トリメニア科
トリメニア科 | ||||||||||||
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分類 | ||||||||||||
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学名 | ||||||||||||
Trimeniaceae Gibbs (1917)[1] | ||||||||||||
属 | ||||||||||||
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トリメニア科 (トリメニアか、学名: Trimeniaceae) は被子植物のアウストロバイレヤ目に属する科の1つである。常緑性の木本であるトリメニア属 (Trimenia) の約8種のみを含む。ニューギニアからフィジー、オーストラリア東部などに分布する。
特徴
[編集]常緑性の高木から低木であり、つる性となるものもある[2][3][4]。道管は階段穿孔をもち、繊維状仮道管が存在する[2][3]。師管の色素体はS-type (デンプン粒を含む)[2][3]。節は1葉隙2葉跡性[2][3]。葉は対生し、葉柄をもち、単葉で全縁または鋸歯をもち、腺点が存在する[2][3][4][5] (図1)。葉脈は羽状[2] (図1)。気孔は平行型[2][3]。精油細胞、粘液細胞をもつ[2][3]。フラボノールやフラボンをもつ[5]。
花は小さく、放射相称、集散花序を形成して腋生または頂生する[2][3][4] (図1)。両性花または雄花[2][3][4]。花被片は2–50枚、離生、らせん状につき、萼片と花弁の分化は連続的であり、花後にすぐに落ちる[2][3][5][4]。雄しべは6–25個、離生、らせん状につき、花糸は細い[2][5][4]。葯は外向から側向、葯隔が突出する[2][3][5]。小胞子形成は連続型[3]。花粉は無口粒〜多溝粒[2][3][5]。雌しべはふつう1個、まれに2個、花柱を欠き、子房上位、頂生胎座に1個の倒生胚珠をもつ[2][4]。珠孔は両珠皮性、胚嚢は伸長する[5]。果実は液果、種子を1個含む[3][4]。種皮は維管束を含み、全ての細胞壁が厚くなる[5]。胚乳が多く、デンプンと脂質を含む[3]。染色体数は 2n = 18[3][5]。
花粉媒介には風および昆虫が寄与すると考えられている (風虫両媒)[5]。
分布
[編集]オーストラリア東部、スラウェシ島、マルク諸島、ニューギニア島、ニューブリテン島、ニューアイルランド島、ブーゲンビル島、ニューカレドニア、フィジー、サモア、マルキーズ諸島に分布する[3][6]。熱帯から亜熱帯の多雨林に生育する[4]。
進化・分類
[編集]トリメニア属は、古くはモニミア科 (クスノキ科) に分類されていたが、花被片が早落性であることや雌しべがふつう1個であることから独立科 (トリメニア科) として分けられるようになった[4]。原始的な被子植物の一群と考えられ、新エングラー体系などではモクレン目に[7][8]、クロンキスト体系などではクスノキ目に分類されていた[9][10]。また独立のトリメニア目 (Trimeniales) に分類されることもあった[3]。
やがて20世紀末以降の分子系統学的研究により、トリメニア科は被子植物の初期分岐群の1つであることが明らかとなり、またアウストロバイレヤ科やマツブサ科 (シキミ科を含む) に近縁であることが示された。そのため、2020年現在では、トリメニア科、アウストロバイレヤ科、マツブサ科はアウストロバイレヤ目としてまとめられている[5][11]。
トリメニア科の特徴をもつ種子の化石が、北海道の白亜紀アルビアン期の地層から報告されている[5][12]。
トリメニア科には Trimenia と Piptocalyx が認識されていたが、2020年現在では両者は Trimenia としてまとめられている[13]。また Trimenia には、8種ほどが知られている[6] (下表)。
表1. トリメニア科の分類体系[1][6][4]
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脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b “Trimeniaceae”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年8月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o Watson, L. & Dallwitz, M.J. (1992 onwards). “Trimeniaceae Perk. & Gilg”. The Families of Angiosperms. 2021年8月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Takhtajan, A. (2009). “Trimeniales”. Flowering Plants. Springer. pp. 24-25. ISBN 978-1-4020-9609-9
- ^ a b c d e f g h i j k トレヴァー・ウィッフィン (1997). “トリメニア科”. 週刊朝日百科 植物の世界 9. pp. 92–93. ISBN 9784023800106
- ^ a b c d e f g h i j k l Stevens, P. F. (2001 onwards). “Trimeniaceae”. Angiosperm Phylogeny Website. Version 14, July 2017. 2021年8月8日閲覧。
- ^ a b c “Trimenia”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年8月8日閲覧。
- ^ Melchior, H. (1964). A. Engler's Syllabus der Pflanzenfamilien mit besonderer Berücksichtigung der Nutzpflanzen nebst einer Übersicht über die Florenreiche und Florengebiete der Erde. I. Band: Allgemeiner Teil. Bakterien bis Gymnospermen
- ^ 井上浩, 岩槻邦男, 柏谷博之, 田村道夫, 堀田満, 三浦宏一郎 & 山岸高旺 (1983). “トリメニア科”. 植物系統分類の基礎. 北隆館. p. 221
- ^ Cronquist, A. (1981). An integrated system of classification of flowering plants. Columbia University Press. ISBN 9780231038805
- ^ 加藤雅啓 (編) (1997). “分類表”. バイオディバーシティ・シリーズ (2) 植物の多様性と系統. 裳華房. p. 270. ISBN 978-4-7853-5825-9
- ^ APG III (2009). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG III”. Botanical Journal of the Linnean Society 161 (2): 105–121. doi:10.1111/j.1095-8339.2009.00996.x.
- ^ 『世界最古のトリメニア科種子化石を発見』(プレスリリース)金沢大学、2009年5月9日 。2021年8月8日閲覧。
- ^ a b “Trimenia Seem.”. Tropicos.org.. Missouri Botanical Garden. 2021年8月8日閲覧。
- ^ “Schisandraceae Blume”. Tropicos v3.3.2. Missouri Botanical Garden. 2022年8月13日閲覧。
外部リンク
[編集]- Kabeya, Y. & Hasebe, M.. “アウストロベイレア目/トリメニア科”. 陸上植物の進化. 基礎生物学研究所. 2021年8月8日閲覧。
- Watson, L. & Dallwitz, M.J. (1992 onwards). “Trimeniaceae Perk. & Gilg”. The Families of Angiosperms. 2021年8月7日閲覧。 (英語)
- Stevens, P. F. (2001 onwards). “Trimeniaceae”. Angiosperm Phylogeny Website. Version 14, July 2017. 2021年8月8日閲覧。 (英語)
- “Trimenia”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2021年8月8日閲覧。 (英語)