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中尉 (古代中国)

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

中尉（ちゅうい）は、古代の中国に置かれた官職である。

皇帝に属する官としては、秦代から前漢に置かれた。職掌は首都の警備だが、属する兵士を率いて内外の戦争に出征することも多かった。、紀元前104年に執金吾と改称されてなくなった。

前漢では皇帝に臣従する諸侯王の王国にも中尉があり、王国の軍事・警察の長である。執金吾への改称は地方に及ばず、後漢の諸王国にも中尉が置かれた。

秦

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太尉とともに秦の時代からあった[1]。

前漢

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反秦の兵をあげた劉邦は、秦の滅亡後項羽によって漢の王とされると、配下の曹参と周昌を中尉に任命した[2][3][4]。項羽の敗死時には丙倩と許温が中尉だった[5]。

『漢書』「百官公卿表」によれば、中尉は首都の巡回・警備を担った[6]。首都の兵士は宮殿を含む南軍、宮殿から離れた北軍に分かれており、中尉は北軍を統率した。

武帝が太初元年（紀元前104年）に執金吾と改称した[6]。

2人の丞のほか、候、司馬、千人を直属の部下として持った[6]。それらを含めた属官は以下の通り[7]

中塁令の職務は警備・守備関連であろうが、中尉の配下にない中塁校尉との関係も含め、不明。

寺互令は、初め少府に属し、後に主爵中尉の所管となり、さらに後に中尉の下に移った。

武庫令は、長安の武器庫を管理する。雒陽（洛陽）にも重要な武庫があり、それも中尉の管理下だったかもしれない[9]。

郡邸長は、郡と国の邸を管理する。郡邸・国邸（あわせて郡国邸）は、王侯と郡や国の役人が、都に滞在するときに使う邸である。ここでいう国とは、諸侯王と列侯が治める地である。はじめ少府の管轄だったが、中尉に移管され、さらに後、おそらく太初元年（紀元前104年）の改称時に、大鴻臚に属するよう改められた[10]。

左・右・中の式道候は、皇帝の外出時に式と呼ばれる旗を持って先行し、道を浄めた[11]。

左輔都尉と右輔都尉は、それぞれ左馮翊と右扶風の軍事・警察を担う。左馮翊と右扶風は、首都付近の行政区画で、他地域の郡にあたる。元鼎4年（紀元前113年）、左内史、右内史の下に移った。『漢書』百官公卿表には京輔都尉もあるが、その設置は中尉が執金吾に改称した太初元年（紀元前104年）と推定されるため、中尉の属官だったことはないと考えられる[12]。

漢の諸侯王

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漢では、皇帝によって王（諸侯王）が封じられた国にも中尉が置かれた[13]。諸侯王の下には太尉がなかったので、中尉が軍事の長であった。高后8年（紀元前180年）に、代王劉恒（後の文帝）に進言したのは 代の中尉宋昌で、このとき漢には漢の中尉があった。太初元年（紀元前104年）に漢の中尉が執金吾と改称したとき、諸王国の官名はそのままだったため、漢と諸王国で名前が異なるようになった[13]。

前漢の成帝のとき、王国で民政を担当した内史を廃し、一部の権限を中尉に移した[13]。その後、王と中尉が互いに権勢を争い、不和になったという[14]。

後漢でも引き続き置かれた。職務は郡都尉（郡尉の後進）と同じで、盗賊を追討することである[13]。秩石は比二千石[13]。規模に応じた属官（部下）の定員もあったが[15]、数は伝わらない。

