エゾタンポポ
エゾタンポポ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Taraxacum venustum H.Koidz. (1933)[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
エゾタンポポ(蝦夷蒲公英)[6][7] |
エゾタンポポ(蝦夷蒲公英、学名:Taraxacum venustum)は、キク科タンポポ属の多年草[6][7][5][8]。
北日本の人里に多いタンポポ。頭花の径が4-6cmと大きい[5]。
特徴
[編集]根生する葉はロゼット状になり、根出葉は倒披針形または広線形で、長さ15-30cm、幅2-4(-6)cmになり、先端は三角状、縁は全縁または羽状に浅裂から深裂する。裂片は多くは三角であるが、線形に切れ込んだり、不規則な歯牙状になるなど変異に富む。葉脈の中央脈は赤色を帯びることが多い[6][7][5][8]。
花期は4-5月。花茎は直立し高さ10-20cmになり、中空、花茎上部に白色の軟毛が密生する。頭状花序は径4-6cmと大きく、花冠は舌状花冠のみで構成され、黄色、小花は100-200個、縁の小花は長さ1.5-2cmになる。総苞は緑色、総苞内片は1列で、花時に直立し長さ15-23mm、幅は狭く、狭披針形または線状披針形で、外面が黒みを帯びることがある。総苞外片は多列あり、総苞内片の半分の長さがあり、ふくらんで圧着し、最外片は幅が広く、卵形から広卵形で、縁に毛があり、ふつう先端に角条突起はないが瘤状になることがある。雄蕊は5個の葯が合着した集約雄蕊で、花粉の粒は大きさが不均一である。雌蕊は黄色。果実は痩果で、紡錘形で長さ4-5mm、淡黄褐色になる。冠毛は長さ7.5-9.5mm、冠毛柄は冠毛より長い[6][7][5][8]。
生殖方法、無融合生殖種
[編集]本種は、ふつう染色体数2n=24、32の3倍体、4倍体であり、ごくまれに2n=40の5倍体がある。これらの倍数体は、雌蕊だけで無性的に種子をつくる無融合生殖種である[5]。このため、前述の葉の形態の多様性のほか、総苞外片の形態が楕円形になり、角条突起があるものなど多様であり、これらは、過去には多くの種に分類された経緯にある。しかし、現在では分子系統解析の結果により、多くのクローンを含む複合種とみなされている[5]。
本種のほか、日本産のタンポポ属の中で、無融合生殖種であるものに、クモマタンポポ Taraxacum yesoalpinum、ミヤマタンポポ T. alpicola、シコタンタンポポ T. shikotanense、シロバナタンポポ T. albidum、キビシロタンポポ T. hideoi、モウコタンポポ T. mongolicum、ツクシタンポポ T. kiushianum、クシバタンポポ T. pectinatum がある[5]。
分布と生育環境
[編集]日本では、南千島、北海道、本州の東北地方・関東地方・中部地方に分布し、草地、田畑の畔、道ばた、雑木林にふつうに生え、山地の標高の高い場所にも生育する。世界では、カラフトに分布する[6]。
名前の由来
[編集]和名エゾタンポポは「蝦夷蒲公英」の意[6][7]。北海道の旭川市産のものをタイプ標本として、植物学者の小泉秀雄 (1933)が新種記載し、和名も小泉がつけた[9]。
種小名(種形容語)venustum は、「可愛いい」「可憐な」の意味[10]。
保全状況評価
[編集]国(環境省)でのレッドデータブック、レッドリストの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、神奈川県が絶滅危惧IA類(CR)になっている[11]。
ギャラリー
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花茎は直立し、中空、花茎上部に白色の軟毛が密生する。
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左の拡大。総苞は緑色、総苞内片は1列で、花時に直立し、幅は狭く、狭披針形または線状披針形になる。総苞外片は多列あり、総苞内片の半分の長さがあり、ふくらんで圧着し、最外片は幅が広く、卵形から広卵形で、縁に毛があり、先端に角条突起はない。
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頭花は舌状花冠のみで構成される。雌蕊の先端に付着した花粉が見える。開花したての頭花。
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根出葉は倒披針形または広線形で、先端は三角状、縁は全縁または羽状に浅裂から深裂する。葉脈の中央脈は赤色を帯びることが多い。
脚注
[編集]- ^ エゾタンポポ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ エゾタンポポ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ エゾタンポポ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ クザカイタンポポ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g h 森田竜義 (2017)「タンポポ属」『改訂新版 日本の野生植物 5』pp.285-289
- ^ a b c d e f 保谷彰彦 (2017)『タンポポハンドブック』pp.32-33
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』p.598
- ^ a b c 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1140
- ^ Hideo Koidzumi「Taraxacum Novum Orientali-Asiaticum I」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第47巻第554号、日本植物学会、1933年、104-108頁、doi:10.15281/jplantres1887.47.89。
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1519
- ^ エゾタンポポ、日本のレッドデータ検索システム、2025年2月25日閲覧
参考文献
[編集]- 林弥栄初版監修、門田裕一改訂版監修、平野隆久写真、畔上能力他解説『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 保谷彰彦『タンポポハンドブック』、2017年、文一総合出版
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- Hideo Koidzumi「Taraxacum Novum Orientali-Asiaticum I」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第47巻第554号、日本植物学会、1933年、104-108頁、doi:10.15281/jplantres1887.47.89。
外部リンク
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