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ヤンヤ・ガンブレット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤンヤ・ガンブレット
2017年ボルダーワールドカップ(ミュンヘン)でのガンブレット。
個人情報
国籍 スロベニアの旗 スロベニア
生誕 (1999-03-12) 1999年3月12日(25歳)
スロベニアの旗 スロベニア スロヴェニ・グラデツ[1]
職業 プロ ロッククライマー
身長 164 cm[2]
公式サイト janja-garnbret.com
実績
専門分野 スポーツクライミングボルダリング
最高記録
著名な実績 ボルダリングワールドカップでシーズン制覇、14の世界タイトル(ワールドカップ種目別優勝8、世界選手権優勝6)を獲得した史上唯一のクライマー。
獲得メダル
大会 1 2 3
世界選手権 6 1 0
ヨーロッパ選手権 1 2 0
ワールドゲームズ 0 1 0
オリンピック
金メダル - 1位 2020 東京 複合
金メダル - 1位 2024 パリ 複合
世界選手権
金メダル - 1位 2016 リード
金メダル - 1位 2018 ボルダリング
金メダル - 1位 2018 コンバインド
金メダル - 1位 2019 リード
金メダル - 1位 2019 ボルダリング
金メダル - 1位 2019 コンバインド
銀メダル - 2位 2018 リード
ヨーロッパ選手権
金メダル - 1位 2017 コンバインド
銀メダル - 2位 2015 リード
銀メダル - 2位 2017 ボルダリング
ワールドゲームズ
銀メダル - 2位 2017 リード
最終更新日:April 17, 2021

ヤンヤ・ガンブレットJanja Garnbret1999年3月12日 - )は、スロベニア出身のスポーツクライマーロッククライマーリードクライミング英語版ボルダリングの大会で多数の優勝経験を持つ。世界最高の女性コンペティティブクライマーとも言われており[3][4][5]、特に「リード」「ボルダリング」の2種目において圧倒的な強さを誇る[6]

幼少期

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7歳の時にクライミングに出会い、最初に登ったのは自宅にある木やキャビネットなどの家具だった[7]

クライミングが楽しくなると、その後クライミングコースに入学し、スポーツとしてのクライミングの技術を本格的に学ぶ[7]。ガンブレットはクライミングを続けている理由を問われ、「すべてを賭けて愛しているからです。ウォールに挑んでいる間は他のすべてが気にならなくなります」と答えている[8]

8歳で初めてスロベニア国内のクライミング大会に出場した[9]

競技会

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2013年、スロベニアユース代表入りしクライマーとしてキャリアをスタートさせる[7]。同年のヨーロッパユース選手権のボルダリング部門に出場し、初めての大きな大会で優勝を飾った[10]

2014年の世界ユースB選手権のリード種目で初の国際タイトルを獲得。

2015年7月、当時まだ16歳になったばかりのガンブレットは、IFSCクライミングワールドカップの出場資格を初めて得た大会ではシニアカテゴリーに初出場。リードクライミングの総合順位で7位となった[11][12]。同年、スウェーデンで開催された注目のボルダリングイベント「La Sportiva Legends Only」でも、ショーナ・コクシー英語版メリッサ・ル・ネヴェユリアーネ・ヴルム英語版アンナ・ストーア英語版、を抑えて1位を獲得した[13]。また、2015年に開催されたボルダリングの「Melloblocco」でも優勝した[14]

2016年、IFSCクライミングワールドカップのリードとコンバインドのシーズンタイトル、世界選手権のリードクライミング、世界ユースA選手権のリードクライミングとボルダリングの両方で優勝[15]。また、ボルダリングの世界最高の選手を対象とした招待制のコンテスト「Adidas Rockstars 2016」では、スーパーファイナルでジェシカ・ピルツ英語版を破り優勝した[16]。2016年と2018年にはロックマスターで優勝した[17]

複合種目の2017年ヨーロッパチャンピオンに輝いたガンブレット
ドイツミュンヘンで開催された2017年IFSCクライミング・ワールド・カップで登るガンブレット
2020東京オリンピック

2017年、ワールドカップでリードと複合種目で優勝、ヨーロッパ選手権では複合タイトルを獲得し、ボルダリングではワールドカップとヨーロッパ選手権で2位となった。

2018年は、ワールドカップでリードと複合種目のタイトルを防衛したが、学校の都合もありボルダリングでは7大会中3大会しか参加できなかった。にもかかわらず、金メダル2個、銀メダル1個を獲得している。さらに、世界選手権ではボルダリングと複合の両方で優勝。リードクライミングの世界選手権では、優勝したジェシカ・ピルツよりも11秒遅い4分38秒で最終ルートを登りきり、銀メダルに終わった。

2019年、ボルダリング・ワールドカップで、予選6回[18]、準決勝4回[19]、決勝6回[20]で1位を獲得し、総合ではボルダー課題(コース)78問中74問を解き、全種目通じて男女初となる6戦全勝での完全制覇を達成した[21]。競技用クライミングの歴史上、これまでに誰も達成したことがない偉業だった[22]。 同年、2019年IFSCクライミング世界選手権で4種目中3種目を制し、リード、ボルダリング、コンバインドで金メダルを獲得した[23]。 コンバインドでの優勝により、2020年東京オリンピックの出場権を獲得した[24][25]

