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コバノグネツム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コバノグネツム
分類Yang et al. 2022
: 植物界 Plantae
: 維管束植物Tracheophyta
階級なし : 種子植物 Spermatophyta
亜門 : 現生裸子植物 Pinophytina
(Acrogymnospermae)
: マツ綱 Pinopsida
亜綱 : グネツム亜綱 Gnetidae
: グネツム目 Gnetales
: グネツム科 Gnetaceae
: グネツム属 Gnetum
: コバノグネツム G. parvifolium
学名
Gnetum parvifolium (Warb.) C. Y. Cheng

コバノグネツム[1][2] Gnetum parvifolium は、グネツム属に属する裸子植物の1である。中国南部に広く産するグネツム類である。

名称

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中国名は小葉买麻藤小葉買麻藤拼音: xiǎo-yè-mǎi-má-téng[1]

学名種形容語parvifolium[1]、ラテン語の parvus 「小さい」+ folium「葉」に由来する[3][4]

形態

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大型で常緑の藤本植物(木生つる植物lianoid)である[1][5][6]。枝や幹は丸く、通常皮目を持ち、膨らんだ関節状のを持つ[1]

葉は対生する[1]。裸子植物でありながら、針葉樹類のような針葉ではなくほかのグネツム類と同様の幅広い葉を持つ。葉身は長さ 4–10 cmセンチメートル、幅 2.5–4 cm、葉柄長 5–8 mmミリメートル[1]。葉の概形は狭楕円形から楕円形、長卵形またはやや倒卵形である[1]葉先は鋭形または鋭尖形で、鈍い突頭がある[1]葉脚楔形からやや円形[1]。側脈は斜上し、顕著な網状脈を形成する[1]

雌雄同株[1]雌雄異株とされることもあるが、性は形態的には完全には分離せず、植物ホルモンによる誘導でもう一方の性の生殖器官へ分化する[7]球花穂状花序状に並び、多くは側生するが、稀に枝の頂端にも付く[1]

雌球花の花序は1回三出分岐し、各層に雌球花を3–5(–9)個もつ[1]種子石果様で、長楕円形またはやや倒卵形[1]。長さは 15–20 mm[1]無柄で、熟すと仮種皮が赤く色づく[1]

雄球花の花序は分岐しないか、1回のみ三出状か対になって分岐する[1]。その上に5–12層に輪生状で環状の総苞を持ち、各層に雄球花を40–70個形成する[1]。雄球花基部には顕著な短い毛がなく、花被筒部は四稜状の楯形で、花糸は互いに癒合してやや外に伸び出る[1]

分布

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中華人民共和国広東省広西チワン族自治区福建省広西省南部、湖南省に分布する[1]

系統関係

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Hou et al. (2016) による、核DNAリボソームRNA遺伝子マーカーと4つのプラスチドのマーカーを用いた、(主に中国産の)グネツム属 Gnetum分子系統解析では、次のような結果が得られている。

グネモン G. gnemon

G. gnemonoides

G. raya

G. edule

ヒロハグネモン G. latifolium

G. leptostachyum

G. neglectum

G. diminutum

ホソバグネモン G. tenuifolium

G. cuspidatum

コバノグネツム G. parvifolium

G. formosum

G. luofuense

G. catasphaericum

G. montanum

G. pendulum

利用

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種子は食用になる。また、種子からを搾って利用することもある[1]

中国医学では、幹が「買麻藤」として祛風除湿や散瘀止血、化に効果があるとされる[8]

篩部繊維を用いて、(かます)などを編んで利用される[1]

研究材料として

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温室内でも容易に球花形成を行うことから、花形成遺伝子や植物の性についての研究に用いられる[7][6][2]小石川植物園などで栽培されており、雌株は公開温室にて一般公開されている[6]

裸子植物の生殖器官は、被子植物の花とは異なり萼や花弁を形成しない[9]。花の形態形成には、ABC機能遺伝子および LEAFY 遺伝子が関わっていることが知られている[9]。そこで、裸子植物も獲得している LEAFY 遺伝子が被子植物の ABC機能遺伝子を制御できるかを調べるため、本種の LEAFY 遺伝子をモデル植物であるシロイヌナズナに導入する実験が行われた[2]。その結果、コバノグネツムの LEAFY 遺伝子を用いても正常な花形成が行われ、コバノグネツムの LEAFY 遺伝子はシロイヌナズナの leafy 遺伝子を相補できることが明らかとなった[2]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 許田 & 村上 1991, p. 79.
  2. ^ a b c d 長谷部 2006, p. 141.
  3. ^ Stearn 2004, p. 462.
  4. ^ Stearn 2004, p. 414.
  5. ^ Hou et al. 2016, pp. 1345–1365.
  6. ^ a b c 東京大学大学院理学系研究科附属植物園における野生植物系統保存事業”. 東京大学大学院理学系研究科附属植物園. 2024年11月22日閲覧。
  7. ^ a b Lan et al. 2017, pp. 14–24.
  8. ^ 買麻藤”. Chinese Medicine Specimen Database. 2024年11月22日閲覧。
  9. ^ a b 長谷部 2006, p. 140.

参考文献

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  • Hou, C.; Wikström, N.; Strijk, J.S.; Rydin, C. (2016). “Resolving phylogenetic relationships and species delimitations in closely related gymnosperms using high-throughput NGS, Sanger sequencing and morphology”. Plant Syst. Evol. 302: 1345–1365. doi:10.1007/s00606-016-1335-1. 
  • Lan, Qian; Liu, J-F.; Shi, S-Q.; Deng, N.; Jiang, Z-P.; Chang, E-M. (2017). “Anatomy, Microstructure and Endogenous Hormone Changes in Gnetum parvifolium (Warb.) C. Y. Cheng during Anthesis”. Journal of Systematics and Evolution 56 (1): 14–24. doi:10.1111/jse.12263. 
  • Stearn, W.T. (2004). BOTANICAL LATIN (4th ed.). Portland, OR: Timber Press 
  • Yang, Y.; Ferguson, D. K; Liu, B.; Mao, K.-S.; Gao, L.-M.; Zhang, S.-Z.; Wan, T.; Rushforth, K. et al. (2022). “Recent advances on phylogenomics of gymnosperms and a new classification”. Plant Diversity 44 (4): 340–350. doi:10.1016/j.pld.2022.05.003. ISSN 2468-2659. 
  • 許田倉園(訳)『中国有用植物図鑑』村上孝夫(監修)、広川書店、1991年1月15日。ISBN 4-567-41110-2 
  • 長谷部光泰 著「13 発生と進化(植物)」、松本忠夫、西田治文、二河成男 編『生物界の変遷』日本放送出版協会、2006年5月1日、136–143頁。ISBN 978-4595306563https://www.nibb.ac.jp/~evodevo/pdf_JP/2006_Hasebe_a.pdf 

外部リンク

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