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エウジェニオ・ベルトラミ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エウジェニオ・ベルトラミ
Eugenio Beltrami
Eugenio Beltrami
生誕 (1835-11-16) 1835年11月16日
オーストリア帝国ロンバルド=ヴェネト王国ロンバルディア州クレモナ
死没 1900年2月18日(1900-02-18)(64歳没)
イタリア王国ローマ
国籍 イタリア
研究分野 数学
研究機関 ボローニャ大学
ピサ大学
ローマ大学
パヴィア大学
出身校 コレジオ・ギスリエリ英語版イタリア語版パヴィア大学(学位無し)
指導教員 フランチェスコ・ブリオスキ
博士課程
指導学生
ジョヴァンニ・フラッティーニ英語版イタリア語版
主な業績 ベルトラミ方程式英語版
ベルトラミ恒等式英語版
ベルトラミの定理英語版
ラプラス–ベルトラミ作用素英語版
ベルトラミベクトル場英語版
ベルトラミ–クラインモデル英語版
プロジェクト:人物伝
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エウジェニオ・ベルトラミ[1][注釈 1]: Eugenio Beltrami (1835-11-16) 1835年11月16日1900年2月18日(1900-02-18) )は、イタリア数学者微分幾何学数理物理学における活躍で知られる。定曲率英語版擬球面、n次元単位球面のモデル化によって非ユークリッド幾何学の存在を最初に証明した。このモデルは現在ベルトラミ–クラインモデル英語版と呼ばれる。また、行列における特異値分解を発展させた[2]。 ベルトラミによって行われた数理物理学に対して間接的に微分法を用いる手法は、グレゴリオ・リッチ=クルバストロトゥーリオ・レヴィ=チヴィタテンソル解析英語版の発展に影響を与えた。

経歴

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1835年、当時オーストリア帝国の一部であったロンバルディアクレモナに生まれた。両親は芸術家ジョヴァンニ・ベルトラミ(Giovanni Beltrami)とベネチア人エリザ・ バロッツィ(Elisa Barozzi)[3]。1853年よりパヴィア大学で数学の勉強を始めたが、ベルトラミはイタリア統一運動に賛成したために[4]コレジオ・ギスリエリ英語版イタリア語版から追放された。その後、フランチェスコ・ブリオスキの下で学んだ[5]。金銭的に研究を続けることが難しくなったため、翌年から幾年間はロンバルディア–ヴェネツィア鉄道会社の事務として働いた[5][6]。1862年、 ボローニャ大学の教授に抜擢され、最初の研究論文を執筆した。ベルトラミは、ピサ大学ローマ大学 、パヴィア大学と、他にも多くの大学で教授職を歴任した[6]。1891年から没するまではローマに定住した。1898年にアッカデーミア・デイ・リンチェイ会長、1899年にイタリア王国上院議員を務めた[7]

非ユークリッド幾何学への貢献

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1868年イタリアにて、ベルトラミはボヤイロバチェフスキー非ユークリッド幾何学の解釈に関する2つの研究論文を発表した(1869年、ジュール・オユエル英語版により仏語訳された)。 "Essay on an interpretation of non-Euclidean geometry"ではベルトラミは、ボヤイ・ロバチェフスキー幾何学は負の定曲率平面、即ち擬球面上で実現できることを提案した[8][9]。ベルトラミの考えに沿うと、幾何学における直線は擬球面上の測地線として表され[10]、非ユークリッド幾何学の定理は通常の3次元ユークリッド空間の範囲で証明することが可能で、ボヤイとロバチェフスキーの示した様に、公理から導出されたものではない。 1840年には既にフェルディナンド・ミンディング英語版が測地線幾何学を擬球面上で考え、"三角法の公式"が、通常の三角関数双曲線関数に置き換える事で、対応する球面三角法の公式より得られることに気づいた[11]。これは1857年にデルフィーノ・コダッチ英語版によって更に発展させられたが、2人ともロバチェフスキーの作品との関連に気が付かなかった。このようにして、ベルトラミは2次元非ユークリッド幾何学が3次元ユークリッド幾何学において有効であること、とりわけエウクレイデス平行線公準が他のユークリッド幾何学の公理から導出されないことを論証しようとした。しばしば、この証明は擬球面の特異点のために不完全である、測地線は無窮に拡張することができないと主張される。しかしジョン・スティルウェル英語版は、ベルトラミが、擬球面はトポロジカルには円柱であって平面ではないことから、この困難が明らかにされることに気づき、それを回避する方法を設計することに論文の一部を費やしたに違いないと考えた[12]。座標をうまく設定することで、ベルトラミは擬球面上のリーマン計量単位円板上に変換し、擬球面の特異点は非ユークリッド幾何学のホロサイクル英語版に対応することを示した。一方で論文の導入部では、ベルトラミはこの方法によって"ロバチェフスキーの理論の残り"、例えば空間の非ユークリッド幾何学を正当化することは不可能であることを主張した[13]

