マレーシアと北朝鮮の関係
マレーシア |
北朝鮮 |
---|
マレーシア・北朝鮮関係(マレー語: Hubungan Malaysia–Korea Utara; 朝鮮語: 말레이시아 - 조선 관계)は、マレーシアと北朝鮮の間の外交関係について言及する。
歴史
[編集]二国間関係は、1973年6月30日に始まった[1]。北朝鮮大使館は2003年にクアラルンプールに設置されたが、2009年にマレーシアは、査証なしで北朝鮮に訪問できる最初の国となり、2016年に国際連合安全保障理事会決議第2270号(北朝鮮制裁決議)を受けてシンガポールが北朝鮮人に対するビザ免除措置を取り消したのちは、北朝鮮にとっての唯一のビザ免除制度のある国となった[2][3]。2013年、北朝鮮の最高指導者である金正恩は、経済学名誉博士の学位をマレーシアのHELP大学より授与された[4][5][6][7]。
2017年2月、金正恩の実兄・金正男がクアラルンプール国際空港でVXガスによって暗殺される事件が発生した。この事件をめぐってマレーシア政府は、北朝鮮側が正当な対応をしなかった事などから、査証免除制度を停止することを決めた[8]。更に、在マレーシア大使の姜哲に対して、ペルソナ・ノン・グラータとして国外退去を通告した[9]。同年3月5日、北朝鮮外務省は、在北朝鮮マレーシア大使のモハマド・ニザン・モハマドを同様にペルソナ・ノン・グラータに認定する形で報復し、48時間以内に国外退去するよう通告した[10]。同年10月12日、アニファ・アマン外相が、平壌に置かれていたマレーシア大使館を閉鎖する意向を示した[11]。一方で、マレーシアが平壌から大使館を引き揚げた後も、しばらくはクアラルンプールの北朝鮮大使館は存続していたが、2021年3月19日、資金洗浄の罪に問われていた在マレーシア北朝鮮人を、マレーシア当局が北朝鮮当局との事前調整なしでアメリカ合衆国に引き渡したことに応酬する形で、まず北朝鮮はマレーシアとの外交関係断絶を宣言し、同月21日にはクアラルンプールの北朝鮮大使館を閉鎖した[12][13]。
経済関係
[編集]北朝鮮は、マレーシアから精製油、天然ゴム、パーム油を輸入している[14]。2010年代半ばには、マレーシアのブルナマ通信は、両国は情報通信関連分野において協力関係が強まるであろうと報じていた[15]。
他方、北朝鮮からマレーシアへもたらされるものとしては、北朝鮮籍の労働者がサバ州とサラワク州にて鉱業に従事していた[16]。
観光関係
[編集]2017年まで、北朝鮮は観光推進のためにマレーシアの観光部門と協力し合っていた。2001年以来、1,000名以上のマレーシア人が北朝鮮を訪問している[3]。2011年4月、北朝鮮は、マレーシアからの観光客のさらなる増加のため、高麗航空がクアラルンプール・平壌便を開設した[17]。利用者が少なかったため一度は閉鎖されたものの、2013年8月に再開した[18]。 クアラルンプールには、北朝鮮政府直営のレストランがあった[19]。しかし、2017年2月13日に金正男暗殺事件が起こったことで両国の関係は急速に悪化し、同年9月28日、マレーシア政府は自国民の北朝鮮渡航を禁止する措置を発表した[20]。
工作拠点
[編集]在マレーシア北朝鮮大使館には北朝鮮工作員が配属されており、ラングーン事件では司令部の機能を果たした。その後工作の本拠は在リビア北朝鮮大使館に移ったものの、2017年の金正男殺害事件では、在マレーシア北朝鮮大使館の二等書記官が指揮をとったとされる[21][22]。
またクアラルンプールでは、工作機関・朝鮮人民軍偵察総局がシンガポールのパンシステムズ社平壌支社を通じて運営するグローバル・コミュニケーションズ社(略称グローコム)をフロント企業として、国際連合安全保障理事会決議1874を逃れて2016年7月にエリトリアに対し軍事用無線機器を輸出していたことが確認されている。同社には与党統一マレー国民組織高齢党員組合書記のムスタファ・ヤクブが初期パートナーとして在籍し、インターナショナル・ゴールデン・サービス社取締役なども兼務していた[23][24][25]。
クアラルンプールには他にもインターナショナル・グローバル・システム社、パン・システム社、インターナショナル・ゴールデン・サービシズ社など、北朝鮮工作機関と関係がある複数の会社の登記が存在する[25]。
外交使節
[編集]在朝鮮民主主義人民共和国マレーシア大使
[編集]- モハマド・ユソフ・モハマド・ザイン(2004~2006年)
- ラヒミ・ハルン(2008~2011年)
- モハマド・ニザン・モハマド(2015~2017年)
在マレーシア朝鮮民主主義人民共和国大使
[編集]この節の加筆が望まれています。 |
参考文献
[編集]- ^ “DPRK Diplomatic Relations”. The National Committee on North Korea. 24 January 2014閲覧。