2021年のIFSCクライミングワールドカップでは、4月のマイリンゲン英語版でのボルダリングで優勝した後、ソルトレイクシティで2位となり、ボルダリングのワールドカップでの連勝記録を9回に伸ばした[26]

ロッククライミング

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競技用クライミングのキャリアに加えて、様々な超難関ルートの登頂を完遂するなど、アウトドアクライマーとしても活躍している。

2015年、彼女はクロアチアのパンドラにある8b (5.13d)のルート「Avatar」をオンサイト(初見でクリア)した[27]。 同年、母国スロベニアのコテチュニックにある8c+ (5.14c)の「Miza za šest」の初登に成功した[28]

2016年、スペインラス・アベリャーナス・イ・サンタ・リーニャにある8c (5.14b)のスポーツクライミングルート「La Fabelita」をフラッシュ(事前にチェックしたあと、初アテンプトで完登)した。同じスロベニア出身のクライマーミナ・マルコヴィッチ英語版からアドバイスを受け、15分以内に登りきった[29]

2017年、彼女はさらに一歩進んで、初の9a (5.14d)ルート「Seleccio Natural」のアンカーを再びサンタ・リーニャでクリップした[30]。その数日後、同じくサンタ・リーニャの2本目の9a (5.14d)ルート「La Fabela pa la Enmienda」も登った[31]

2020年、生まれ故郷スロベニアにあるヨーロッパで最も高いトルボヴリェ煙突(360メートル)に設けられた人工では世界最長となるマルチピッチルートに、同じく世界的クライマーでパートナーのドメン・スコフィッチと共にチャレンジした。全13ピッチのルートは、最も簡単なグレードで7b (5.12b)、6ピッチは8a (5.13b)以上で、最難関は10ピッチ目で257m付近の8b+ (5.14a)。最初のトライでは12時間で登頂成功、4日後の2回目のアテンプトでは約4時間短縮し、7時間32分で成功した[32]

人物

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表彰と栄誉

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  • 2018年にスロベニアスポーツジャーナリスト協会から年間最優秀アスリートに選ばれた[33]
  • 2019年には国際舞台で優秀な成績を収めたアスリートとして、スロベニアの代表的なスポーツ賞Bloudek Awardを受賞した[33]

ランキング

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クライミング・ワールドカップ

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[34]

Discipline 2015 2016 2017 2018 2019
Lead 7 1 1 1 2
Bouldering 17 2 4 1
Speed 58 48
Combined 1 1 1 1

クライミング世界選手権

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ユース[2]

Discipline 2013
Youth B
2014
Youth B
2015
Youth A
2016
Youth A
Lead 4 1 1 1
Bouldering 1 1
Speed 23 28
Combined 2[35] 2[36]

シニア[2]

Discipline 2016 2018 2019
Lead 1 2 1
Bouldering 1 1
Speed 47 23
Combined 1 1

クライミング・ヨーロッパ選手権

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ユース[2]

Discipline 2013
Youth B
2014
Youth B
2015
Youth A
Lead 1 1 1
Bouldering 1 1 1

シニア[2]

Discipline 2015 2017
Lead 2 4
Bouldering 2
Speed 32
Combined 1

ワールドカップの表彰台

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2021年7月3日現在、ガンブレットはワールドカップで30回優勝し、合計47回の表彰台に立っている[2]

Lead

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Season 1位 2位 3位 Total
2015 2 1 3
2016 4 2 6
2017 6 2 8
2018 4 3 7
2019 1 2 3
2020 1 1
2021 2 2
Total 17 8 5 30

Bouldering

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Season 1位 2位 3位 Total
2016 1 1
2017 3 1 4
2018 2 1 3
2019 6 6
2021 2 1 3
Total 13 4 0 17

