川田順造
かわだ じゅんぞう 川田 順造 | |
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文化勲章受章に際して 公表された肖像写真 | |
生誕 |
1934年6月20日 日本・東京府 |
死没 | 2024年12月20日(90歳没) |
居住 |
日本 フランス オートボルタ |
国籍 | 日本 |
研究分野 | 人類学 |
研究機関 |
埼玉大学 東京外国語大学 広島市立大学 神奈川大学 |
出身校 |
東京大学教養学部卒業 東京大学大学院修了 |
主な業績 |
非文字コミュニケーションの研究 口頭伝承論を創始 文化の三角測量を提唱 |
主な受賞歴 |
日本エッセイスト・クラブ賞 (1974年) 藤村記念歴程賞 (1988年) フランス語圏大賞 (1991年) 毎日出版文化賞 (1992年) |
プロジェクト:人物伝 |
川田 順造(かわだ じゅんぞう、1934年6月20日 - 2024年12月20日)は、日本の人類学者(文化人類学)。勲等は文化勲章。学位は、博士(パリ第5大学)。東京外国語大学名誉教授、広島市立大学名誉教授。文化功労者。
埼玉大学助教授、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授、広島市立大学国際学部教授、神奈川大学日本常民文化研究所特別招聘教授などを務めた。
サバンナでモシ族と生活をともにするなかで、言葉や音楽が西洋的概念だけでは律しきれないことを実証。著書に、文字にしたのでは消えてしまう声を記録分析した『聲』(1988年)のほか、『富士山と三味線』(2013年)など。
経歴
[編集]- 出生から修学期
1934年、東京都深川で生まれた[1]。暁星中学校、大学入学資格検定を経て、東京大学教養学科理科Ⅱ類から文化人類学・人文地理学分科に進学[1]。1958年、同学科卒業後、同大学大学院生物系研究科人類学専攻へ進学[1]。在学中、フランス政府給費留学生として、パリ高等研究院第6分科へ留学[1]。1965年に帰国し[1]、大学院を単位取得退学[1]。
- 文化人類学者として
東京大学教養学部人文科(文化人類学)助手に就いた[1]。1966年、埼玉大学教養学部助手となった[1]。1970年、埼玉大学を退職[1]。1971年、パリ第5大学へ学位論文を提出し、民族学博士号を取得[1][2]。1976年、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教授となった[1]。1984年、同教授に昇格[1]。1997年、東京外国語大学を停年退職[1]。その後は、広島市立大学国際学部教授として教鞭をとった[1]。また、神奈川大学日本常民文化研究所特別招聘教授も務めた[3]。神奈川県湯河原町に在住。
2024年12月20日、誤嚥性肺炎のため死去した。90歳没[5]。
受賞・栄典
[編集]- 受賞
- 1974年:『曠野から』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞[1]。
- 1988年:『聲』で藤村記念歴程賞を受賞[1]。
- 1991年:アカデミー・フランセーズのフランス語圏大賞のメダルを授与[6]。
- 1992年:『口頭伝承論』で毎日出版文化賞を受賞[1]。
- 栄典
- 1995年 - フランス共和国政府より教育功労章[1]。
- 2001年 - 紫綬褒章[3]。
- 2009年 - 文化功労者[3]。
- 2010年 - 瑞宝重光章[3]。
- 2017年 - ブルキナファソ政府文化功労章[3]。
- 2021年 - 文化勲章[7]。
研究内容
[編集]主としてアフリカを対象として民俗学的調査を行い、数多くの著作を著している。文化人類学の普及にも努め、クロード・レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』の翻訳でも知られる。
語りや音楽などによる非文字コミュニケーションの研究において「口頭伝承論」の領域を切り開き[3][7]、ヨーロッパ、西アフリカ、日本の3つの文化を比較考量する「文化の三角測量」を提唱した[7]。
著書
[編集]- 単著
- 『マグレブ紀行』(中公新書, 1971年)
- 復刊 1999年