- ^ “シンガポール、ビザ免除国から北朝鮮を除外”. 東亜日報. (2016年8月1日). オリジナルの2017年3月5日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b Fazleena Aziz (2009年3月9日). “Only Malaysians can visit North Korea without a visa”. The Star. 2014年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月24日閲覧。
- ^ “Kim Jong Un Receives Honorary Doctorate From Malaysian University”. Huffington Post (24 October 2013). 24 January 2014閲覧。
- ^ Greg Lopez (23 October 2013). “Malaysia to build bridges with North Korea”. New Mandala. 24 January 2014閲覧。
- ^ 「【直球&曲球】皮肉ですかな 金正恩が“経済学名誉博士”だって?」産経新聞デジタル2013.11.21 12:00
- ^ 「北朝鮮の金正恩氏に「経済学」名誉博士号を授与の皮肉」ザ・リバティ2013.11.04
- ^ “マレーシア 北朝鮮国民のビザ免除停止へ=正男氏事件受け”. 朝鮮日報. (2017年3月2日). オリジナルの2017年3月3日時点におけるアーカイブ。
- ^ 都留悦史・平賀拓哉 (2017年3月5日). “マレーシア政府、北朝鮮大使を退去処分 正男氏事件巡り”. 朝日新聞. オリジナルの2017年3月5日時点におけるアーカイブ。
- ^ 【金正男氏殺害】北朝鮮が対抗措置、マレーシアの駐北朝鮮大使を追放措置 - 産経ニュース
- ^ マレーシア、北朝鮮からの輸入を全面停止 - NNA ASIA・マレーシア・マクロ・統計・その他経済
- ^ 北朝鮮、在マレーシア大使館を閉鎖 断交宣言受け - 産経ニュース
- ^ “北朝鮮、マレーシアと断交表明 自国民の米引き渡し判断を非難”. ロイター. (2021年3月19日). オリジナルの2021年3月18日時点におけるアーカイブ。
- ^ North Korea Handbook. M.E. Sharpe. (January 2003). pp. 627–. ISBN 978-0-7656-3523-5
- ^ “Malaysia-North Korea To Enhance Information Cooperation”. NK News. 2013年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月24日閲覧。
- ^ “North Koreans are needed to do the dangerous jobs, says Malaysia” (24 November 2014). 8 June 2015閲覧。
- ^ “N.Korea opens new air route with Malaysia”. My Sinchew (9 August 2011). 24 January 2014閲覧。
- ^ “Pyongyang-KL flight set to resume in August”. Free Malaysia Today (25 June 2013). 9 June 2015閲覧。
- ^ “Top 5 Korean restaurants in Klang Valley”. Malaysia Tatler.com (12 May 2015). 6 June 2015閲覧。
- ^ マレーシア、全国民の北朝鮮渡航を禁止 朝鮮半島緊張の高まりで | ロイター
- ^ 「北朝鮮大使館に逃げ込んでいた事件指揮官! マレーシア警察、2等書記官を名指しで公表」J-CASTニュース2017/2/23
- ^ 「【社説】ラングーン事件も金正男殺害も作戦本部は北朝鮮大使館」朝鮮日報
- ^ 金正男氏毒殺 グローコム社元幹部「何度も北に招待された」iza2017.3.1
- ^ 「アングル:北朝鮮工作機関のダミー会社、マレーシアで暗躍の謎」ニューズウィーク2017年03月03日
- ^ a b 「北朝鮮工作機関 マレーシア拠点に工作活動」NHK2017年2月27日
- ^ Diplomatic and Consular List: December 2018 | Ministry of Foreign Affairs of Malaysia, p.17