クルジュ=ナポカ市電
クルジュ=ナポカ市電 | |||
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基本情報 | |||
国 |
ルーマニア クルジュ県 | ||
所在地 | クルジュ=ナポカ | ||
種類 | 路面電車[1][2] | ||
路線網 | 4系統(2020年現在)[3][4] | ||
開業 | 1987年10月1日[2][5] | ||
路線諸元 | |||
路線距離 | 13 km[6][2] | ||
軌間 | 1,435 mm[6] | ||
電化区間 | 全区間[6][2] | ||
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クルジュ=ナポカ市電(ルーマニア語: Tramvaiul din Cluj-Napoca)は、ルーマニアの都市であるクルジュ=ナポカ市内を走る路面電車。1980年代以降ルーマニア各都市に建設された路線の1つで、2020年現在はクルジュ=ナポカ市が所有するクルジュ=ナポカ交通公社(Compania de Transport Public Cluj-Napoca、CTP Cluj-Napoca)によって運営が行われている[1][2][5][4]。
歴史
[編集]元々クルジュ=ナポカ市内には1893年8月21日に開通した、スチームトラムを用いた軌道が存在しており、最盛期には全長9.3 kmの路線網が存在した。将来的には路面電車の導入も計画されていたものの、事故の多発や利用客の低迷、財政悪化などの影響から1902年をもって営業運転を休止し、以降は僅かな貨物輸送が行われたのみで1909年をもって廃止された[2][5]。
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かつて存在したスチームトラムの路線網(1902年撮影)
その後、クルジュ=ナポカ市内における交通機関の主力は自家用車やバスなどの自動車であったが、1970年代以降幹線道路の混雑が大きな課題となっていた。一方、1980年代以降ルーマニア政府は自国通貨の海外流出を抑えるため、石油の輸入を抑制する代わりに各都市へ路面電車を新設する方針を決定し、クルジュ=ナポカにも路面電車が復活する事となった。そして1987年10月と11月の2度に分けて、市内を東西に結ぶ路線が開通した[1][2][5]。
だが、1980年代に新設されたルーマニア各地の路面電車は短期間での敷設を目的としたため不十分な投資のまま営業運転が開始された経緯があり、クルジュ=ナポカ市電でも早期にこれらの劣化やそれに伴う騒音、振動などが問題となった。そのため、2011年以降は欧州連合からの投資を受けて路線や施設の改修、バリアフリーに適した超低床電車の導入などの近代化が継続して行われている[1][2][5][7]。
運行
[編集]2020年現在、クルジュ=ナポカ市電は市内を東西に結ぶ全長13 kmの区間を有する。路線はこの1つのみだが、ルーマニア国鉄のクルジュ=ナポカ駅と接続する駅前旧広場(Piața Gării Vechi)電停を始発・終着点とする100・101号線と、東西の全区間を走行する102号線の合わせて3つの系統が存在する他、100号線と102号線については路線の東端にある車庫への入出場を兼ねた派生系統(101L号線、102L号線)が設定されている。運賃はクルジュ=ナポカ交通公社が運営する路線バスやトロリーバスのうち郊外系統と共通で設定されており、乗車券は1回の乗車につき2.5レイで購入可能である他、身分証明が可能な書類を提出すれば1日、3日、1週間、1ヶ月分の乗車券が発行される。また、これらの期間を定めた乗車券は電子決済でも購入可能である[3][4][8][9][10]。
運休されているものも含め、2020年現在のクルジュ=ナポカ市電の系統は以下の通り[3][4]。
系統番号 | 起点 | 終点 | 備考・参考 |
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100 | Piața Gării Vechi | Disp. Tram CUG | 平日に5往復のみ運行[11][12] |
100L | Piața Gării Vechi | Depou Tramvai | 2020年現在運休中[13] |
101 | Disp. Bucium | P-ța Gării Noi | 平日のみ運行[14][15] |
102 | Disp. Bucium | Disp. Tram CUG | [16][17] |
102L | 平日のみ運行[18][19] |
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100号線
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101号線
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102号線
車両
[編集]クルジュ=ナポカ市電の開通時に導入されたのはブカレストで製造された連接車のV3A(3車体)やV2A(2車体)、ティミショアラで製造されたボギー車のティミス2といった国産車両であったが、その粗悪な構造上老朽化が早期に進行した他故障も相次いだため、1997年以降はドイツ各都市から譲渡された車両による置き換えが実施された。その後、2010年代以降は超低床電車の導入が積極的に行われている[2][20][21]。
現有車両
[編集]- ペサ120Nc - ポーランドの鉄道車両メーカーであるペサが展開する、車内全体が低床構造となっている超低床電車の「スウィング」の1形式。2012年の契約時点では12両が新造される予定だったが、技術や予算の問題から導入数は2013年製の4両に留まった[22][20][23]。
- インペリオ - ルーマニアのアラドに工場を置くアストラ・ヴァゴアネ・カラトリが展開する超低床電車。2018年に導入契約が交わされ、最初の4両は2020年10月28日から営業運転を開始し、2021年までに全28両が納入されている[20][24][25]。
過去の車両
[編集]- ティミス2 - ルーマニアの標準型路面電車車両として各都市に導入されたボギー車。クルジュ=ナポカ市電には開業時に電動車・付随車の合計36両が2011年まで使用されていた。以降は電動車と付随車各1両が保存されている[21][20][26]。
- V2A・V3A - 元はブカレスト市電向けに開発された連節車。2車体連接車のV2Aが15両、3車体連接式のV3Aが6両導入されたが、運用の都合からヤシ市電(ヤシ)やボトシャニ市電(ボトシャニ)へ譲渡された[26]。
- T4D・B4D - ドイツのマクデブルク市電(マクデブルク)で使用されたボギー車。2002年に電動車のT4Dが18両、付随車のB4Dが2両譲渡され、2010年まで使用された[26]。