中尉の人物

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春秋戦国

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秦

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前漢

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後漢

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脚注

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  1. ^ 『漢書』巻19上、百官公卿表第7上、太尉および中尉の項。『『漢書』百官公卿表訳注』103頁。
  2. ^ a b 『史記』巻54、曹相国世家第24。ちくま学芸文庫『史記』4の194 - 195頁。
  3. ^ a b 『史記』巻96、張丞相列伝第36、周昌。ちくま学芸文庫『史記』
  4. ^ a b c d 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』196頁。
  5. ^ 『史記』巻18、高祖功臣侯者年表第6、高苑、柏至。
  6. ^ a b c 『漢書』巻19上、百官公卿表第7上、中尉。『『漢書』百官公卿表訳注』103頁。
  7. ^ 特に注記がないかぎり、『漢書』巻19上、百官公卿表第7上、中尉（『『漢書』百官公卿表訳注』103頁）による。
  8. ^ 『漢書』巻19上、百官公卿表第7上、典客。『『漢書』百官公卿表訳注』79頁。
  9. ^ 『『漢書』百官公卿表訳注』106頁注5。
  10. ^ 『漢書』巻19上、百官公卿表第7上、典客。『『漢書』百官公卿表訳注』79頁。
  11. ^ 『漢書』巻19上、百官公卿表第7上、中尉への王先謙注。『『漢書』百官公卿表訳注』106 - 107頁注7。
  12. ^ 『『漢書』百官公卿表訳注』104頁注2。
  13. ^ a b c d e 『続漢書』百官志5（『後漢書』合本）。早稲田文庫『後漢書』志2の568頁。
  14. ^ 『続漢書』百官志5（『後漢書』合本）。早稲田文庫『後漢書』志2の570頁注3。劉昭の注が引く『漢官儀』。
  15. ^ 『続漢書』百官志5（『後漢書』合本）。早稲田文庫『後漢書』志2の5頁。
  16. ^ 『史記』巻43、趙世家第13。ちくま学芸文庫『史記』3の346頁。
  17. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、鹵厳侯張平。
  18. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、汾陽厳侯靳彊。
  19. ^ 『史記』巻19、恵景間侯者年表第7、中邑。
  20. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、中邑貞侯朱進。
  21. ^ 『史記』巻18、高祖功臣侯者年表第6、高苑。
  22. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、高宛制侯丙猜。
  23. ^ 『史記』巻18、高祖功臣侯者年表第6、柏至。
  24. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、柏至靖侯許盎。
  25. ^ 『史記』巻18、高祖功臣侯者年表第6、斥丘。
  26. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、斥丘懿侯唐万。
  27. ^ 『史記』巻92、淮陰侯列伝第32。ちくま学芸文庫『史記』6の230頁。
  28. ^ 『史記』巻18、高祖功臣侯者年表第6、開封。
  29. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、開封愍侯陶舍。
  30. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、陽羨定侯霊常。
  31. ^ 『史記』巻18、高祖功臣侯者年表第6、臨轅。
  32. ^ 『漢書』巻16、高恵高后文功臣表第4、臨轅堅侯戚鰓。
  33. ^ 『史記』巻52、斉悼恵王世家第22。ちくま学芸文庫『史記』4の169頁。
  34. ^ 『史記』巻10、孝文本紀第10。ちくま学芸文庫『史記』1の301頁。
  35. ^ 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』199頁。
  36. ^ 『史記』巻105、扁鵲倉公列伝第45、太倉公。ちくま学芸文庫『史記』7の90頁。
  37. ^ 『史記』巻118、淮南衡山列伝第58、淮南厲王長。ちくま学芸文庫『史記』8の12頁。
  38. ^ 『史記』巻10、孝文本紀第10。ちくま学芸文庫『史記』1の317頁。『史記』巻22、漢興以来将相名臣年表第10、孝文14年。
  39. ^ 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』198頁。
  40. ^ 『史記』巻57、絳侯周勃世家第27。ちくま学芸文庫『史記』4の248頁。
  41. ^ 『史記』巻22、漢興以来将相名臣年表第10、孝景3年。
  42. ^ 『漢書』巻17、景武昭宣元成功臣表第5、建陵哀侯衞綰。
  43. ^ 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』198頁、200頁。
  44. ^ 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』198頁には見えない。
  45. ^ 『史記』巻101、袁盎鼂錯列伝第40。
  46. ^ 『史記』巻19、恵景間侯者年表第7、建平。『史記』巻103、万石張叔列伝第43、衛綰（ちくま学芸文庫『史記』7の55頁）。
  47. ^ a b c d e 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』200頁。
  48. ^ 『史記』巻59、五宗世家第29、臨江。ちくま学芸文庫『史記』4の269頁。
  49. ^ 『史記』巻122、酷吏列伝第62、寧成。ちくま学芸文庫『史記』8の84頁。
  50. ^ 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』200頁は、郭広意とする。百官公卿表には武帝後元2年（紀元前87年）に郭広意が中尉の後継である執金吾を免じられたと記すが、年が離れすぎている感がある。
  51. ^ ちくま学芸文庫『史記』8の60頁。
  52. ^ 『漢書』巻6、武帝紀第6、元光元年。ちくま学芸文庫『漢書』1の165頁。
  53. ^ 『史記』巻108、韓長孺列伝第48、韓安国。ちくま学芸文庫『史記』7の164頁。
  54. ^ 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』200頁、202頁。
  55. ^ 『史記』巻122、酷吏列伝第62、張湯。ちくま学芸文庫『史記』8の88頁。
  56. ^ a b c d e 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』202頁。
  57. ^ 『漢書』巻53、景十三王伝第23、河間献王徳。ちくま学芸文庫『漢書』　
  58. ^ 『史記』巻118、淮南衡山列伝第58、淮南王安。ちくま学芸文庫『史記』8の21頁。
  59. ^ 『史記』巻118、淮南衡山列伝第58、衡山王賜。ちくま学芸文庫『史記』8の41頁。
  60. ^ a b c d 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』202頁。
  61. ^ 『史記』巻22、漢興以来将相名臣年表第10、元鼎6年。
  62. ^ 『漢書』巻19下、百官公卿表第7下。『『漢書』百官公卿表訳注』204頁。
  63. ^ 『史記』巻121、儒林列伝第61、申公。ちくま学芸文庫『史記』8の71頁。
  64. ^ 『史記』巻24、楽書第2。ちくま学芸文庫『史記』2の26頁。執金吾への改称の2年後。ほかにもこの出来事には矛盾があり。疑わしい。
  65. ^ 『三国志』巻23、魏書23、和常楊杜趙裴伝第23、楊俊。ちくま学芸文庫『正史三国志』4の28 - 29頁。
  66. ^ 『三国志』巻12、魏書12、崔毛徐何邢司馬伝第十二、徐奕。
  67. ^ 『三国志』巻2、魏書2、文帝紀第2、延康元年2月己卯条への裴松之注。ちくま学芸文庫『正史三国志』1の134頁。

参考文献

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