- 『曠野から―アフリカで考える』(筑摩書房, 1973年)
- 中公文庫, 1976年
- 『無文字社会の歴史―西アフリカ・モシ族の事例を中心に』(岩波書店, 1976年)
- 岩波同時代ライブラリー, 1990年
- 岩波現代文庫, 2001年
- 『サバンナの博物誌』(新潮社〈新潮選書〉, 1979年)
- ちくま文庫, 1991年
- 『サバンナの手帖』(新潮社〈新潮選書〉, 1981年)
- 講談社学術文庫, 1995年
- 『聲』(筑摩書房, 1988年)
- ちくま学芸文庫, 1998年
- 『西の風・南の風―文明論の組みかえのために』(河出書房新社, 1992年)
- 『口頭伝承論』(河出書房新社, 1992年)
- 平凡社ライブラリー, 2001年
- 『地域からの世界史(9)アフリカ』(朝日新聞社, 1993年)
- 『アフリカの歴史』(角川ソフィア文庫, 2022年)
- 『アフリカの心とかたち』(岩崎美術社, 1995年)
- 『サバンナに生きる』(くもん出版, 1995年)
- 『ブラジルの記憶―「悲しき熱帯」は今』(NTT出版, 1996年)
- 中公文庫, 2010年
- 『サバンナ・ミステリー 真実を知るのは王か人類学者か』(NTT出版, 1999年)
- 『コトバ・言葉・ことば―文字と日本語を考える』(青土社, 2004年)
- 『アフリカの声―「歴史」への問い直し』(青土社, 2004年)
- 『人類の地平から―生きること死ぬこと』(ウェッジ, 2004年)
- 『人類学的認識論のために』(岩波書店, 2004年)
- 『母の声、川の匂い―ある幼時と未生以前をめぐる断想』(筑摩書房, 2006年)
- 『文化人類学とわたし』 (青土社, 2007年)
- 『もうひとつの日本への旅―モノとワザの原点を探る』(中央公論新社, 2008年)
- 『文化の三角測量 川田順造講演集』(人文書院, 2008年)
- 『文化を交叉させる 人類学者の眼』(青土社, 2010年)
- 『日本を問い直す 人類学者の視座』(青土社, 2010年)
- 『江戸=東京の下町から 生きられた記憶への旅』(岩波書店, 2011年)
- 『富士山と三味線 文化とは何か』(青土社, 2014年)
- 『〈運ぶヒト〉の人類学』(岩波新書, 2014年)
- 『人類学者への道』(青土社, 2016年)
- 『レヴィ=ストロース論集成』(青土社, 2017年)
- 『人類学者の落語論』(青土社, 2020年)
- 編著
- 『黒人アフリカの歴史世界』(民族の世界史 12)(山川出版社, 1987年)
- 『アフリカ論―人間と文化の原点を求めて』(放送大学教育振興会, 1987年)
- 改訂版 1993年
- 『「未開」概念の再検討』(リブロポート, 1989-91年)
- 『ヨーロッパの基層文化』(岩波書店, 1995年)
- 『ニジェール川大湾曲部の自然と文化』(東京大学出版会, 1997年)
- 『アフリカ入門』(新書館, 1999年)
- 『文化としての経済』(シリーズ国際交流 7)(山川出版社, 2001年)
- 『近親性交とそのタブー―文化人類学と自然人類学のあらたな地平』(藤原書店, 2001年)
- 新版 2018年
- 『ヒトの全体像を求めて―21世紀ヒト学の課題』(藤原書店, 2006年)
- 『アフリカ史』(新版 世界各国史 10)(山川出版社, 2009年)
- 『響き合う異次元 音・図像・身体』(平凡社, 2010年)
- 『ナショナル・アイデンティティを問い直す』(山川出版社, 2017年)
- 共著・共編著
- (武満徹)『音・ことば・人間――往復書簡』(岩波書店, 1980年)
- 同時代ライブラリー, 1992年
- (徳丸吉彦)『口頭伝承の比較研究』(弘文堂(全4巻), 1984-88年)
- (坂部恵)『ときをとく―時をめぐる宴』(リブロポート, 1987年)、対話録
- (福井勝義)『民族とは何か』(岩波書店, 1988年)
- (伊谷純一郎・小田英郎・田中二郎・米山俊直)『アフリカを知る事典』(平凡社, 1989年)
- 増訂版 1999年
- (岡田英弘・樺山紘一・山内昌之)『歴史のある文明・歴史のない文明』(筑摩書房, 1992年)
- (上村忠男)『文化の未来―開発と地球化のなかで考える』(未來社, 1997年)