- KT4D - ドイツのベルリン市電(ベルリン)で使用されていた小型2車体連接車。1998年から1999年にかけて25両が譲渡され、超低床電車へ置き換えられる2021年まで使用された。以降は1両が残存しており、博物館への保存が予定されている[26]。
- KT4Dm - ドイツのポツダム市電(ポツダム)の車両のうち、在籍中に内装や機器の近代化が実施された車両。クルジュ=ナポカ市電には2009年に10両が譲渡され、2021年まで使用された[26]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d Mike Russell (2016年4月11日). “Romania’s tramway revival – part 1”. LRTA. 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “Romania's tramway revival – part 2”. LRTA (2016年4月11日). 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b c “Linii urbane”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b c d “CTP Cluj Cluj Napoca - Toate liniile de Tramvai”. moovit. 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b c d e Bianca Tămaş (2020年4月13日). “Clujul, codaș la tramvaie. Tramvaiele au fost puse în circulație în 1987, cu 100 de ani mai târziu față de celelalte orașe”. monitorulcj.ro. 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b c “CLUJ-NAPOCA”. UrbanRail.Net. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “luj-Napoca modernises its tramway lines”. investEU. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “TICKETS”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “Full price subscriptions”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “E-TICKET FARESs”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “LINIA 100”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “ORAR LINIA 100”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “LINIA 100L”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “LINIA 101”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “ORAR LINIA 101”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “LINIA 102”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “ORAR LINIA 102”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “LINIA 102L”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “ORAR LINIA 102L”. CTP Cluj-Napoca. 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b c d “Vehicle Statistics Cluj-Napoca, SC Compania de Transport Public Cluj-Napoca SA”. Urban Electric Transit. 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b Ryszard Piech (2011年9月13日). “Timiș2 - emerytowany standardowy tramwaj rumuński”. Infotram. 2016年4月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月6日閲覧。
- ^ Gabriela DRAGOTĂ (2013年5月4日). “INCERTITUDINE: va mai avea Primăria bani pentru tramvaie mov?”. monitorulcj.ro. 2020年12月6日閲覧。
- ^ “Tramvaiul scump, sărăcia Bucureștiului”. Bună dimineața, București! (2015年2月10日). 2020年12月6日閲覧。
- ^ “Astra Vagoane a livrat încă un tramvai „Imperio” la Cluj”. Club Feroviar (2020年6月23日). 2020年12月6日閲覧。
- ^ “Primele tramvaie de ultimă generație Astra Imperio au început să circule la Cluj la Cluj”. Mobilitate.eu (2020年10月28日). 2020年12月6日閲覧。
- ^ a b c d e “Ce tramvaie a avut Cluj-Napoca de-a lungul anilor. GALERIE FOTO”. E fain la Cluj (2022年9月9日). 2023年8月27日閲覧。
外部リンク
[編集]- クルジュ=ナポカ交通公社の公式ページ”. 2020年12月6日閲覧。 “