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ゲームの歴史 (書籍)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ゲームの歴史
著者 岩崎夏海稲田豊史
発行日 2022年11月14日
発行元 講談社
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 出版物
コード 1巻:ISBN 978-4-06-529701-8
2巻:ISBN 978-4-06-529702-5
3巻:ISBN 978-4-06-529703-2
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ゲームの歴史』(ゲームのれきし)は、岩崎夏海稲田豊史が共著した全3巻の書籍である。岩崎が企画と構成と口述、稲田が文章記述[1][2][3]を担当した。

コンピュータゲームの歴史を分かりやすく、かつ網羅的に解説することを目標に[4]講談社児童書レーベルである青い鳥文庫から出版されたが、直後からSNS上で内容の誤りが多数指摘され、4か月後に講談社は社内調査の結果「事実誤認と情報元が確認できない箇所が多数見つかった」として販売を中止した[5]

なお本書の内容を考案した岩崎には事実誤認の責任が問われた一方、岩崎の喋りを文章化したブックライター担当の稲田は批判に反応していない[6][注釈 1]

内容

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文化的背景も含め網羅的にコンピュータゲームの成り立ちを順序立て解説すること[4]を目指して記し、全3巻の構成で[5]、第1巻はファミリーコンピュータや『ドラゴンクエスト』、第2巻はPlayStationや『ファイナルファンタジーVII』、第3巻はスマホゲームNintendo Switchなどのタイトルを扱う[8]。「はじめに」で「本書はゲームクリエイターやゲーム業界志望者へ向けたもので、『岩崎・稲田史観』を通すことで、ゲームの面白さ・ゲーム制作・ゲーム産業の本質に、比較的すぐ到達できる自負がある」[8]と記している。

出版から発売中止まで

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多方面からの錯誤指摘

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2022年11月14日の出版[9]直後から、多くのゲーム業界関係者らが、事実誤認や情報元の確認できない記述が多いことを指摘し[10]Twitterで「事実と異なる」「主張に合わせて事実を拡大解釈している」「思い付きから逆算している」などの意見が続出[11]した。

本書の「『ポケットモンスター』はメンコから発想した」などの記述について、ポケモンの制作に関わったとみさわ昭仁は「そんなことはありません」と明言し、ゲーム雑誌編集者の岩井浩之も同じく否定して「ひどい本」「(田尻智の証言を)全無視して持論を、あたかも真実のように書いた著者のことが本当に許せなくて」と酷評している[12]

iモードの立ち上げに携わった栗田穣崇は、本書のiモードに関する誤りを指摘して「事実と異なる部分をあえて無視、もしくは拡大解釈して説明している」と述べている[12]

ライターの西田宗千佳は「思い付きから歴史を逆算して当てはめたであろう不整合が多い」と述べている[12]

ライターの岩崎啓眞は、「山内溥宮本茂や田尻智が言ったとは考えられない言葉に『 』が付けられて、あたかも当人が話したかのような記述になっている」[8]と述べ、「著者の考えたストーリーのために、論理を自らに都合よく組み立てたため、事実と異なる内容になったのではないか」と推測し、「同書を読んだゲーム業界人やゲーム業界を志す人々が誤った歴史や間違った情報を信じることは、業界全体にとって悪影響である」と述べている[8]。また、岩崎啓眞は本書発売中止後の2023年5月28日に開催されたレトロゲーム・マイナーゲーム中心同人誌即売会ゲームレジェンド35」で、本書の誤り箇所の指摘や批判をまとめた同人誌『ちょっとは正しいゲームの歴史』を頒布し[13][14]、同年10月1日に開催されたオールジャンル同人誌即売会「COMIC1☆23」で前述の同人誌で含められなかった指摘を収録した同人誌『ゲームの歴史のあとしまつ』を頒布した[15]

ゲーム研究者の向江駿佑は、声をあげるゲーム業界関係者の存在が広く可視化されたこと、ゲームの通史本に対する関心と需要は依然として根強いことの二点を挙げて「どんな歴史書であっても一冊ですべてを語ることは不可能である」ことを強調し、「参照する書籍を複数にすればより立体的に変遷が見える」と述べている[16]

ライターの山内貴範は、「最も危険なことは本書のあとにゲームの通史を誰も執筆しないことであり、ゲーム業界のキーパーソンが存命中である今がゲームの通史を遺す最後のチャンスである」と述べている。「数十年後の人が同書を元に論文などをまとめ、それが年月を経れば同書の内容が定説化するおそれがある」と指摘している[17]

著者の反論

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「データや出典がなく主観的な理論を展開する本でしかない」とする同書の感想に対し、岩崎夏海はTwitterで

データを用いるとその用い方の恣意性に際限がなくなってかえって本質から逸れるし、主観というけど化学じゃないんだからゲームの世界に客観など存在しないので、この手の意見には全く与しない — 岩崎夏海、[12][8]

と反論するも、のちに上記反論を投じたTwitterアカウントを削除した。

発売中止

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2023年3月17日に講談社は、「事実誤認のおそれを複数から指摘された」「編集部と著者で全体を確認している」と発表した。3月20日から21日にかけて各種インターネットショップで購入や注文が不能となった[18][19]

4月10日に講談社は、「編集部による事実関係の確認が不十分だった」として販売中止を発表した。書店に在庫返品を求め、同年11月30日まで購入者からの返品を受け付け[1]、訂正版の出版は予定しない、[5]とした。

