ノート:福島第一原子力発電所事故/草稿1
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地震と津波への対策
[編集]事故前の警告と政府・東京電力の対応
[編集]アメリカの原子力規制委員会 (NRC)はMark Iを含むいくつかの原子炉は、事故の20年前に地震により付帯設備(非常用ディーゼル発電機の破損や停電、貯水タンクの故障)の故障が起きて、高い確率で冷却機能不全が起こると、「NUREG-1150レポート」で警告していた。 このレポートは2004年6月の時点で、経産省原子力安全・保安院のレポートで開示されている[1]。これに関連して、元日本原子力研究所研究員で、現在は核・エネルギー問題情報センターの舘野淳事務局長は、東京電力の危機回避能力を疑問視し、警告されたリスクへの対応策について、災害の頻度や規模を言い訳にできないと述べた[1]。
2006年10月、吉井英勝(京都大学原子核工学科卒業、日本共産党)は、国会質問で当時の原子力安全委員会委員長の鈴木篤之に対して、原子力発電所が、地震によって送電鉄塔が倒壊し、内部電源も事故にあった場合、冷却系が働かず炉心溶融にいたるのではないか、そうなった場合をどう想定し審査しているのかと質問した。これに対し鈴木は、そうならないようバックアップを多重化していると述べ、基準を超える大きな地震が来た場合についても電力会社に評価を求めていく方針を示した。吉井は、全電源を失い炉心溶融に至る場合もきちんと想定するよう求めた[2]。吉井は同年12月にも、内閣に質問主意書を提出し、大規模地震時の原発のバックアップ電源などについて質問した[3]。当時の総理大臣安倍晋三は、たとえば、停止した原発で崩壊熱が除去できなかった場合の原発事故の評価について、「経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。」などと回答した[4][5]。さらに、吉井は2010年5月の衆議院経済産業委員会で同じ問題を取り上げたが、原子力安全・保安院院長の寺坂信昭は、炉心溶融のような最悪の事態は論理的には考え得るが、ほとんど考えられないという認識を示した[6][7]。ただし、吉井がマグニチュード9.0の地震の危険性について指摘した記録はなく、10メートルを超える津波の危険性についても、主な問題とはしていない。[2][4][7]。
産業技術総合研究所活断層・地震研究センターの岡村行信センター長らは、2004年頃から貞観津波が残した地中の土砂を調査し、痕跡が宮城県石巻市から福島第一原子力発電所に近い福島県浪江町まで分布し、内陸3 - 4kmまで入り込んでいることを確認した[8]。2009年の国の審議会(原発の耐震指針の改定を受け電力会社が実施した耐震性再評価の中間報告書について検討する審議会)で、大地震や津波を考慮しない理由を東京電力に対して問い質したが、東京電力は「まだ十分な情報がない」「引き続き検討は進めてまいりたい」と答えるにとどまった。震災発生後、岡村センター長は、警告されたデーターが完全でないことを理由にリスクを考慮しないという姿勢はおかしいと述べ、「原発であればどんなリスクも当然考慮すべきだ。あれだけ指摘したにもかかわらず、東京電力からは新たな調査結果は出てこなかった。『想定外』とするのは言い訳に過ぎない。もっと真剣に検討してほしかった」と話した[9][10][11]。
また東京新聞は3月23日、ある原発メーカーの元技術者らが「今回のような大津波やマグニチュード9の地震は、想像もできなかった」、「起こる可能性の低い事故は想定からどんどん外された」と語ったと報じている[12]。
福島原発事故後
[編集]2011年3月15日、米ゼネラル・エレクトリック (GE) 社の技術者Dale G. Bridenbaughは、1975年の時点で「Mark I」型原子炉では冷却装置が故障した場合に格納容器に動的負荷がかかることを勘案した設計が行われていないと認識し、変更などを申し入れたが受け入れられないことに抗議して退社したと振り返った[13]。
2011年3月17日、露独占事業研究所の研究員は「2004年のスマトラ島沖地震など強大な地震が起こったのに、事業者は原子炉だけでなく、冷却装置などの関連施設の強化を怠った」と地元の新聞に述べた[14]。また同17日、チェルノブイリ原子力発電所事故の被害者団体「チェルノブイリ同盟ウクライナ」(キエフ)代表の元原発技師のユーリー・アンドレエフは、「チェルノブイリ事故では、4号機の爆発の影響で漏れた冷却水が隣の2号機に入り込み、冷却装置や電源のバックアップシステムが故障したものの、辛うじて連鎖事故を回避した。福島第一原発は電源装置がチェルノブイリ同様、原子炉の直下にあり、津波などの水が入り込めば電気供給やバックアップシステムが壊れる。チェルノブイリ事故後も電源供給体制を見直さなかったことは残念だ」と共同通信に述べた[15][16][17]。
