ロイガーとツァール
ロイガー(Lloigor)とツァール(Zhar)は、クトゥルフ神話に登場する架空の神性。旧支配者、双子神。風の精[1]。
オーガスト・ダーレスによって生み出された。初出は、ダーレスがマーク・スコラーとの共著で『ウィアード・テイルズ』1932年8月号に発表した短編『潜伏するもの』(原題:The Lair of the Star-Spawn)。
概要
[編集]旧神に封印され、ミャンマーの奥地にあるというスン高原の古代都市、アラオザルの地下に閉じ込められている。矮人種族チョー・チョー人が、双子神を崇拝している。復活しかけるも、旧神と星の戦士たちによって滅ぼされる。同作において、ロイガーの姿は長い触手を持った巨大な緑の肉塊であると描写されている。ツァールの姿の描写はない。
双子神であるが、作中での扱いが平等ではない。描写されるのはロイガーのみであり、ツァールは登場すらしない。資料によっては、ツァールのほうがより強大であるとの記述も見られる[2][注 1]が、初出たる『潜伏するもの』フォ=ラン博士のセリフは、文脈上敵へのハッタリとして発したものという側面が強く、双子神の真の関係性は不明である。
さらに『サンドウィン館の怪』にて、ロイガーが再登場する。双子神の片割れが死んでいなかった、とすれば筋が通る[注 2]。また本作から四大霊の風の精に位置付けられるようになる。本作においては、深きものども(水の眷属)に使役され、密室にほんの隙間から侵入して標的の人物を連れ去る。風(大気)属性の「他者をバラバラにして大地から引きはがすことができる」能力を披露した。術者が「クトゥルフやイタカをも退ける」と豪語する防御陣を、ロイガーは難なく破ってみせた。
双子神はうしかい座のアルクトゥールスに関連ある存在として描写される。『サンドウィン館の怪』においては、ロイガー召喚の条件の一つが、アルクトゥールスが天空に見えることである。また『闇に棲みつくもの』[3]では、ウムル・アト=タウィルがツァールをアルクトゥールスから召喚するという説明がある。アルクトゥールスに棲んでいるとされることもある[1]。アルクトゥールスはツァールたちの故郷であるともされている[4]。
テーブルトークRPGの『クトゥルフ神話TRPG』では、ツァールとロイガーはまったく同じ能力を持っていると設定されている[5]。
日本では風見潤の『クトゥルー・オペラ』に登場する。アルクトゥールスの惑星に封印されていた。それぞれN極単独とS極単独の磁気単極子生命体であり、異形のヒューマノイド姿をしている。
リン・カーターの『陳列室の恐怖』によると、ハスターとシュブ=ニグラスの子がイタカ、ロイガー、ツァールとされる。この系譜は風見潤も採用している。
登場作品
[編集]ロイガー族
[編集]コリン・ウィルソンの『ロイガーの復活』には、ロイガーと呼ばれる非物種族が登場する。アンドロメダ星雲から宇宙の風に乗って地球に飛来したという。旧支配者であるロイガーと、このロイガー族の関係は明らかではない[8]。『クトゥルフ神話TRPG』では両者を別個の存在として扱っている[9]。
なおロイガー族の異称をガタノトーアという。『ウルトラマンティガ』には、超古代先兵怪獣ゾイガー、超古代怨念翼獣シビトゾイガーが登場する。ゾイガーは、邪神ガタノゾーアの眷属である。
フレッド・ペルトンの設定では、ロイガーノス(盲目のもの、空飛ぶポリプ)はロイガーとツァールに仕える眷属種族とされる。
関連項目
[編集]脚注
[編集]【凡例】
- クト:青心社文庫『暗黒神話大系クトゥルー』、全13巻
- 新ク:国書刊行会『新編真ク・リトル・リトル神話大系』、全7巻
注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b クト13『クトゥルー神話用語集』フランシス・T・レイニイ、337ページ。
- ^ 学研『クトゥルー神話事典 第三版』東雅夫、195ページ。
- ^ クト4『闇に棲みつくもの』オーガスト・ダーレス
- ^ 『エンサイクロペディア・クトゥルフ』ダニエル・ハームズ、「ツァール」173ページ。
- ^ 『マレウス・モンストロルム』スコット・アニオロフスキーほか「ツァールとロイガー、双子のひわいなるもの、星を歩くもの」191ページ。
- ^ クト8『潜伏するもの』/新ク2『羅睺星魔洞』オーガスト・ダーレス&マーク・スコラ―
- ^ クト3『サンドウィン館の怪』オーガスト・ダーレス
- ^ 学研『クトゥルー神話事典 第三版』東雅夫、311ページ。
- ^ 『マレウス・モンストロルム』スコット・アニオロフスキーほか「ロイガー、触手のある支配者」121ページ。