脚注

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注釈

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  1. ^ 「今回の仕事も基本的にはブックライティングで、この本の “中身” を考えたのは、すべて岩崎氏なんです。彼の立場からしたら、岩崎氏という “著者” がいる手前、批判に対し『訂正する』とも『すみません』とも言えないでしょうね」[7]

出典

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  1. ^ a b “「ゲームの歴史」販売中止 講談社、事実誤認が多数”. 共同通信 (共同通信社). (2023年4月10日). https://web.archive.org/web/20230410101404/https://nordot.app/1018101308906815488 2023年4月11日閲覧。 
  2. ^ 松浦立樹 (2023年4月10日). “書籍「ゲームの歴史」、返金対応へ 講談社は謝罪 「編集部による事実確認が不十分だった」”. ITmedia NEWS (アイティメディア株式会社). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2304/10/news098.html 2023年4月11日閲覧。 
  3. ^ yoshinagamarie (2023年3月27日). “大炎上中の書籍『ゲームの歴史』が絶版・回収へ…著者の “逆ギレ&逃走” に批判集まる”. Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]. 2023年4月14日閲覧。
  4. ^ a b 書籍シリーズ・雑誌と既刊紹介/ゲームの歴史 1”. 講談社BOOK倶楽部. 講談社. 2023年4月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月11日閲覧。
  5. ^ a b c “「ゲームの歴史」販売中止 講談社、事実誤認が多数”. 産経新聞 (産経新聞社). (2023年4月10日). https://www.sankei.com/article/20230410-KRKDAEQ6O5PBZHISDOYEI6L2P4/ 2023年4月11日閲覧。 
  6. ^ 大炎上中の書籍『ゲームの歴史』が絶版・回収へ…著者の “逆ギレ&逃走” に批判集まる”. Smart Flash (2023年3月27日). 2023年4月7日閲覧。
  7. ^ 大炎上中の書籍『ゲームの歴史』が絶版・回収へ…著者の “逆ギレ&逃走” に批判集まる”. Smart Flash (2023年3月27日). 2023年4月7日閲覧。
  8. ^ a b c d e “書籍『ゲームの歴史』に当事者たちから事実誤認との指摘続出で物議…ゲーム業界に悪影響”. Business Journal (株式会社サイゾー). (2023年3月19日). https://biz-journal.jp/company/post_336575.html 2023年4月11日閲覧。 
  9. ^ “ビデオゲームの歴史を文化的背景とともに解説する書籍『ゲームの歴史』が11月14日に発売決定。「もしドラ」岩崎夏海氏と「映画を早送りで観る人たち」稲田豊史氏の共著”. 電ファミニコゲーマー (株式会社マレ). (2022年11月9日). https://news.denfaminicogamer.jp/news/221109s 2023年4月11日閲覧。 
  10. ^ “「ゲームの歴史」全3巻,販売中止へ。購入者への返金対応も実施”. 4Gamer.net (Aetas). (2023年4月10日). https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20230410022/ 2023年4月11日閲覧。 
  11. ^ “批判相次ぐ書籍「ゲームの歴史」、オンラインストアから姿を消す Amazon、紀伊国屋書店などで”. ITmedia (アイティメディア株式会社). (2023年3月22日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2303/22/news125.html 2023年4月11日閲覧。 
  12. ^ a b c d “書籍「ゲームの歴史」にツッコミ相次ぐ 「内容が事実と異なる」との声 講談社は「確認中」”. ITmedia (アイティメディア株式会社). (2023年3月16日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2303/16/news110.html 2023年4月11日閲覧。 
  13. ^ ゲームレジェンド新刊『ちょっとは正しいゲームの歴史』できました”. Colorful Pieces of Game (2023年5月27日). 2023年5月31日閲覧。
  14. ^ 石橋一衛「同人誌「ちょっとは正しいゲームの歴史」が入荷」『AKIBA PC Hotline!』2023年6月26日。2024年8月23日閲覧
  15. ^ 「ゲームの歴史のあとしまつ」って新刊が出来ました”. Colorful Pieces of Game (2023年9月29日). 2024年8月23日閲覧。
  16. ^ 向江駿佑 (2023年4月12日). “『ゲームの歴史』炎上騒動から考える、「本当に読むべきゲーム史に関する本」”. Real Sound (株式会社blueprint). https://realsound.jp/tech/2023/04/post-1300843.html 2023年4月14日閲覧。 
  17. ^ 山内貴範 (2023年4月7日). “『ゲームの歴史』販売中止へ 膨大な資料集めと見識を要する「通史」執筆の難しさ”. Real Sound (株式会社blueprint). https://realsound.jp/book/2023/04/post-1298805_2.html 2023年4月11日閲覧。 
  18. ^ “誤りの指摘相次ぐ『ゲームの歴史』、多くのオンラインストアで購入できない状態に”. ねとらぼ (アイティメディア株式会社). (2023年3月21日). https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2303/21/news055.html 2023年4月11日閲覧。 
  19. ^ Arkblade (2023年3月20日). “多数の内容の不備指摘受け出版社が調査中の書籍「ゲームの歴史」Kindle版の購入不能に”. Game*Spark (株式会社イード). https://www.gamespark.jp/article/2023/03/20/128171.html 2023年4月11日閲覧。 

外部リンク

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