脚注

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  1. ^ Podelitev Bloudkovih priznanj za leto 2018” (PDF) (スロベニア語). gov.si. December 17, 2020閲覧。
  2. ^ a b c d e f IFSC: “Garnbret's profile and rankings”. April 17, 2021閲覧。
  3. ^ Janja Garnbret: "When I am on the wall nothing else matters."”. olympics.com (August 12, 2019). July 23, 2021閲覧。
  4. ^ Why is Janja Garnbret the best competition climber ever” (英語). 5c Climbers (May 4, 2021). May 31, 2021閲覧。
  5. ^ What If Janja Garnbret Loses At the Olympics? Unthinkable? Let’s Think About It.”. Climbing Magazine (July 7, 2021). July 24, 2021閲覧。
  6. ^ ボルダリングだけじゃない? スポーツクライミングのあれこれ。ルールや注目選手を解説”. OCEANS (2021年1月4日). 2021年7月25日閲覧。
  7. ^ a b c Biography”. RedBull. 2021年7月25日閲覧。
  8. ^ ヤンヤ・ガンブレット:男女史上初のワールドカップ全勝優勝を達成したクライマー”. RedBull (2020年6月8日). 2021年7月25日閲覧。
  9. ^ a b c d モデルのオファーを断った柔道選手も…東京五輪、注目の美女アスリート8人”. FLASH (2021年5月28日). 2021年7月25日閲覧。
  10. ^ Janja Garnbret Interview” (ドイツ語). klettern. June 14, 2019閲覧。
  11. ^ IFSC Climbing Worldcup 2015: W O M E N lead”. 2021年7月25日閲覧。
  12. ^ Murray, Emma (July 25, 2016), “Janja Garnbret Dominates Lead World Cup, Again”, Rock & Ice, http://www.rockandice.com/climbing-news/janja-garnbret-dominates-lead-world-cup-again 
  13. ^ Ketchum, Chris (November 30, 2015), “Janja Garnbret Dominates La Sportiva Legends Only”, Rock & Ice, http://www.rockandice.com/climbing-news/janja-garnbret-dominates-la-sportiva-legends-only .
  14. ^ MELLOBLOCCO 2015 – The year of the women”. 2021年7月25日閲覧。
  15. ^ Athlete profile, International Federation of Sport Climbing, retrieved August 1, 2016.
  16. ^ Adidas ROCKSTARS 2016, retrieved October 19, 2017.
  17. ^ Rock Master Hall of Fame – Rock Master Festival 2019” (英語). September 4, 2019閲覧。
  18. ^ Qualifications in the 2019 Bouldering World Cup:
    • Meiringen” (April 6, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Moscow” (April 14, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Chongquing” (April 28, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Wujiang” (May 5, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Munich” (May 19, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Vail” (June 8, 2019). June 22, 2019閲覧。
  19. ^ Semifinals in the 2019 Bouldering World Cup:
    • Meiringen” (April 6, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Moscow” (April 14, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Chongquing” (April 28, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Wujiang” (May 5, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Munich” (May 19, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Vail” (June 8, 2019). June 22, 2019閲覧。
  20. ^ Finals in the 2019 Bouldering World Cup:
    • Meiringen” (April 6, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Moscow” (April 14, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Chongquing” (April 28, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Wujiang” (May 5, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Munich” (May 19, 2019). June 22, 2019閲覧。
    • Vail” (June 8, 2019). June 22, 2019閲覧。
  21. ^ IFSC: “2019 Bouldering World Cup – Full results” (June 7, 2019). June 22, 2019閲覧。
  22. ^ スポーツクライミングにおける日本の絶対女王・野口啓代 内気だった酪農一家の少女が東京2020を目指すまで”. 東京オリンピック・パラリンピック ガイド (2020年2月25日). 2021年7月25日閲覧。
  23. ^ Zgodovinski zlati trojček superšampionke Janje” (スロベニア語). RTV Slovenija (August 20, 2019). January 31, 2020閲覧。
  24. ^ Sport climbers Janja Garnbret, Akiyo Noguchi achieve dream by qualifying for 2020 Olympics”. The Japan Times (August 20, 2019). July 19, 2021閲覧。
  25. ^ 【東京五輪】 新採用の5競技 どんなスポーツで誰に注目?”. BBC NEWS (2021年7月16日). 2021年7月25日閲覧。
  26. ^ Berry, Natalie (31 May 2021). “IFSC Boulder and Speed World Cup Salt Lake City 2021 (Round 2): Report”. UKC. https://www.ukclimbing.com/news/2021/05/ifsc_boulder_and_speed_world_cup_salt_lake_city_2021_round_2_report-72789 1 June 2021閲覧。 
  27. ^ “Janja Garnbret climbs 8b onsight in Croatia” (英語). PlanetMountain.com. http://www.planetmountain.com/en/news/climbing/janja-garnbret-climbs-8b-onsight-in-croatia.html October 9, 2018閲覧。 
  28. ^ http://www.planetmountain.com/en/news/climbing/janja-garnbret-climbs-8c-at-kotecnik-in-slovenia.html>
  29. ^ “Janja Garnbret flashes second 8c at Santa Linya” (英語). PlanetMountain.com. http://www.planetmountain.com/en/news/climbing/janja-garnbret-flashes-second-8c-at-santa-linya.html October 9, 2018閲覧。 
  30. ^ “Janja Garnbret climbs her first 9a at Santa Linya in Spain” (英語). PlanetMountain.com. http://www.planetmountain.com/en/news/climbing/janja-garnbret-climbs-her-first-9a-at-santa-linya-in-spain.html October 8, 2018閲覧。 
  31. ^ “Santa Linya sends by Janja Garnbret and Jakob Schubert” (英語). PlanetMountain.com. https://www.planetmountain.com/en/news/climbing/santa-linya-sends-by-janja-garnbret-and-jakob-schubert.html October 16, 2018閲覧。 
  32. ^ ヤンヤ・ガンブレットが欧州最長360mの煙突を登る”. climbers (2021年2月3日). 2021年7月25日閲覧。
  33. ^ a b プロフィール”. RedBull. 2021年7月25日閲覧。
  34. ^ IFSC: “World Cup Rankings”. August 20, 2019閲覧。
  35. ^ Combined results WYCH 2015
  36. ^ Combined results WYCH 2016

関連項目

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外部リンク

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