本歴史学協会
- ^ 「歴史学研究」(国立情報学研究所収録) 国立情報学研究所
- ^ 大津透『神話から歴史へ』講談社〈講談社学術文庫〉、2017年12月11日、16頁
- ^ “「慰安婦」否定の米教授論文 歴史3学会などが撤回求め声明 | カナロコ by 神奈川新聞”. カナロコ. 神奈川新聞社. 2024年6月14日閲覧。
- ^ “新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する日本の研究者・アクティビストの緊急声明”. 日本史研究会. 2024年6月15日閲覧。
参考文献
[編集]- 『歴史学研究会40年のあゆみ』 1972年
- 『歴研半世紀のあゆみ』 1982年
- 『戦後歴史学と歴研のあゆみ』 1993年
- 『戦後歴史学を検証する』 2002年
- 『歴史学研究別冊 総目録・索引 1933 No.1〜2006 No.822』 2007年
- 『証言 戦後歴史学への道』 2012年
- 『歴史学のアクチュアリティ』 2013年