同年(1868年)に発表された2つ目の論文"Fundamental theory of spaces of constant curvature"では、ベルトラミはこの論法を続けて使用し、任意次元における双曲幾何学とユークリッド幾何学の無矛盾等価英語版の証明の概要を与えた[14]。彼は非ユークリッド平面のいくつかのモデル(ベルトラミ–クラインモデル英語版ポワンカレの円板モデルポワンカレの上半平面モデル)によってこれを解決した。上半平面モデルにおいてベルトラミはジョゼフ・リウヴィルによるガスパール・モンジュ微分幾何学の論文のメモを引用した。また、ベルトラミは、n次元ユークリッド幾何学はn+1次元 双曲空間英語版上のホロ球面英語版で実現可能で、ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の存在の論理的な関係は対称的であることを示した。ベルトラミはベルンハルト・リーマンから影響を受けており[15]、論文内でもリーマンの画期的な大学教授資格の講義"On the hypotheses on which geometry is based"(1854年;1868年の死後に出版) の影響を認めている。

今日、ベルトラミの"Essay"は非ユークリッド幾何学の発展に重要な影響を与えたとして認識されるが、当時の反応がそれほど熱情的でなかった。ルイージ・クレモナ循環論法であるとみなして異議を唱え、"Essay"の発表を1年遅らせた。その後、フェリックス・クラインは非ユークリッド幾何学の射影円板モデルの構築におけるベルトラミの先行研究を見逃した[6]。これらの反応は一部、リーマンの多様体に関する抽象的なアイデアと似たベルトラミの推論の斬新さが原因であるとも考えられる。オユエルはロバチェフスキーとボヤイの作品の仏語版翻訳でベルトラミの証明を出版した。

作品

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Sulla teoria dell'induzione magnetica secondo Poisson, 1884

脚注

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注釈

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  1. ^ Eugenioはユージェニオ、ユージニオとも。

出典

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  1. ^ 矢野, 健太郎『現代幾何の発想』朝日出版社、1978年。NDLJP:12622188 
  2. ^ Stewart, G. W. (1993-12). “On the Early History of the Singular Value Decomposition”. SIAM Review 35 (4): 551–566. doi:10.1137/1035134. ISSN 0036-1445. https://epubs.siam.org/doi/abs/10.1137/1035134. 
  3. ^ Pirotta 1839.
  4. ^ Heinz Klaus Strick. “EUGENIO BELTRAMI”. 2025年3月2日閲覧。
  5. ^ a b BELTRAMI, Eugenio” (イタリア語). Dizionario Biografico degli Italiani. 2025年3月2日閲覧。
  6. ^ a b c MacTutor
  7. ^ Bryan 1900.
  8. ^ Beltrami 1868a; Beltrami 1868b.
  9. ^ Voelke, Jean-Daniel (2005) (フランス語). Renaissance de la géométrie non euclidienne entre 1860 et 1900. Peter Lang. p. 133. ISBN 978-3-03910-464-2. https://books.google.cat/books?id=G8PE1fitymUC 
  10. ^ G. B. Halsted (1902). “G B Halsted on Eugenio Beltrami”. Amer. Math. Monthly: 59-63. https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Extras/Halsted_Beltrami/. 
  11. ^ Using history to teach mathematics : an international perspective. Internet Archive. [Washington, DC] : Mathematical Association of America. (2000). ISBN 978-0-88385-163-0. https://archive.org/details/usinghistorytote0000unse 
  12. ^ Stillwell 1996.
  13. ^ Beltrami 1868a.
  14. ^ Beltrami 1868b.
  15. ^ Eugenio Beltrami | Differential Geometry, Partial Differential Equations & Analytic Functions | Britannica” (英語). Britannica (2025年2月14日). 2025年3月2日閲覧。
  16. ^ Study, E. (1909). “Book Review: Opere Matematiche di Eugenio Beltrami”. Bulletin of the American Mathematical Society 16 (3): 147–149. doi:10.1090/s0002-9904-1909-01882-8. 

参考文献

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外部リンク

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