グール (クトゥルフ神話)
グール(食屍鬼、屍食鬼、Ghoul)は、創作作品群クトゥルフ神話に登場する架空の生物種。
クトゥルフ神話での初出は、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(以下HPL)が1927年に発表した短編小説『ピックマンのモデル』である[1]。クトゥルフ神話内ではグール物語でワンジャンルをなしている[2][3]。
概要
[編集]アラビア伝承のグールがモデル。地下に棲息し、墓を荒らして死体を食らう。外見はイヌに形容され、蹄を持つ。
彼らグールは人間社会に寄生して生活する。グールの赤子と人間の赤子が取り替えられることがあり、取り替えられた人間の赤子はグールとして育てられる。グールと生活することによって(または魔術によって)、人間がグールに変容することがある。墓地や都市の地下には、迷宮のような彼らの行動網が存在する。
またグールは目覚めの世界とドリームランドを行き来する手段を持っている。ドリームランドのグールはナイトゴーントと同盟を結んでおり、ときにはナイトゴーントに騎乗して飛行する。反面、ガグ族やガストなどといった種族とは対立する。
リチャード・アプトン・ピックマンやランドルフ・カーターは、人間でありながら、彼らグールと交流し協力関係を築いた。
また、エジプト女王ニトクリスを、HPLは『ファラオとともに幽閉されて』にて「グールの女王」と表現した。
初出作品『ピックマンのモデル』の影響から、地下鉄と関連付けられることが多い。
登場作品
[編集]- HPL:ピックマンのモデル(1927)、未知なるカダスを夢に求めて(1926)
- クラーク・アシュトン・スミス:名もなき末裔(1932)
- ロバート・ブロック:自滅の魔術(1935)、哄笑する食屍鬼(1936)
- ロバート・B・ジョンソン:遥かな地底で(1939)
- リン・カーター:ナスの谷にて(1975)、窖に通じる階段(1976)、円柱都市にて(198X)
- ブライアン・マクノートン:食屍姫メリフィリア(1990)
- ローレンス・J・コーンフォード:霊廟の落とし子(2001)
- ドナルド・タイスン:ネクロノミコン アルハザードの放浪(2004)
- ケイトリン・R・キアナン:禁じられた愛に私たちは啼き、吠える
- ジェマ・ファイルズ:腸卜(2011)
グールの人物
[編集]- リチャード・アプトン・ピックマン
- ボストンの画家。リアリティあふれるグールの絵を描いていた。失踪後にグールになり、ドリームランドのグール達のリーダー格となった。
- 登場作品:『ピックマンのモデル』『未知なるカダスを夢に求めて』
- ニトクリス
- 伝説上のエジプト女王。HPLが「グールの女王」と表現したことで、後にクトゥルフ神話のグールと結び付けられるようになる。
- 登場作品:『ファラオとともに幽閉されて』『ニトクリスの鏡』
- ナグ(ナゴーブ)[注 1]
- すべてのグールたちの父祖。邪神ニョグタを崇拝する。
- その他
- 『ナスの谷にて』(カーター)の賢者シュッゴブは、ドリームランドのナスの谷に住まい、魔道士エイボンと面識がある。
- 『窖に通じる階段』(カーター)のハイパーボリアの黒魔術師アヴァルザウントはグールを使役する。
- 『霊廟の落とし子』(コーンフォード)のガダモンは、ハイパーボリアの人物がドリームランドでもうけた子であり、父への恨みからグールと化した。
グールの神
[編集]HPLら初期世代作家たちは食屍鬼の神を設定しなかったが、後続作品では独自に設定しているものがある。
リン・カーターの『陳列室の恐怖』には、邪神ニョグタを崇拝するグールの一族の長ナゴーブ[注 1]への言及がある。
TRPGでは、ナイアーラトテップ[注 2]と、モルディギアン[注 3]を、食屍鬼たちの神としている。
またロバート・ブロックの『ブバスティスの子ら』に登場する猫神ブバスティスの物語はグール譚と解釈されることもある[4]。
関連項目
[編集]- グール
- 取り替え子
- ボストン高架鉄道(マサチューセッツ湾交通局)
脚注
[編集]【凡例】
- 全集:創元推理文庫『ラヴクラフト全集』、全7巻+別巻上下
- クト:青心社文庫『暗黒神話大系クトゥルー』、全13巻
- 定本:国書刊行会『定本ラヴクラフト全集』、全10巻
- 真ク:国書刊行会『真ク・リトル・リトル神話大系』、全10巻
- 新ク:国書刊行会『新編真ク・リトル・リトル神話大系』、全7巻
- 事典四:学研『クトゥルー神話事典第四版』(東雅夫編、2013年版)