- オンデマンド版 2007年
- (エリ・ウィーゼル)『介入?―人間の権利と国家の論理』(藤原書店, 1997年)
- (岩井克人・鴨武彦・恒川惠市・原洋之介・山内昌之)『岩波講座 開発と文化』(全7巻)(岩波書店, 1997-98年)
- (石毛直道)『地域の世界史(8)生活の地域史』(山川出版社, 2000年)
- (大貫良夫)『地域の世界史(4)生態の地域史』(山川出版社, 2000年)
- (湯浅譲二)『人間にとっての音⇔ことば⇔文化』(洪水企画「燈台ライブラリ」, 2012年)[8]
- 訳書
- アンリ・レーマン『アメリカ大陸の古代文明』(白水社〈文庫クセジュ〉, 1959年)
- ドニーズ・ボーム『アフリカの民族と文化』(白水社〈文庫クセジュ〉, 1961年)
- 新版刊
- ローランド・オリヴァー編『アフリカ史の曙』(岩波新書, 1962年)
- アズララ『大航海時代叢書 第2巻 西アフリカ航海の記録 ギネー発見征服誌』(長南実共訳、岩波書店, 1967年)
- クロード・レヴィ=ストロース 『悲しき熱帯』(中央公論社「世界の名著」, 1967年)
- 新版 中公バックス、抄訳版
- 全訳版『悲しき熱帯』中央公論社, 1977年
- 改訳版 中公クラシックス, 2001年
- レヴィ=ストロース『構造人類学』(生松敬三、荒川幾男、佐々木明、田島節夫共訳、みすず書房, 1972年)
- C・メイヤスー『家族制共同体の理論――経済人類学の課題』(原口武彦共訳、筑摩書房, 1977年)
- レヴィ=ストロース『現代世界と人類学―第三のユマニスムを求めて』(渡辺公三共訳、サイマル出版会, 1988年)
- 改訂版『レヴィ=ストロース講義―現代世界と人類学』(平凡社ライブラリー, 2005年)
- レヴィ=ストロース『ブラジルへの郷愁』(みすず書房, 1995年)[9]
- 改訂版 中央公論新社, 2010年
- レヴィ=ストロース『月の裏側 日本文化への視角』(中央公論新社, 2014年)
関連文献
[編集]- 川田順造(かわだ じゅんぞう)とは? 意味や使い方 - コトバンク
- 「川田順造教授 : 略歴と著作目録」『アジア・アフリカ言語文化研究』第54巻、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、1997年9月、227-230頁、doi:10.15026/23924、ISSN 0387-2807。
- 湯河原町|ゆがレポ☆
外部リンク
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 「川田順造教授 : 略歴と著作目録」『アジア・アフリカ言語文化研究』第54巻、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、1997年9月、227-230頁。
- ^ Kawada Junzo (1971). Genèse et évolution du système politique des Mosi méridionaux (doctorat : Anthropologie thesis) (フランス語). Paris 5.
- ^ a b c d e f “川田順造特別招聘教授が文化勲章を受章されました/お知らせ|神奈川大学”. www.kanagawa-u.ac.jp. 2022年10月3日閲覧。
- ^ 日本民俗学会編「理事会記録」『日本民俗学』308号、2021年
- ^ “文化人類学者の川田順造さん死去 口頭伝承論や「文化の三角測量」:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2024年12月23日). 2024年12月23日閲覧。
- ^ “Junzo KAWADA”. www.academie-francaise.fr. Académie française. 2019年6月26日閲覧。
- ^ a b c “文化勲章に文化人類学者の川田順造さん 「文化の三角測量」を提唱:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2021年10月25日). 2022年10月3日閲覧。
- ^ 書簡・対論を担当。
- ^ 写真集解説。