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アセチレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アセチレン
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識別情報
CAS登録番号 74-86-2 チェック
ChemSpider 6086 チェック
UNII OC7TV75O83 チェック
国連/北米番号 1001 (dissolved)
3138 (in mixture with ethylene and propylene)
KEGG C01548 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL116336 チェック
特性
化学式 C2H2
モル質量 26.04 g mol−1
密度 1.097 kg m−3
融点

−80.8 °C, 192.4 K, −113.4 °F (三重点)

沸点

−84 °C, 189 K, -119 °F (昇華)

酸解離定数 pKa 25
構造
分子の形 直線形
熱化学
標準生成熱 ΔfHo +226.88 kJ/mol
危険性
NFPA 704
4
1
3
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アセチレン: acetylene)は炭素数が2のアルキンである。IUPAC系統名エチン ethyne、分子式は C2H2である。1836年イギリスエドモンド・デービー英語版によって発見され、水素と炭素の化合物であるとされた。1860年になってマルセラン・ベルテロが再発見し、「アセチレン」と命名した。アルキンのうち工業的に最も重要なものである。

酸素と混合し、完全燃焼させた場合の温度は3,330 ℃にも及ぶため、その燃焼熱を目的として金属加工工場などで多く使われる。高圧ガス保安法により、常用の温度で圧力が0.2 MPa以上になるもので、現に0.2 MPa以上のもの、または、15 ℃で0.2 MPa以上となるものである場合、褐色ボンベに保管することが定められている。

構造

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構造式は HC≡CH で、炭素-炭素間で三重結合を1個だけ持つ直線型分子。炭素‐炭素間でπ結合を二つ持ち、sp混成軌道を取り、結合角は180゚である。アルキンのうち最も簡単なものであり、異性体は存在しない。

物理的性質

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常温では水に体積比 1:1 の割合で溶ける。テトラヒドロフランなどの有機溶媒にはより溶けやすい。爆発範囲は 2.5–81 vol%(空気中)である。純粋なものは無臭だが、市販されているものは通常硫黄化合物などの不純物を含むため、特有のにおいを持つ。

化学的性質

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アセチレンや一般のアルキンは三重結合を持つ不飽和炭化水素のため反応性が大きく、さまざまな物質の合成の原料となる。水銀等の金属や金属化合物と反応し、爆発性のある金属アセチリドを生成する。人体に対して有害性はないが、可燃性である。

付加反応

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アセチレンの三重結合は付加反応を受けやすい。ニッケルを触媒として水素を付加させるとエチレンになり、さらに水素を付加させるとエタンになる。

また、アセチレンの三重結合にはハロゲン化水素などの H−X 型の分子を容易に付加させることができる。 アセチレンに塩化水素を付加させるとクロロエチレンになり、酢酸を付加させると酢酸ビニルになる。クロロエチレンや酢酸ビニルは合成高分子化合物の原料として用いられる。

アセチレンにを付加させた場合はビニルアルコールとなるが、これは容易に異性化し、速やかにアセトアルデヒドに変わる。

付加重合

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アセチレンは付加重合をすることができる。アセチレン2分子が重合するとモノビニルアセチレンになる。モノビニルアセチレンはブタジエンクロロプレンの原料として、合成ゴムをつくるときに用いられる。

アセチレン3分子が重合するとベンゼンジビニルアセチレンアセチレニルジビニルになる。ベンゼンを得る場合、加熱した管もしくは石英管にアセチレンガスを通す方法がよく使われる。

さらに重合が進んで得られるポリマーがポリアセチレンで、導電性物質として利用される。

アセチリド

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アセチレンをはじめとする末端アルキン上の水素は、一般的なアルケンやアルカンのものに比べて酸性が高く、適切な強塩基により引き抜いて金属イオンに置き換えることができる。例えば、アセチレンにn-ブチルリチウムを作用させるとリチウムアセチリドを与える。

また、硝酸銀水溶液にアセチレンを吹き込むと、銀アセチリドの白色沈殿ができる。硫酸銅に作用させると銅アセチリドの赤色沈殿が発生する。銀アセチリドも、銅アセチリドも乾燥していれば、わずかな衝撃で爆発し、炭素に分解する。

所在・製法

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実験室やアセチレンランプなど小規模な用途では、カーバイド法を用いて生成される。これは、カーバイド(炭化カルシウム)に水を作用させる方法である。 工業用の大規模なものでは[2]、アセチレンは炭化水素の熱分解による方法(熱分解法)や、カーバイド法を用いて生成される。

メタンを使った場合

メタンの熱分解には1400℃近くの高温が必要で、アルミの電解精錬に匹敵するほど莫大な熱量を必要とする上、600〜800℃で重合して芳香族炭化水素を多く生じるため急冷して400℃以下に温度を下げねばならず商業的に実現可能なコストではない[3]

利用

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アセチレンガスは他のLPガス等と同様に圧縮冷却すると液化できる。しかしアセチレンは3重結合の極めて不安定な物質なため分解爆発を起こす危険性があることから容器内にマスと呼ばれる軽石様の多孔質物質にアセトンを染み込ませ炭酸水のようにアセトンへ溶解させて充填させている。なお、この溶解アセチレン(ボンベ製品)の2016年度日本国内生産量は9,766tである[4]

燃焼速度が極めて速く燃焼範囲も可燃性ガスの中では一番広い(水素は2番目)ため空気中へ漏洩すると爆発の条件が揃いやすく危険な可燃性ガスでもある。

工業等への利用

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  • アセチレンは燃焼するときに多量の燃焼熱を発生するので、バーナーの燃料として用いられる。アセチレンと酸素を混合して完全燃焼させた酸素アセチレン炎 (3,330℃) は金属溶接や切断に用いられる。アメリカ合衆国では、年間生産の8割が化学合成に、残りの2割がアセチレン溶接、切断に使われている。近年でも、鉄の浸炭に使われる。

石炭化学工業

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かつて石炭化学工業では中間製品としてアセチレンが作られ、アセチレンを元に塩化ビニル、アクリルニトリル、酢酸ビニルなどの製品が作られていた。

今日の石油化学工業では代わりにより安価なエチレンが用いられるのが一般的である。[5]

照明等への利用

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アセチレンから合成される化合物

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参考文献

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  1. ^ Acyclic Hydrocarbons. Rule A-3. Unsaturated Compounds and Univalent Radicals, IUPAC Nomenclature of Organic Chemistry
  2. ^ 社団法人日本溶接協会 監修『新版 ガス溶接技能者教本』改訂第2版,産報出版,p22
  3. ^ 泰碩, 功刀、朝也, 酒井「メタン化学の進歩」『有機合成化学協会誌』第20巻第5号、1962年、426–434頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.20.426 
  4. ^ 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編
  5. ^ 高等学校の有機化学の誤りを正す アセチレンからエチレンへ”. 香川高等専門学校. 2022年12月19日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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