今道友信
今道 友信(いまみち とものぶ、1922年11月19日 - 2012年10月13日)は、日本の美学者・中世哲学研究者で「エコエティカ」(生命倫理による人間学・倫理学)を提唱した。東京大学名誉教授、聖トマス大学名誉教授、国際形而上学会会長、国際美学会終身委員兼名誉会長、国際エコエティカ学会名誉会長。元哲学美学比較研究国際センター所長。日本美容専門学校校長。日本アスペン研究所特別顧問の多くの肩書がある。
離婚歴があり、ギタリストで元BARBEE BOYSのメンバー・いまみちともたか、ピアニストの川口信子は実子。再婚したクリスティネ(ドイツ人)との間には、ドイツ在住の今道友紀子と、今道友昭(心理学者、ニューヨーク市立大学教員)がいる。
いまみちともたかの回想では、オーディオ・マニアであり、また息子のために趣味で作曲した「子守歌」を大阪万博の際、演奏したという[1]。
略歴
[編集]東京生まれ。父は支店長も務めた銀行員。父の転勤で山形県に移り住み、旧制鶴岡中学に入学。弁論大会で1年乙組代表として参加、「いそしむことの尊さ」を弁じて入賞。乙組の級長であった。担任は原子英太郎。同校の教員であった芳賀幸四郎の言葉に感化され、哲学を志したという。中学2年2学期から高知の旧制城東中学に編入。中学4年で受験に失敗、5年までいた。東京府立一中補習科に在籍し、旧制成城高校、旧制一高を経て、1948年、東京大学文学部哲学科卒業、出隆の指導を受けた。読売新聞会長の渡邉恒雄は後輩で当時から交流があった。
パリ大学、ヴュルツブルク大学で非常勤講師。1958年、九州大学助教授。1962年、東京大学助教授。1968年、東京大学文学部教授。1975年、国際美学会副会長。1978年、文学部長。学生の占拠する学部長室の失火事件で学生を処分。1982年、定年退官し名誉教授。後は放送大学教授、清泉女子大学教授(副学長)、英知大学大学院長を歴任[2]。1982年、哲学美学比較研究国際センターを創設し、2010年まで所長。1986年に紫綬褒章、1993年に勲三等旭日中綬章を受章。1996-1999年、哲学国際研究所(IIP, パリ)所長。2006年、学校法人日美学園 日本美容専門学校校長に就任した。
1974年 東京大学 文学博士。論文は「同一性の自己塑性」[3]。
2012年10月13日、大腸癌のため東京都港区の病院で逝去、89歳没[4]。告別式は翌年1月に聖イグナチオ教会で執り行われた。喪主は妻のクリスティネ[5]。
著書
[編集]単著
[編集]- 『美の位相と藝術』東京大学出版会 1968、増補版1971
- 『子守唄』(作詞作曲集)すみれ文庫 1969
- 『解釈の位置と方位』美学史研究叢書別冊:東京大学文学部 1971
- 『同一性の自己塑性』東京大学出版会 1971
- 『愛について』講談社現代新書 1972/中公文庫 2001
- 『美について』講談社現代新書 1973、のち新装版
- 『芸術と理性』精神開発叢書 富山県教育委員会 1978。(講演録)
- 『アリストテレス』講談社〈人類の知的遺産〉 1980/講談社学術文庫 2004
- 『東洋の美学』TBSブリタニカ 1980
- 『東西の哲学』TBSブリタニカ 1981
- 『断章空気への手紙』TBSブリタニカ 1983
- 『現代の思想』放送大学 1985
- 『新しい知性と徳を求めて』ぎょうせい 1986
- 『西洋哲学史』講談社学術文庫 1987
- 『存在と価値 現代哲学の課題』 放送大学教育振興会 1989
- 『詩と展景』ぎょうせい 1990
- 『エコエティカ-生圏倫理学入門』講談社学術文庫 1990
- 『自然哲学序説』講談社学術文庫 1993
- 『知の光を求めて 一哲学者の歩んだ道』中央公論新社 2000
- 『暁の前に 藤川正夫の詩』私家版(藤川千代子) 2002
- 『ダンテ「神曲」講義』みすず書房 2002、改訂普及版[2]2004、新装版2017
- 『出会いの輝き』女子パウロ会 2005
- 『美の存立と生成』ピナケス出版 2006
- 『遠い茜』哲学美学比較研究国際センター 2006
- 『チェロを奏く象』レイライン 2007
- 『超越への指標』ピナケス出版 2008
- 『あこがれと涙とほほえみと』教友社 2008
- 『中世の哲学』 岩波書店、2010
- 『今道友信わが哲学を語る―今、私達は何をなすべきか』かまくら春秋社 2010。佐藤孝雄・池田雅之編
- 『人生の贈り物――四つの物語』葉祥明(イラスト)かまくら春秋社 2011
- 『美について考えるために』 日美学園 2011/新訂・ピナケス出版 2015
- 『教えるこころ 新しい時代の教育への提言』 女子パウロ会 2011
- 『未来を創る倫理学エコエティカ』 昭和堂 2011
- 『世界は涙を忘れて・・・・』 女子パウロ会 2012
- 『雲のゆくおるがん』葉祥明(イラスト) かまくら春秋社 2012。絵本詩集
- 『音楽のカロノロジー 哲学的思索としての音楽美学』日美学園 2013
編書
[編集]- 『芸術と解釈』(編)東京大学出版会 1976
- 『藝術と想像力』(編) 東京大学出版会 1982
- 『講座美学』(編) 全五巻 東京大学出版会 1984-1985
- 『西洋美学のエッセンス』(編) ぺりかん社 1987
- 『精神と音楽の交響』 音楽之友社 1997
- 『新しい倫理 エコエティカをめざして』(哲学美学比較研究国際センター編) 2001
註釈と訳文
[編集]- 『詩学』(『アリストテレス全集』17)岩波書店 1972
共著
[編集]- 『美しい心を育てる-教育対話』(井沢純)ぎょうせい 1975
- 「山本信君の思い出」『形而上学の可能性を求めて──山本信の哲学』工作舎, 2012 ISBN 978-4-87502-447-7
論文
[編集]脚注
[編集]- ^ 吉田豪インタビュー集「バンドライフ」メディアックス
- ^ [1] カロノロジー会による略歴
- ^ 博士論文書誌データベース
- ^ 訃報:今道友信さん89歳=東大名誉教授エコエティカ提唱 毎日.jp、2012年10月16日
- ^ “(おくやみ)故今道友信氏の告別式 東京大名誉教授”. 日本経済新聞 (2012年12月10日). 2022年9月16日閲覧。