2011年3月22日、参院予算委員会での社民党党首福島瑞穂の浜岡原発訴訟を振り返った質問に対して、2007年2月、静岡地方裁判所での証人尋問で非常用発電機や制御棒など重要機器が複数同時に機能喪失することまで想定していない理由として「割り切った考え。すべてを考慮すると設計ができなくなる」と証言した内閣府原子力安全委員会委員長の班目春樹は、「当時の原子力安全委員会としての見解ではあったが、今は個人的に責任を感ずる」と答弁した[11]。
2011年3月23日、1970年 - 1980年頃に4号機を除く5機の設計や安全性の検証を担った東芝の元技術者達は、「事故や地震でタービンが壊れ飛び原子炉を直撃する可能性を想定し、安全性が保たれるかどうかを検証した。M9の地震や航空機が墜落して原子炉を直撃する可能性を想定するよう進言したが、『千年に一度のことを想定する必要は無い』と一笑に付され、起こる可能性の低い事故は想定から外された。当時は『M8以上の地震は起きない』と言われ、大津波は設計条件に与えられていなかった」と語った[18]。
東日本大震災の際、東北電力の女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)も、福島第一原発と同程度の津波に襲われ、女川原発の1~3号機のうち2号機の原子炉建屋の地下3階が浸水しながらも、福島第一原発のように原子炉を冷やすために不可欠な電源が失われることはなかった。朝日新聞は女川原発原子炉建屋の標高は14.8メートルあり、10メートル前後だった福島第一より高いことを指摘し、「原発は、硬い岩盤の上に建設することが不可欠だ。国内でも、原子炉建屋の高さがまちまちなのは、適した岩盤の位置によるという事情がある」と指摘した宮崎慶次大阪大学名誉教授(原子炉工学が専門)の発言を3月31日に取り上げた[19]。
脚注
[編集]
出典
[編集]- ^ a b ブルームバーグ【福島原発の事故、米NRCが20年前に警鐘】 2011年3月16日
- ^ a b 第165回国会 内閣委員会 第3号平成十八年十月二十七日
- ^ 平成十八年十二月十三日提出 質問第二五六号 巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書 提出者 吉井英勝
- ^ a b 平成十八年十二月二十二日受領 答弁第二五六号 衆議院議員吉井英勝君提出巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問に対する答弁書 内閣総理大臣 安倍晋三
- ^ 2010年3月1日(月)「しんぶん赤旗」チリ地震が警鐘 原発冷却水確保できぬ恐れ 対策求める地元住民(福島原発事故の1年前)
- ^ 福島第1原発事故、昨年議員が同様な事故の可能性警告(ウォール・ストリート・ジャーナル 日本語版)
- ^ a b 第174回国会 経済産業委員会 第14号 議事録
- ^ 岡村行信; 宍倉正展et al. (2007年). “活断層・地震研究センターホーム>研究成果>活断層・古地震研究報告 第7号(2007年)・石巻平野における津波堆積物の分布と年代” (PDF). 産業技術総合研究所. 2011年3月27日閲覧。
- ^ 毎日新聞2011年3月27日14新版1面「大津波再来」の指摘軽視、及び福島第1原発:東電「貞観地震」の解析軽視(2011年3月26日)
- ^ 東京新聞2011年3月24日11版S 18面「国会で津波議論済み」、及び大津波、2年前に危険指摘 東電、想定に入れず被災京都新聞2011年3月26日
- ^ a b 引用エラー: 無効な
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タグです。「yomi110410
」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません - ^ 2011年3月23日東京新聞配信
- ^ “Fukushima: Mark 1 Nuclear Reactor Design Caused GE Scientist To Quit In Protest, Damaged Japanese Nuclear Plant Has Five Mark 1 Reactors [福島第1原発の原子炉設計に抗議しGE科学者退社、損傷した発電所は5機のMark I 型原子炉を設置]” (英語). ABCニュース. (2011年3月15日) 2011年3月24日閲覧。
- ^ 読売新聞「露は「人災説」展開」2011年3月17日13S版9面チェルノブイリ経験露専門家、日本入国足止め
- ^ “東日本大震災 チェルノブイリ、教訓生かされず 被害者団体代表”. Sankei Biz. (2011年3月19日) 2011年3月25日閲覧。
- ^ チェルノブイリの教訓生かされず 福島原発事故で被害者団体共同通信社2011年3月18日
- ^ チェルノブイリの教訓生かされずSo-net海外ニュース2011年03月18日
- ^ 東京新聞2011年3月24日11版19面「大津波やM9 想定却下」 福島原発 設計者ら証言東京新聞2011年3月23日
- ^ “なぜ女川原発は無事だった 津波の高さは福島と同程度”. asahi.com. (2011年3月31日) 2011年4月17日閲覧。